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「私は働きたい」-心からの叫び、泥沼から差し出されたその手とつながる首都圏青年ユニオン

 ※友人から首都圏青年ユニオンが取り組んでいるSHOP99の「名ばかり店長」「名ばかり管理職」裁判についてのメールが届き、「すくらむにアップしてもらっていいですよ」とのことですので紹介します。(※ちなみに私も「首都圏青年ユニオンを支える会」の会員です。byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)

「私は働きたい…」 心からの叫び



 私は首都圏青年ユニオンの「支える会」に入っています。

 首都圏青年ユニオンって、なーに?というかたに、簡単な紹介。2000年12月にパート・アルバイトなど不安定雇用の青年たちが中心となってどんな働き方でも、どんな職業でも、加入できるように結成された労働組合です。メンバーの多くはパート・アルバイト・派遣・請負等の「非正規雇用労働者」で、職場に労働組合が無くても、一人で加入することもできます。一人ぼっちの闘いにならないよう、みんなで力を合わせ問題を解決していく組織として顧問弁護団の支えも得ながら、多くの争議を闘っています。

 その中で、SHOP99というコンビニで店長をしていた清水文美さんが2008年、SHOP99(ローソンの完全子会社九九プラス)を相手に残業代未払いおよび長時間労働による労働災害などの案件で訴えました。その裁判で今年5月31日、東京地裁で完全勝利を勝ちとることができたのです!(その後会社は控訴せず、判決は確定しました)下の映像は、その時のもの。ぜひ8分30秒、お時間をとって見て下さい。
http://www.youtube.com/uniontube55?gl=JP&hl=ja#p/u/0/xFlI_ociGak


 ▼《上記映像から清水文美さんの発言要旨》

 きょうもたくさんのみなさんに来ていただきありがとうございました。

 私の最初の記憶は、入社したときにネクタイをしめたことです。それまではフリーターでネクタイをしめるということがありませんでしたからよく覚えています。

 その入社からあっという間に次の記憶に飛びます。次の記憶は、精神科の待合室で診察室に呼び出されるのを待っている自分でした。入社してからわずか1年2カ月でからだが壊れてしまったのです。正社員として働きたいと私は思っていました。それなのに働くことができなくなってしまいました。

 労働組合に相談することで、一つひとつ問題を乗り越えて行きたいと思いました。からだが良くなるようにと毎日毎日薬を飲み続けました。でもいまだに健康が戻らない。薬を飲む私の姿を見る両親からも気が滅入るようだと言われ、薬を影でこそこそ飲むようにもなりました。でもまだまだ治りません。

 働くということはこんなに難しいことなのでしょうか。働きたいです…私は…働きたいんです。受け入れてくれない会社、冷たい社会、おかしいと思います。私はやっぱり働きたいのです。そのことをめざして、今後もたたかっていきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。(※清水文美さんの発言要旨はここまで)

 清水さんのお話は、心を打ちます。「働きたい」…心からの叫びです。彼が人間らしく働くことができるようになるまで、闘いはまだこれからも続きます。

 かつて清水さんはこのように話されました。「(会社に)わたしは、燃料のように燃やされた。…モノのように扱われたのなら、またリサイクルすればいいけれど、わたしは何も残らないように働かされた」と。

 今、多くの職場で、人を人として扱わない働かされ方が横行しています。どれだけ酷いか、みんな知らない。電車のとなりにいる人、どれだけ残業している? 賃金、どれだけもらっている? 休める? それより、仕事ある? それぞれに苦しいつらい思いを抱えていても、なかなか共有できないでいます。震災以降、「まだ仕事があるだけマシ」と我慢している人も増えているとか…。

 私たちは、働きたい。
 人間らしく、人間の持つあたりまえの権利として、働きたい。

 その叫びは今はまだ、かぼそい、ほんとに小さな声かもしれない。でも集めていけば、そして手を繋いでいけば、きっと世の中をひっくり返すだけの大きなうねりになる。私はそう信じています。そうしなければいけない、と思っています。

 裁判の詳しい内容などは、ぜひ首都圏青年ユニオンのHPをご覧になってください。
http://www.seinen-u.org/shop99.html

 ※友人からのメールは以上です。すくらむブログでも、これまで何度か清水文美さんのたたかいを紹介しています。以下もあわせてお読みください。

 ▼過去エントリー「若者の孤立と絶望から互いにつながる希望へ - 重松清が考える、働く人の貧困と孤立のゆくえ」からの一節

 派遣労働など非正規労働者だけでなく、正規労働者も過酷な労働を強いられています。SHOP99の店長だった清水文美さんは首都圏青年ユニオンに加入し、いま裁判をたたかっています。清水さんは、月100時間以上の残業をしても「店長だから」という理由で残業代が支払われていませんでした。いわゆる「名ばかり管理職」「名ばかり店長」です。店長のときの清水さんの出勤簿には、朝7:45出社で翌日7:24退社し同日1時間後の8:55に出社し翌朝8:05退社という4日間で80時間超の労働時間で、この月休んだのは1日だけで、1月343.5時間という記録も残っています。こうした異常な長時間労働のためにうつ病になり、働けなくなってしまった清水さんは、自分だけでなく他の社員らにこんなひどい働かせ方をしている会社の責任を問いたいと裁判でたたかっているのです。清水さんは、「自分はモノ扱いよりもひどい燃料扱いだったと思います。会社のための熱になりエネルギーにはなりましたが、燃料は使い終われば何も残らない。消耗するだけで私という人間が空洞化してしまいました」と語ります。

