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「清華大学顧問」という名の国際的「習近平ブレーン」の顔ぶれ - 樋泉克夫

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習近平主席を中心に、ズラリと並んだ清華大学経済管理学院顧問委員会のメンバー(『亜洲週刊』2017年12月11日号より。筆者提供)

 第19回中国共産党全国代表大会を“成功裏”に終えた習近平中国国家主席は、ドナルド・トランプ米大統領の訪中を1週間ほど後に控えた10月30日、中国の最高学府の1つで、自らが学んだ清華大学の経済管理学院顧問委員会メンバーと、北京の人民大会堂で面談している。

 この顧問委員会なる組織の役割を考える手懸かりとして、当日の全体集合写真を見ておきたい。

 総勢で40人ほど。前後2列に並んでいるが、もちろん前列中央は習近平主席である。以下、主な参加者の立ち位置を写真に向かって見ておくと、習主席の右隣は「ゴールドマン・サックス」で会長兼最高経営責任者を務めたヘンリー・ポールソン元財務長官(ブッシュ子政権)。1人置いて立つのが、有力ヘッジファンドの「ブラックストーングループ」で会長兼最高経営責任者を務めるステファン・ハースト・シュワルツマン。その右隣が、共産党で外交問題を統括する楊潔篪国務委員、次が「フェイスブック」創業者で最高経営責任者のマーク・ザッカーバーグ。2人置いてシンガポールの李顕龍(リー・ションロン)首相夫人・何晶(ホー・チン)女史である。

 習近平主席の左側を見ると、直ぐ隣に立つのが世界的なリスク投資家で「ブレイヤー・ファンド」を率いるジェームス・ブレイヤー。3人置いて「アップル」最高経営責任者のティム・クック。クックから左に3人目が王毅外相で、前列の左端を、香港の「利豊集団」で名誉主席を務める馮国経(ヴィクター・フォン)が占めた。

 後列は、習近平主席の真後ろから右へ3人目が台湾の「鴻海集団」総帥の郭台銘(テリー・ゴウ)。左側で同じ位置に立つのが香港の「電訊盈科(PCCW)集団」主席の李沢楷(リチャード・リー)である。

 中国からは、「阿里巴巴集団」主席の馬雲(ジャック・マー)、騰訊集団主席の馬化騰(ポニー・マー)、「百度集団」董事長の李彦宏(ロビン・リー)という3人が加わっているが、共に後列の両端近くに位置している。

 以上の立ち位置を別の角度で捉えるなら、習近平主席はヘンリー・ポールソン、ジェームス・ブレイヤー、郭台銘、李沢楷の4人に取り囲まれていることになる。いわば、この4人を習近平主席に最も近い中核メンバー、逆に言うなら、習近平政権から最も期待されているメンバーと見なすこともできようか。

アドバイザーにして御用達

 習近平主席は彼らを前にして、第19回共産党全国代表大会で示された向こう5年間の政策を述べ、さらに自らの主権と安全を一貫して守り、利益を発展させるという中国の立場を明らかにした。加えて、国策の基本である対外開放を堅持し、「互利共贏(ウイン・ウイン)の開放戦略」を忠実に履行することを説き、対米関係に関しては両国間の対立と矛盾を解消・改善するよう努め、両国の合作を推進することで「互利共贏」を実現したい、トランプ大統領の訪中に期待する――と語っている。

 習近平主席の発言は“中国式総花的内容”と言えなくもないが、時期的に、国境を超えた異色の組み合わせである清華大学経済管理学院顧問委員会との面談を挟んで、直前に共産党全国代表大会が、直後に米中首脳会談が行われたことを考えるなら、やはり最高学府とは言え大学の経済管理学院顧問委員会との面談が、儀礼的挨拶で終わるものではないだろう。より積極的な意味があったと見るべきではないか。

 この顔ぶれから想像するに、清華大学経済管理学院顧問委員会が、単に同大学における経済学・経営学教育に学術的な助言を与えるだけの組織だとは思えない。彼らの企業家としての日々の振る舞いを総合的に捉えるなら、ウォール街と中国、香港、台湾、シンガポールをネットワークする金融とITビジネス(ソフトとハード、eコマースなど)に関わる風雲児――より直截に表現するなら、世界的な現代の“錬金術師”の組み合わせと形容できるのではないか。もちろんウォール街の先にトランプ政権が、中国人・華人企業家の先に習近平政権が繋がっていることを想定しておいてもあながち間違いはないだろう。

 習近平主席は第19回共産党全国代表大会で、建国100周年を期しての「社会主義強国」建設を掲げたが、今後の中国経済の成長戦略を考えた時、これまでのように安価な労働力を大量にフル稼働した「世界の工場」を求めることは、構造的に明らかに無理だ。人口減少、生活レベルの向上によって、潤沢な労働力と低賃金が可能にした大量生産方式の製造業は、これからの中国には望めない。

「社会主義強国」を建設するためには、やはり経済・産業構造のイノベーションは必至だろう。たとえばインターネットと製造業を融合させた未来型ビジネスモデルの創出であり、「分散型台帳」と呼ぶ新しい情報記録の仕組みであるブロックチェーン関連プロジェクトである。

 このように考えるなら、清華大学経済管理学院顧問委員会メンバーは、2期目に入った習近平政権の経済・産業政策のアドバイザーであり、同時に“習近平政権御用達”の企業家と見なすこともできそうだ。あるいは中国の経済圏構想「一帯一路」を、IT関連ビジネスによって民間側から補完しようとする試みとも受け取れる。

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