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北朝鮮が新型ICBM「火星15」を発射 米国への過剰な挑発を避けたか

新型ICBMを発射

北朝鮮が弾道ミサイルを発射しました。 
北朝鮮による弾道ミサイル発射事案について(2)(首相官邸)
北朝鮮、新型ICBM「火星15」発射成功と発表(朝日新聞)

「火星15」は、日本時間の午前3時18分という異例の時間に平壌郊外から発射されました。高度は4,475km、水平距離950km、約53分飛翔したとのことです。青森県西方沖約250kmの日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾したようです。

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(平壌を中心に半径950kmの範囲)

最高到達高度が異常に高いロフテッド軌道による発射です。

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ロフテッド軌道発射とは、「角度をつけて高く打ち上げ近くに落とす」軌道をたどる発射方法です(上図イメージ)。  


憂慮する科学者同盟(UCS)のデビッド・ライト氏は、最小エネルギー軌道で発射されれば13,000kmに到達すると評価しています。
North Korea’s Longest Missile Test Yet(UCS)
平壌から13,000kmの射程は以下の通り。

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完全に米本土(CONUS)全域をカバーしています。ICBMですので、明確に米本土を攻撃する兵器であり、性能や保有数から考えて日本を狙う種類のミサイルではありません。

あらためて言うまでありませんが、北朝鮮の弾道ミサイル開発がいかなる理由であれ、さらには特定の国を狙ったものでなかったとしても、許されるものではありません。北朝鮮の弾道ミサイル発射は、国連安全保障理事会決議への明確な違反です。上空数千kmの大気圏外とはいえ、日本に向けて通告なしに弾道ミサイルを発射したことは、我が国の安全保障を脅かす重大な行為ですし、国際秩序に挑戦するものであると非難されるべきものです。


核開発と弾道ミサイル開発がセットで行われる理由

2006、2009、2013、2016(1月、9月)、2017年と6度の核実験を経、すでに2度の水爆実験にも着手しています(北朝鮮の発表によるとですが)。 

なぜ北朝鮮は核兵器と弾道ミサイルの開発をセットで進めているのでしょうか? 

これは、弾道ミサイルの精度に理由があります。ICBMのような長距離弾道ミサイルは、1つのビルを狙い撃ちするようなピンポイントの誘導能力はありません。米ロ中が保有するICBMでもCEP(半数必中界:ミサイルの命中精度の指標となるようなもの、です)は100〜数百mで、通常弾頭(非核)では戦略目標を攻撃するために用いるには精度が足りません(数を撃てば当たるかもしれませんが、もったいない)。北朝鮮が保有する別のICBM「火星14」のCEPは約10kmと見られています。通常弾頭では効果的な運用はできないのです。長距離弾道ミサイルを戦略兵器とするためには、弾頭に大きな破壊力を持つ核兵器を搭載することで数km圏内をなぎ払わなければなりません。 

【参考過去記事】

ミサイルが運べる弾頭重量には制限があり、ここで求められる技術が核弾頭の小型化です。たとえば「火星15」のようなICBMは核とセットでなければなりません。水爆実験発表や度重なる核保有宣言が示すとおり、北朝鮮はこのことをよく分かっているのではないでしょうか。ジョンズ・ホプキンス大学米韓研究所(SAIS)のレポートによると、北朝鮮にとって核兵器とは「米国の核脅威を抑止する唯一の兵器であり、国際社会における北朝鮮の政治的威信を保証する政治的ツールである」と位置づけられています。

米国防総省などでは、北朝鮮はすでに核弾頭小型化の技術を一定程度まで確保しているとの見方で(立証はできていないようですが)、その前提でミサイル防衛網を構築しています。 

今回ロフテッド軌道発射をしたわけは

北朝鮮は今年8月にはグアム近海へのIRBM斉射を発表したり、9月には太平洋に向けて核弾頭搭載ミサイルを発射して公海上での核実験を行うなどの宣言をするなど、エスカレーションの姿勢を示してきました。言うまでもなくこれらは米国に向けたメッセージであり、実際に実行した場合は米国のミサイル防衛による迎撃やケースによっては限定的な懲罰的武力行使も考えられるものでした。

ミサイル防衛による迎撃および米国を過剰に刺激することで起こりうる武力行使の発動を回避するうえで、迎撃ミサイルの届かない高度へ打ち上げて朝鮮半島近海へ着弾させるやりかたは、北朝鮮にとってひとつの解となります。
CNNの記者も、北朝鮮が米国を必要以上に挑発することを避けた、という見方をしているようです。

ただし、北朝鮮がミサイル開発を放棄する選択はないので、今後もしばしばロフテッド軌道による発射実験は行われることは十分に考えられますし、必要な場合は最大射程での試射もタイミングを見て実施するでしょう。

いくつかの疑問

今回の火星15のMETでの射程13,000kmという数字を推定したライト氏も言及しているとおり、搭載していた弾頭は模擬弾頭であり、実際に核弾頭を搭載すると射程はかなり短くなると考えられます。ですから、今回の最大射高と飛翔距離をもって火星15の核兵器としての実戦能力を推し量ることは時期尚早です。

個人的に気になっていることは、試射した弾道ミサイルの弾着を北朝鮮がいつもどのようにして観測しているのかです。着弾点の正確な位置観測もさることながら、再突入体の回収を行っているとは報じられていません。再突入体の開発を地上実験だけで完成し得るものなのかどうか疑問ですし、製品としての信頼性を確保できるのかどうかにいたっては甚だ疑わしいと言わざるを得ません。

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