 ▼過去エントリー「泥沼から差し出されたその手をつかんで離さず『つながること』」(首都圏青年ユニオン書記次長・山田真吾さんからのメール)

 今日(2008年10月5日)、全国青年大集会で、SHOP99の清水さんは以下の発言をしてくれました。(要員でいろいろと動いている中、清水さんの発言を聞いて、私は泣いてしまいました)

 清水です。集会で何とかみんながいるので発言することができます。

 私は8年という長いフリーターの期間を経てちょうど今から2年前の2006年に、やっと正社員に就くことができました。

 私が高校を卒業した当時は就職氷河期で、正社員の就職口がほとんどありませんでした。アルバイトを転々とし9年目でようやくつかんだ正社員でした。それがSHOP99でした。

 しかし、入社して1年2カ月というわずかな期間で、私は「うつ状態」と診断され、働けなくなりました。私は店長になること以前に正社員として胸を張れる自分でいたい、そういう思いで入社しました。しかし今は毎日薬を飲まなければならないという状態です。今日も体調は完全ではありません。

 けれど、「何にもできない」、うつの状態の中で、「何もできない」「何もできなくなってしまった…」、と手を上げると…、手を上げるとその手をつかんでくれる人たちがいました。そしてその人たちの手は、ぐちゃぐちゃの泥沼から私を引き上げてくれました。その手をつかんで離さなかったのが首都圏青年ユニオンでした。多くの仲間に支えられて今私はここに立つことができました。私はひとりじゃない。ひとりぼっちじゃない。自分たちに課せられていることが一つあるとすれば、それは「つながること」だと思います。

 ※それから、首都圏青年ユニオン書記長の河添誠さんは、『「生きづらさ」の臨界』(湯浅誠・河添誠編、大月書店)の中で次ぎのように書いていることを最後に紹介しておきます。

貧困とたたかう労働運動



 現在の若者には貧困がおおいかぶさってきている。貧困な状態に至っていなくとも、貧困が緩やかなグラデーションを描き、そのグラデーションのなかに若者の多くの生活は存在している。

 貧困のなかにある若者は、「自己責任」イデオロギーに徹底的に巻き込まれてしまっている。そこから、「自己責任ではなくて社会や政治の責任なのだ」と認識するまでには、相当の媒介を必要とする。社会的にとらえ返す力をどのようにつけていくかが運動にとって重要である。その際、さまざまな“力づけ”(エンパワーメント)が運動に必要である。首都圏青年ユニオンの活動のなかでは、労働現場で孤立して分断された若者が居場所としてユニオンを意識してもらえるように、会議の時には必ず食事を出したりしてゆるやかに運営している。ニュースレターの発送作業や団体交渉、会議へもすべての組合員が自由に参加できるように、メーリングリストで直接に呼びかけている。“自分がだれかに必要とされている”という感覚を取り戻すことが、自分自身の居場所を見つける第一歩となる。

 さらに、労働基準法以下ともいえる「破壊された労働」そのものとたたかう労働運動を発展させることが大切である。最低限の労働法すら守られない状況に長期におかれた若者はみずからが、社会や政治を変えることのできる主体になるなどということは想像すらできない。だからこそ、彼らが直面している一つひとつの困難を解決していくことには意味がある。首都圏青年ユニオンでは、不当解雇、残業代未払い、社会保険未加入、雇用保険未加入、有給休暇未取得などの違法行為とたたかい、最低限の労働条件を守らせていくことを一つひとつ勝ち取っている。これらの要求は、労働運動の要求としては低い水準のものであるが、若者の多くは、こうした最低限の法律すら守られない労働環境に苦しみ悩んでいる。首都圏青年ユニオンの団体交渉によって、たたかいとった経験の蓄積は、若者の認識を少しずつだが確実に変化させていく。こうして初めて、自分自身の困難が自己責任によるものではなく社会的につくられたものとしてのとらえ返しが可能になる。そうして、社会のなかに自らの居場所を見つけることも可能になる。憲法25条の生存権と憲法28条の団結権、団体交渉権、団体行動権をつなげる意味がここにある。

 若者が「自立」するために、「自己責任」イデオロギーを剥ぎ取ることは不可欠であり、そのためには、これまでにない運動の展開を必要とする。この運動課題は、着手されたばかりであり、試行錯誤が続くであろうが、この課題に正面から切り込むことは急務である。(首都圏青年ユニオン・河添誠書記長記、『「生きづらさ」の臨界』26〜28ページより)

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