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橋田壽賀子さん 「うまく死なせる医療」があってもいい


【「うまく死なせる医療」があってもいいと語る橋田さん】

 現在、生き方、死に方を綴って、ともにベストセラーとなっている著者2人が初対談を果たした。『安楽死で死なせて下さい』著者である脚本家の橋田壽賀子さん(92才)と著書『なんとめでたいご臨終』がたちまち7刷になった医師の小笠原文雄さん(69才)。それぞれの主張の相違点と共通点からは、私たちにこの先どんなことが待ち受けているのか、どんな心持ちで生きていけばいいのか、たくさんのヒントがあった。

橋田:小笠原先生の『なんとめでたいご臨終』を読むと、病気で死にそうだったかたが退院し、自宅に戻って、それで元気になられて亡くなるというケースがたくさん出てきますよね。

小笠原:そうです。橋田さんはどこで死にたいですか?

橋田:もちろん自宅です。私は病院が嫌いなんです。この前も顔にけがして、「頭に血がたまってるから入院しなさい」と病院の先生に言われましたが、黙って逃げ帰りました。そうしたら翌日具合が悪くなって、救急車で逆戻り。入院患者扱いでやってくれましたが、そのくらい病院は嫌い(笑い)。

小笠原:住み慣れたわが家はやっぱりいいですよね。末期がんの患者さんが自宅に帰られると、みなさん、目に精気が戻ります。生きる希望が出てくるので、宣告された余命よりも長生きします。そしてコロッと亡くなる。ぼくはこれを「希望死・満足死・納得死」と呼んでいます。残された日々を死ぬために生きるのではなく、住み慣れた家に戻れて嬉しい、そんな生きる喜びや希望と暖かさの中で亡くなるからです。

橋田:先生の本を読んでいると、私も心底、最期まで家にいたいと思いました。家だと、私はひとり暮らしなのでほんとに自由ですからね。誰かの顔色をうかがうこともないし、申し訳ないなと思うこともない。何をしようが自由です。

小笠原:その自由が病院に入ると相当制限されますからね。例えばちょっと身体が痛いとき、自宅なら這い這いできますが、病院ではさせてもらえません。患者が夜中にベッドから落ちて死ぬと病院は訴えられますから、どうすると思います?

橋田:まさか、縛りつけるんですか。

小笠原:あまり大げさに言えませんが、まさかのことは日本でも結構行われています。

橋田:だから私は、知らないうちに病院に運ばれないよう、対策はしてます。家の中で倒れても、救急車は呼ばないで。半身不随になっても生きているのはイヤだから、とちゃんと周囲に伝えています。

小笠原:ぼくも『なんとめでたいご臨終』の中に、安易に救急車を呼んでしまうと、苦しい延命治療をされたり、最期まで家にいたいという願いが叶わなくなりますよ、と書きました。

橋田:私はそれだけじゃなく、心臓が弱いものですから、AEDっていいましたっけ、お手伝いさんが「機械をリースして家に置いておきましょうか」と言うので、それも即座に「絶対いらない」と断りました。放っておいて。せっかくそのまま死ねるんだからって。

 私は延命治療をやめる「消極的安楽死」くらいじゃ不満なんです。そもそも延命措置はお断り。だって止めたとしても、いつ死ぬのかわからない。その間、おいしいものが食べられるわけじゃなし、ただベッドに横たわって死ぬのを待つだけ。そんなの、まっぴらごめんです。

小笠原:在宅医療や在宅ホスピス緩和ケアでいちばん大事なのは、本人が苦しまないことです。それと、本人がどういう希望を持っているかきちんと聞いておき、最終的に本人も家族も満足する生き方なり死に方なりを選んでもらうことですね。だから橋田さんのように、家族や医師など周囲の人に、予め自分の意思を語ったり、書き残しておくことが必要です。

橋田:ああ。小笠原先生が今おっしゃったことは、私がイメージしている希望の安楽死と似ています。前もって自分の意思を書面にし、周りに伝えておき、第三者がチェックして、本人の希望を叶える。

 私がなんらかの苦痛をかかえて病院に行っても、そのお医者様は、私がどうやって生きてきて、守りたい尊厳や譲れないプライドはなんなのかは診ない。でも、いいホームドクターがいれば、私がどんな価値観を持っていて、どんなことを望むかを予めご存じです。「この人にそんな治療をしても幸せじゃない」というところまでケアしてくださると思うんですね。この高齢化社会、生かす医療だけでなく、「うまく死なせる医療」もあってもいいと思いますけどね。

小笠原:われわれからすると、病院は「強制的に生かす医療」が過剰になりすぎる傾向がありますね。病院で息も絶え絶えになっていた患者さんがいました。家族が退院させたいというので家に戻ってもらい、点滴の量や酸素の量を減らすと、その患者さん、元気になったんですよ。

橋田:ああ、そういうこともあるんですね。

小笠原:ぼくは、病院で心臓が止まったり、心肺停止した7人の患者さんを治療して、その後、元気になった患者さんから臨死体験を聞いたことがあります。でも、今の話を聞いたので、ぼくの目の前で橋田さんが心肺停止になっても──。

橋田:助けない(笑い)。

小笠原:そっと看取ります。そして死亡診断書を書きます(笑い)。

※女性セブン2017年11月30日・12月7日号

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