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TPPは弁護士業界に何をもたらすか

今回はToo Poor Partners(貧乏すぎるパートナー弁護士)ではなく、Trans-Pacific Partnership(環太平洋戦略的経済連携協定)のお話。

私自身が賛否を表明するには甚だしく情報不足だが、弁護士業界は反対論一色だ。日本全体に与える影響についてはもちろん、日本の弁護士にも不利益との論調しかない。

そこで、思考実験のため、TPP賛成の立場から弁護士業界を見るとどうなるか、考えてみた(日本全体に対する影響は手に余るので除外する)。すると、それなりに面白いことが分かる。

第一に、TPPに参加すれば、大量の米国弁護士が日本になだれ込み、日本の裁判や法律事務を席巻するとの主張がある。

これは眉唾だと思う。現在、日本の弁護士業界は大変な不景気だ。弁護士志望の司法修習生が就職難にあえぎ、4分の1がまともに就職できない現状がその証拠だ。この状況が一過性のものでないとするなら、そんな市場に遠く米国からわざわざやってくる弁護士がどれほどいるのだろう。

第二に、それでもなお、来日する米国弁護士がいるなら、日本企業の国際業務と、外資の国内業務とにビジネスチャンスを見いだしてのことだろう。あるいは、米国では卯建の上がらない弁護士が、日本に勝機を求めてやって来るかもしれない。

これについていえることは、第1に、国内弁護士の大半を占める「街弁」よりも、大手企業法務・渉外法務系の弁護士に関係があるということだ。第2に、米国弁護士が、当事者双方の代理人に付くことはまずない、ということだ。つまり、米国弁護士が代理人として何か要求をしてきたとき、対応する日本人・日本企業の多くは日本人弁護士を依頼する、ということである。

このことは、日本の弁護士業界に明らかな朗報だと思う。米国弁護士が事件をどんどん掘り起こし、作りだしてくれれば、日本の弁護士には労せずして、事件の依頼が多数舞い込むことになる。上述のとおり、日本の弁護士業界は大変な不景気だが、その原因は、日本の弁護士の「事件創出能力」が欠けていることにもある。米国弁護士は、日本人が思いも付かないやり方で、法的トラブルを作りだしてくれるだろうし、そのノウハウを盗むチャンスをくれるだろう。また、米国で卯建の上がらない弁護士の能力は、相当低いとみて間違いない。日本というホームグランドで、日本人弁護士が負けることはない。つまり、米国弁護士がもし流入してくれば、既存の日本の弁護士に、巨大な利益をもたらす可能性がある。

日本人はそんな訴訟社会を望まないって?そう言う人には問い返したい。訴訟社会化は、TPP問題以前に、日本人自身が選択したことだ。弁護士を増やして、訴訟社会化が進まないなんて、思っていたのか。

第三に、日本の弁護士が海外で法律業務を行えるようになるかもしれない。これも、渉外事務所にとっては朗報だ。また、私のような街弁にも関係あるかもしれない。

グローバル化により、多くの日本企業が海外で活動し、多くの日本人が海外で生活している。それは、海外での日本人同士、あるいは日本人と外国人との法的トラブルが増えるということでもある。その市場規模は当面、多数の日本人弁護士を養うほどにはならないが、老齢の日本人弁護士が海外でつつましく暮らす足しにはなろう。米国やオーストラリア、今後参加するアジア各国で、近所の日本人社会とつき合い、法律相談や簡単な裁判をこなして小銭を稼ぎながら暮らすのも悪くないと、半ば本気で、私は思う。

しかし、このように考えてくると、大手渉外事務所がTPP参加に賛成の論陣を張らないのが、とても奇妙に思えてくる。二言目には「弁護士の国際化」と言っていた彼らが、なぜTPP問題に沈黙しているのだろう。今後注意深く観察してみたい。

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