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  • Lilac
  • 2011年12月04日 23:38

大企業でも公的企業でも破産する自由主義経済の国、アメリカ

先週火曜日、アメリカン航空が連邦破産法(チャプターイレブン)を申請した。1978年の航空自由化以前から一度も倒産せず、2001年の同時テロで、競合の多くが破産法を申請し、合併を通じて何とか生き残っていく中、コストダウンに懸命につとめて生き残っていた同社が、ついに倒産することになった。

米国の航空業界は倒産と買収合併の歴史である。旅客キロ数で上位の航空会社を見ても、ほぼ全てが一度は破産法を申請している。

1位 デルタ航空:2005年に原油価格高騰で収益悪化、破産法申請。2007年に脱却しノースウエスト航空(2005年に倒産)と合併

2位 ユナイテッド航空:9.11を受けて2002年に破産法申請。その後脱却し2010年にコンチネンタル航空(1983年に倒産)と合併

3位 アメリカン航空: 2011年11月29日 破産法申請

4位 サウスウェスト航空:同時テロ以降も黒字を計上し続け、上位では破産を経験していない唯一の航空会社

5位 USエアウェイズ:2002年に破産法申請

それ以下の航空会社も多くが破産経験済みで、また上記の企業に吸収されたりしている。今回倒産したアメリカン航空も、早速USエアウェイズとの合併により、効率化を目指してはどうかなんて業界関係者は語っている(参考記事: New York Times 2011/12/3)。
このように、破産法を申請して、経営再建に努め、2−3年で破産法から脱却して、他社と合併したりして大きくなる、というのが米国の航空業界の歴史だ。

何で、こんなにも航空会社が潰れるのか?
それは航空業界という、業界の特性にも理由があるが、アメリカであるということも大きいのではないだろうか。
国民の足である、重要な航空会社であろうがなんであろうが、経営がうまくいってなければ、ちゃんとつぶすわけである。

11月29日のFinancial Timesの記事で、「上場企業の史上倒産規模トップ10」という記事が出ていたが、驚くべきことにその全てがアメリカの企業だった。

下記チャートは、Financial Timesに載っていたソースを活用して、私が円換算して算出したもの。換算は1ドル80円一律で行ってるので、当時の円レートだと違ってるケースもあるけど御容赦を。参考: Financial Times: Top 10 all-time bankruptcies (記事を読むには登録が必要)

画像を見る

トップのリーマンは記憶に新しいだろう。2008年のリーマンショックの引き金になった企業だ。3位のワールドコム、6位のエンロンは、2001年のITバブル崩壊の頃、会計不正などが原因で倒産した企業で有名だ。4位のGMもつい昨年のことで記憶に新しいと思う。ちなみにクライスラーを除く9社は2000年以降のケースであり、ここ10年で大企業の破産法適用は増加していると言えるかもしれない。

日本の上場企業の倒産で最大のケースは、2000年のそごうグループで、負債総額は合計で2兆9000億円程度だった(だからギリギリでランキングには載っていない)。二位は先日のJALであり、その破産規模(負債総額)は2兆3000億円程度。これと比べても、米国では如何に大きな企業が倒産しているか良く分かるだろう。

このランキングには載ってないが、アメリカでは航空会社だけではなく、通信会社など公的な役割が大きい企業も、多くが一度は倒産を経験している。破産法を申請し、数年かけて経営再建に努め、再生、または吸収合併される、という岐路をたどる企業が少なくない。

安易な意味合いだしかもしれないが、米国では、大企業でも公的企業であっても、国や国に殉ずる団体が守ることなく、破産させる、と言うことではないだろうか。もちろん破産法を申請した後に、GMのように国が支援することはあるが、それもこの10社の中でGMだけであった。破産前に守られたケースとしてリーマンショック時の銀行や公的金融機関などがあるが、それとて"Too Big to fail"などと言われて大きな論議となった。ましてや、国の援助で不透明な形で破産を免れるということは一切ない。

アメリカと言う国は、GoogleやFacebookのように、起業したばかりの企業が10年もしないうちに大企業に成長することが許される国でもあるが、同時に、規模が大きくなっても、決してそれが理由で不透明な理由で守られることはない、本当の自由主義経済の国だ、ということなのだろうと思った。大企業となったからと言って、変な形で既得権益が守られることなく、ちゃんと破産するような国なのである。どんな企業でも、破産法を申請して、国の監視の下でちゃんと再生し、脱却するという経緯を経なくてはならない、と言う意味では公平で、非常に透明度が高いのだ。

日本では、大規模な事故を引き起こして、本来破産してでも被害者を救済すべきところを、不透明に守られている公的企業があることを考えると非常に対照的ではないだろうか。

#追記:ただし米国でも農業分野は結構不透明なところがある。大企業はないので趣旨は違うが、不透明に既得権益が守られていると言う意味では。

#追記2: その後Twitterで活発に議論されてますが、米国でも自動車業界などは長いこと保護産業でしたし、今でも郵便(USPS)や鉄道(Amtrak)など守られてると思われる企業は確かに多くありますね。ただここ10年で大企業の倒産ケースが増えていることを考えると、米国も徐々に真の「自由主義経済」への基礎を固めつつあるのかな、とも思いました。

出来れば異論・反論はTwitterではなくブログのコメント欄にいただけると幸いです。この記事が違和感があるものだと思っても、コメント欄に色んな方向から書いてあるのがまともであり、重要だと私は思ってるので。

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