- 2011年12月04日 08:30
世界一安全な原子力発電所、その壱
ノールトラインウェストファーレン州のニーダライン地方(ライン川下流)にカルカーという町があります。
カルカーには世界一番安全な原子力発電所があります。いや、世界には世界一安全な原子力発電所は二つありますので、世界一安全原子力発電所の一つです(笑)
カルカー原発はSNR 300とも呼ばれています。SNRとはSchneller Natriumgekühlter Reaktor(ナトリウム冷却高速炉)の略で、300は300MWも発電できるということで付けられました。着工当時にはナトリウム冷却高速炉は永久機関と見られました。歴史はとても面白いです。
1969年入札時に当時のドイツ科学大臣およびシーメンス社は建設は5億マルクしかかからないと約束が交わさ リンク先を見るれました。
(1965年の家庭用冷蔵庫の値段は350マルク、テレビは1500マルクでした。)
原子力の批判が増えました1970年代に、つまり1973年にカルカーが着工されました。3年後には建設費はもはや最初の約束の5億ではなく、28億6280万マルクと推測されました。完成は1982年だと発表されました。
野党の議員は科学大臣に「あんなかかるんだったら、やめた方が安いんじゃない?」と聞いたところ、「やめるだけで、15億マルクします。完成までは9億9千万しかかかりません。」との答えが出ました。
それから、1977年にはカルカーで4万人もの参加者のデモが行われて、総動員された警察官の数は西ドイツ史上で最大といわれています。(ドイツ共産党「赤旗」の文章ですけど、ドイツ語が読める方は、是非当時のデモ参加者の報告。赤旗だの、文体は変だと、色々言えますけど、とにかく、あの時代の証言としてとても面白い。)
それから、70年代後半にはトラウベ社長の件もありました。20年も原子力業界でのキャリアを持っていたインターアトム社のトラウベ社長が、原子力反対運動に内部の情報を渡し、RAFというテロ組織に好意を持った疑いで解雇された後、タラウベ氏はカルカー原発の建設をはじめ、原子力の使用に公に反対しました。
1979年にはスリーマイルアイランド原子力発電所事故があって、原子力に対する懸念が大きくなりました。原子力反対運動はカルカーの稼働が違憲であると、最高裁判所に違憲抗告と提出しました。
入札時に5億マルクかかると約束された原子力発電所は1972年にはすでに1700万マルクかかりました。1981年の新聞記事で「何十億もの墓」(Milliardengrab)つまり有意義のものにも使われず大金が葬られることです。1980年の総額は3億4千万マルクとされていました。
色々反対はあったものの、カルカー原発の建設は1985年に完了。液体ナトリウムは冷却系に循環させました。ナトリウムは凝固しないため、常時に電子発熱体が稼動されました。その時点ではいつでも運営の開始は出来ました。年間の維持費だけで1億500万マルクでした。
当時のドイツ政府は稼動を命じたのにもかかわらず、ノルトラインウェストファーレン州は「計算できないリスクが多い」ということで、燃料の搬入、つまり稼動の許可を出しませんでした。
当時の西ドイツの電力需要も思った程高くなく、原子力発電所の運営会社もさほど稼動しようと主張しませんでした。1986年のチェルノブイリ事故もあって、原子力反対運動の勢いが増しました。
1991年にはようやく稼動されないことが決められました。費用は70億マルク(4兆4800億円)となりました。取り壊しだけで7500万ユーロもすると推測されたため、取り交わしは全くの問題外でした。 リンク先を見る
新聞広告で建物の販売広告が出されて、オランダの投資家は2500万ユーロ(26億500万円)で購入しました。4兆4800億円の建設費・維持費にしてはかなりお得でしょう。
それから、そのオランダの投資家は何をしたかというと、その敷地内には472室もの巨大ホテルと大きな遊園地を立てました。冷却塔の中には飛行椅子、その外壁がクライミングウォールになっています。その他には、メリーゴーラウンド、ジェットコースターと色々な乗り物が出来ます。居酒屋、ボーリング場、バーンゴルフ、テニス場、トランポリン・・・ 年間に60万人の来園者も!
ドイツ旅行される方は是非!週末でも一泊は60ユーロ(7200円)から!「原発で泊まったことある」と言えるようになりますよ。
当然遊園地は電力(年間300万kWh)もガス(年間55万㎥)も大量に必要としていますけれども、敷地内に風力発電所とバイオマス発電所を立つ予定です。
つまり、元原子力発電所の敷地に立つ遊園地は再生可能エネルギーで稼動されることになります。
- Clara Kreft(クララ)
- 在日ドイツ人ライター。ドイツ人ならではの視点で執筆。



