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成功の見込みのない核燃料サイクルのコストは?――私の原子力日記その3――(1/2)

11月30日は、私にとって4回目の原子力委員会(新大綱策定会議)でした。

議事録と提出資料は以下にあります。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei9/index.htm

まず、原子力委員会が11月10日付けで行った核燃料サイクル・コストについての報告がありました。

私は最後に添付したメモを提出したうえで、つぎの3点に絞って指摘しました。

(1)燃料サイクル政策は失敗しています。六カ所村の再処理工場はしばしば放射能漏れや事故が起きて、稼働していません。イギリスのセラフィールドの再処理工場も止まりました。その結果、原発敷地内、建屋内に大量の使用済み核燃料がたまっています。それが4号機の水素爆発につながったと言われています。こうした事態をどう考えるのでしょうか。

どうして核燃料サイクルが失敗しているのか、どのようにして成功する見込みがあるのか。その点を明らかにしないで、成功することを前提にしてシミュレーションでコスト計算を行うのは明らかにおかしいのではないでしょうか。少なくとも順序が逆です。

(2)原発コストに関して、なおも実績値でなくシミュレーションによってコスト計算を行おうとしていますが、11月10日付けの原子力委員会の決定では、他の電源と比較可能な方法としてシミュレーション手法が正しいと、自己正当化しています。

しかし、各種世論調査によれば、国民の7~8割は原子力に代わるエネルギーとして再生可能エネルギーをあげています。国民が知りたいのは、原子力発電と再生可能エネルギーについて、自分が実際に負担する電力料金の比較です。

まず、総括原価主義をとっている以上、電力会社が経産省に提出した申請書にある発電単価に基づいて、稼働率、送配電ロスなどを含めて計算した発電コストこそが、消費者が実際に負担している原発に関する電気料金であるはずです。そして再エネ法が決まり、(これから決まる)電力会社が再生可能エネルギーを買い取る際の買取価格が、消費者が負担する電力料金に直接反映するコストです。少なくともシミュレーションだけでなく、実際に消費者が負担する電力料金をベースにして、両者を比較できるデータを示すことが本委員会の義務だと考えます。

(3)原子力委員会の報告では、「原子力事故のように大数の法則に乗らない『極めて稀な事象で巨大な損害』をもたらす対象に対しては、実社会において損害保険は成立していない」と述べられています。しかし、スリーマイル事故、チェルノブイリ事故、東京電力福島第1原発事故と、40年以内に3つの過酷事故があったにもかかわらず、それを「極めて稀な」という一言ですますのは国民の感覚とあまりにかけ離れています。

さらに、民間の損害保険が成立しないということは、原発事故のコストがあまりに巨大だからで、それほど危険だということです。だとすれば、できるだけ早期に廃止すべきだということになります。あるいは、少なくとも多額の免責を与えて、民間企業任せでやってきたことが間違いだということになります。

つぎに、将来のエネルギー需給の見通しについて、いくつかの報告があり、また日本原子力研究開発機構から高速増殖炉サイクル(もんじゅ)について報告がありました。

まず私は、原子力機構が行った報告「高速増殖炉サイクル技術開発の意義」について、もんじゅは1995年にナトリウム漏れ事故を起こして停止し、15年ぶりに再稼働したらすぐに落下事故を引き起こしている(つまり一切、動いていないに等しい状況です)にもかかわらず、失敗の原因がどこにあるのか、失敗の責任はどこにあるのか、について一切の説明がないのは、あまりにおかしいと批判しました。

この点について、鈴木篤之日本原子力研究開発機構理事長から説明がありました。

しかし、再処理といい、高速増殖炉といい、これまでうまく行っておらず、成功の見込みも疑わしいのです。原発についてはよく「便所のないマンション」に例えられますが、出口があって、それに合わせて入り口があるのです。出口がないのに入り口ばかり増やすのは、どう考えてもおかしいのです。

将来のエネルギー需給見通しに関する報告については、浅岡美恵委員が行った「3.11大震災・原発停止電力需給問題と地球温暖化対策について」を支持しました。

再生可能エネルギーの不安定性を指摘する委員の意見が出ましたので、私は、こうした再生可能エネルギーへの転換を進めるための試算は、発送電分離改革と地域独占の廃止を前提としていること、系統接続を進めると同時に、スマートグリッドを軸とする一つのシステムを構築することが前提になっていることを主張しました。他の試算はこうした問題を踏まえていません。もちろん脱原発に関して、時間のタームをどうとるかは議論の余地がありますが、こうした改革は不可欠です。

原発を再稼働しないと、エネルギー供給が不安定になり日本経済にマイナスであるとの主張が続きました。原子力ムラは、3.11などなかったかのように、原発が必要だと言い始めています。私は、これに対して、『「脱原発」成長論』で述べたように、欧州債務危機など世界金融危機が続く中で、むしろ新しいエネルギーに対する多額の投資を引き起こすことこそが内需を喚起することにつながり、必要なのだと主張しました。

そして最後に、こう言いました。

福島県二本松市のゴルフ場の運営会社が放射性物質の除染と損害賠償を求める訴訟を起こしました。その中で、東京電力は放射性物質を「無主物」、つまり「東京電力の所有物ではない」と主張しています。こういうことを言っているかぎり、原子力は国民の理解は絶対に得られません。

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