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京大卒芸人が"学歴は必要"と結論したワケ

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■上司には敬意を。同期への嫉妬は「ムダな時間」

社会人キャリアも20年選手の40代は、中間管理職として、組織の垂直方向にも水平方向にも、さまざまな悩みの渦中にいるだろう。しかも競争の中で育たざるを得なかったため、社内政治や周囲の出世など、決して心穏やかにはいられない。そんな中でわれわれはいかに生きるべきか?

実力主義の世界だからというのはあるかもしれませんが、と前置きしつつ、「芸人の世界では、年上だというだけで敬意を持つものなんです。だから、尊敬しない上司(先輩)はそもそもいない。尊敬できない上司は消えていく、厳しい世界ですからね」と、菅さんは指摘する。まず敬意あり、礼儀作法は後からついてくる。「先に生まれたと書く先生は、もうそれだけで偉い、という考え方を受け入れようということです。上司も同期も、全員に敬意を持った上で接さねばいけない。たぶんそこが欠けていると、会社でも世間でも苦しいのではないですかね」と、宇治原さんも諭す。

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宇治原史規さん

「なぜあいつが上司なのか」「なぜあの同期に負けるのか」といった不公平に感じられる人事も、客観的に長いスパンで見ると人事の間違いは少ないのだとか。「一度、自分が人事部になったつもりで配置してみるといいんです。すると、だいたい同じ結果になったりするかもしれない。全体を見渡すと、人事は意外と公平な判断をしているんですよ」(宇治原さん)。

自分たちだって、売れていく同期を見てざわつく気持ちがなかったといえばうそになる。「でも結局、適材適所なんですよね。僕たちは選ぶ側ではなく、選ばれる側。『商品である』という感覚が強いのかもしれません」との菅さんの言葉を引き受けて、宇治原さんはこう説明する。「冷めているわけではなくて、別の感情の使い方をするんです。嫉妬のような無駄なことに感情を使わないでおこう、と」。

学生時代から無駄が大嫌いだった、と宇治原さんは言う。どんな小さなことでも、例えば駅まで走るくらいのことでも、走る以上は絶対に電車に間に合いたい。受験だって、するなら絶対に受かりたい。そんな宇治原さんは「無駄にエネルギーを使いたくないから、負の感情を持ち続けないんです」。大波がうねる芸人の世界に20年以上身を置き、ストイックに自分たちの芸を磨き上げてきた男たちが言うと、説得力がある。

■「ワープ」を夢見ない、身の丈にあった成長をするために

「よくそういう記事がありますが、年収500万円の人が年収1000万円の人をうらやむとか。そういう比較と嫉妬も、僕はあまり意味がないと思います」と、菅さん。収入が少ないならその分、それなりの自由や休暇があるかもしれない。人より高い年収は、それなりの長時間労働やストレスの対価だったりもする。そこでどう考えるかが身の丈にあった生き方をできるかどうかで、ただ比較して何が何でも上を目指すのがいいわけではない。自分は何を楽しいと思うかを大事にしたとき、その競争には本当に価値があるのだろうか?

「向上心も使い方次第だと思うんです」と、菅さんはよしもと新喜劇の後輩の話をしてくれた。いつか月収100万円欲しいと漠然と夢を語る後輩に、菅さんはまず「座長がいくらもらっているか聞いたことがあるか?」と尋ねたという。座長のギャラの額と出演回数を知れば、自分が今後どこまで単価を上げ、どれだけ出演できる芸人を目指せばいいのかがわかる。それでも月収100万に満たないのなら、他にどのように仕事や活躍の幅を広げていけばいいか、見通しが立つ。夢は、目標への距離を小さな単位に割って、一つ一つクリアしていくものだ。

宇治原さんも「一年後に京大に受かるためには、今日何をすればいいか、明日何をすればいいか。細かく予定を立てていったとき、これを完遂すればいいんだ、と合格が見えたんです」と語る。500万から1000万を望むのではなく、まずは501万にすることを目指さなければいけない。「みんなすぐに結果を欲しがってワープを求めがちですけれど、人から見てワープに見えるものは、本人はみな積み上げていったものなんですよ」(宇治原さん)。

著書の中で、菅さんは「実力ギリギリの学校よりも、余力を持って成績上位でいられる学校を選ぶのもあり」とも書いている。それは単なる子供の学校選びにとどまらない。われわれ大人にとっても、やみくもに「上を目指せ」と教え込まれた向上心や見栄で自分の居場所を決め込んで苦しむのではなく、本当に自分にとって幸せな「身の丈にあった生き方」をするための、人生の秘訣(ひけつ)なのかもしれない。

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(フリーライター/コラムニスト 河崎 環)

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