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【読書感想】怖い絵

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怖い絵 (角川文庫)

怖い絵 (角川文庫)

Kindle版もあります。

怖い絵 (角川文庫)

怖い絵 (角川文庫)

内容紹介

残酷、非情で甘美……名画の“怖さ”をいかに味わうか。「特に伝えたかったのは、これまで恐怖と全く無縁と思われていた作品が、思いもよらない怖さを忍ばせているという驚きと知的興奮である」。絵の背景にある歴史を理解してこそ浮き彫りになる暗部。絵画の新しい楽しみ方を提案して大ヒットした「怖い絵」シリーズの原点が、満を持しての電子書籍化。ドガの『エトワール』、ラ・トゥールの『いかさま師』など全22作の隠れた魅力を堪能!

電子書籍版の絵画はすべてオールカラーで収録されています。

本書には、紙版に収録されていた以下の2点の絵は収録されておりません。
フランシス・ベーコン「ベラスケス〈教皇インノケンティウス十世像〉による習作」
岸田劉生「切通之写生」

 2017年12月17日まで、東京・上野の森美術館で開催されている『怖い絵』展、すごい人気みたいです。

www.kowaie.com

 人は「怖いもの」に惹き付けられる生き物なのか、それとも、絵の「背景」を知ると、その絵にあらためて興味がわいてくるのか。
 あまりに『怖い絵』シリーズや関連作品がたくさん刊行されているので、どれがどれなんだか……という感じではあるのですが、この『怖い絵』が、原点というか、最初の一冊になります。
 この時点では、後のシリーズのことなど考えていなかったでしょうから、まさに「当時のベスト・オブ・怖い絵」ですね。

 ここで紹介されている絵の「怖さ」には、さまざまな理由があるのです。

 ゴヤの『我が子を喰らうサトゥルヌス』やアルテミジア・ジェンティレスキのように、描かれている題材が「怖い」ものもあれば、ムンクの『思春期』のように「怖いというか、漠然とした不安にさいなまれる」という作品もある、ドガの『エトワール、または舞台の踊り子』なんて、どこが「怖い絵」なのだろう?という感じなのですが、著者が紹介している「この絵の背景」を読むと、華やかな舞台の裏側の現実を思い知らされます。

『エトワール、または舞台の踊り子』へもどろう。背後の書割りの陰にたたずむこの男は、着ている夜会服からして舞台関係者ではなく、上演中の舞台に平気で立っているところから報道関係者でもない。つまりエトワールのパトロンである。これは当時の人々には一目瞭然だったろうが、現代の我々、バレエを洗練された芸術と考えている者には、なかなか見えてこない側面だ。

いやにくっきりした黒が使われていながら、目に入ってこないのだ。ところがこうしたことを踏まえて見直すと、エトワールの首に巻かれたリボンの色もまた、紳士の眼と同じ鮮やかな黒で描かれているのが目にとまる。まるで金で縛られていることの象徴のように……。

 しかしもちろんドガは、当時流行のファッションとしてリボンを描いたにすぎない、がちがちの身分制社会の上方に属していた彼は、その階級の男性が持つ常識内にいた。要するに今の基準で言えば、踊り子に対する偏見を持っていた。この時代は観相学全盛でもあり、階級やら犯罪傾向は顔で判断できると信じられていたので、ドガは彼女たちの顔をことさら醜く描き、それが労働者階級特有の顔であることを示した、との説まであるくらいだ(それに関しての判断は日本人には難しい)。

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