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耳の聞こえない性的マイノリティの人が困ることとは?-理解ある手話通訳者が不足している現状

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職場や教育現場なども含め、様々なシーンで「LGBTQ」(※)や「性的マイノリティ」という言葉が聞かれるようになってきた昨今、LGBTQであることをカミングアウトする人も以前より増えてきて、「自分の身近にもいる」という人も都市部を中心に増えてきたのではないだろうか。

※「LGBTQ」…「LGBTQ」の人々に加えて「L/G/B/T」のそれぞれのカテゴリーに当てはまらない人々「Q」を入れた表現。「Queer(クィア)*」や「Questioning(クェスチョニング)**」、「セクシャリティを決めない人」の人たちの存在を尊重するという意味も含まれる。
*「Queer(クィア)」もともと、英 語で「変態」というように差別的に使われていたが、最近、異性愛主義[Heterosexism/ヘテロセクシズム]に 対抗する意味として当事者がポジティブに自称する言葉 として使われる。
**「Qestioning(クェスチョニング)自らの性のあり方がまだわからない/決めつけないことにしているというあり方。


しかしLGBTQのコミュニティ内においても、マイノリティとなる人たちがいる。たとえば耳の聞こえない、「ろう」の人々、「ろう者」だ。
今回は、Deaf LGBTQ Centerの代表の山本さんに「ろうのLGBTQ」についてお話を伺った。
※手話通訳の方にご同席頂きました。

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Q:耳が聞こえないのはいつからですか?

私の両親は、ともにろう者です。多分遺伝性のものだと思うのですが、私も生まれつき耳が聞こえません。
両親ともに耳が聞こえないので、私が赤ん坊のころは、夜中に私が泣いたらわかるよう私の手と母親の手をひもで結んでいたそうです。赤ん坊はわめくときに手足をばたばたするので、ひもが引っ張られることで泣くことに気づくようにしていたと聞いています。
耳が聞こえないなかでの子育ては大変だったようで「もうこれ以上はいいね」となったのか、私は一人っ子です(笑)

両親ともにろうなので、両親の友達もろう者が多く、私はろう者に囲まれて育ちました。だから私が初めて覚えた言葉、第一言語は「手話」です。

「聞こえない」ということは聞こえる人にとっては病理的な見方で「かわいそう」とか、「聞こえる人と同じようにしてあげたい」と思うかもしれませんが、両親ともに「聞こえない」文化のなかで育ってきた身としては、第一言語が手話であることに私は誇りを持っています。

小学校にあがるときに、聴者(耳の聞こえる人)と一緒に過ごすようになり、第二言語として日本語の読み書きを習得しました。だから私はろうのコミュニティとろうでない人たち「聴者」のコミュニティと両方を知っています。

Q:いつ頃から、性的マイノリティであると自覚されたのですか。

小さいころからですね。私は女性の体で女性の気持ちの人なのですが、テレビに出てくる、いわゆる「ニューハーフ」や「オナベ」と言われる人を見て、魅力的だなあと感じたのを覚えています。今でいう、トランスジェンダーにあたる人に惹かれることが以前から多かったと思います。

でもその気持ちが何であるかということは、自分ではよくわかっていませんでした。

高校生になって出会った年上の方が、ろうトランスジェンダーの方で、自分のアイデンティティをしっかり自覚している方でした。
その方に、性的マイノリティのアイデンティティについていろいろ教えてもらったり、よき相談相手になっていただいたりしました。

そして、大学ではフェミニズム、ジェンダーなどについて学びました。また、LGBTQについてのサークルにも入りました。ここで、聴者のLGBTQの仲間とたくさん出会いました。

ただ、私たちろうLGBTQの人たちは聴者のLGBTQコミュニティでは、「ろう」であることでマイノリティになりますし、「ろう」の中では「LGBTQ」であることでマイノリティになってしまいます。
そんなふうに、どちらのコミュニティにおいてもマイノリティになってしまうので、ろうのLGBTQには様々な苦労があります。

Q:「ろうのLGBTQ」にはどのような生きづらさがあるのですか?

LGBTQの相談受付といえば、電話が一般的ですが、ろう者の人には電話は使えません。
そのため、不安や悩みを相談できる場所が不足しています。

また、「聞こえない」文化の特性として、情報が足りないということもあります。LGBTQや差別の現状も聴者の間以上に、あまり知られていません。そのため、ろうの社会で、LGBTQのことを相談するのは難しいのですが、もう一つの課題は、聴者にそのことを説明する手段が足りていないことです。

特に40代~60代以上が多い手話通訳者に、最近のLGBTQの情報が浸透しているわけではありませんので、LGBTQの手話通訳だとわかって仕事の途中で帰ってしまう人もいました。
手話の中の差別的表現に気づかず、ろうLGBTQの人たちにショックを与えてしまう通訳者もいます。
聴者の「病院」や「カウンセリング」「裁判所」といった、自分の一大事を左右する場所で、自分のアイデンティティにまつわる相談事を手話で通訳してくれる手話通訳者が絶対的に不足しているんです。

(差別的な手話表現の例)
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山本さん提供画像

手話における「結婚」という表現も、「男性」を表す親指と、「女性」を表す小指を合わせる動作であるなど、「男性」と「女性」の結婚を前提としたものだったり、LGBTQを示す表現が手話教室で教えられることはほとんどなかったりなど、現在広く知られている手話の表現にLGBTQへの配慮はほぼありません。

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現在の日本の手話表現は、「男」と「女」がくっつく動作で示す

手話の世界では、まだまだ性別が二元論になっていて、男女の結婚以外の結婚があると話されることはほとんどないと思います。多様な性を表す手話表現が足りないのです。
「結婚」を示すなら、人と人が寄り添うという表現でもいいのでは?と思います。

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「人」と「人」が寄り添うを意味する動作

そういったダブルの生きづらさにあるなか、重要なシーンで自分のアイデンティティをうまく説明・相談できず、誰にも伝わらないことが多く、知り合いの複数のろうLGBTQの人がそれを苦に自殺してしまいました。

このことに大きくショックを受け、私は「ろうLGBTQ」のコミュニティを作り、その存在を知ってもらうためDeaf LGBTQ Centerというグループを立ち上げました。

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