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「取材してほしい」(雨宮処凛)

最近、嬉しいことがあった。

それは7年くらい前、生活保護申請に同行した女性から届いた1本のメール。

そこには彼女が結婚し、最近女の子を出産したことが綴られていた。

「雨宮さんには本当にいろいろお世話になったので、あの時の恩をこの報告でかえさせていただきます」

その言葉が、本当に嬉しかった。

初めて出会った時、20代の彼女はホームレス状態だった。その数日前に住んでいたシェアハウスのようなところを追い出され、ネットカフェなどを転々としていた。ちょうど台風の時期で、ネットカフェに泊まるお金もなくなった夜は、暴風雨を避けるため、ずーっと商店街などを歩き続けていたということだった。

実家は「勘当同然」とのことで、東京に出てきてからは、風俗の世界に足を踏み入れていた。所持金も住む場所もない彼女には、寮付きの風俗店という選択肢しかなかった。一時期は彼氏ができて同棲したものの、凄まじいDVを受けていたという。

が、しばらくはそれでも逃げなかったそうだ。ここで逃げてしまったら、また風俗に戻るしかなくなる。DVか、風俗か。そんな究極の選択の中、彼女は彼氏と別れ、身体を売る世界に戻った。

今度は店舗勤務ではなく、インターネットで個人で客を探すという、ものすごくリスクが高いやり方だ。住んでいたシェアハウスのオーナー的な人が彼女の「売春」を管理するという生活の中、休む間もなく客をとらされていたという。困窮し、SNSで繋がった人の「仕事がある」という言葉を頼っているうちに、そんな生活になっていた。

そんな彼女からメールが届いたのが7年ほど前。一度も会ったことのない彼女からのメールには、現在の状況と、「取材してくれないか」という言葉が書かれていた。困っているから助けてほしい、ではなく、「取材してほしい」。

私は彼女が滞在しているネットカフェに向かい、ファミレスで食事し、後日、生活保護申請に同行した。どれほど困っていても、何日も食事をしていなくても、「助けて」ではなく「取材してほしい」という言葉に、胸が痛んだ。それほどに、「助けて」という言葉は禁句になっている。状況が厳しければ厳しいほど、口にはできない言葉になっている。

そんな彼女が、一児の母になったのだ。結婚相手がどんな人なのか、今、どこに住んでいるのか、詳しいことはわからない。だけど、彼女が私にメールしようと思ってくれたということが、すべての答えのような気がした。

「幸せにね」

メールの最後にそう書いた。今まで大変だった分、本当に本当に、幸せになってほしい。

(あまみや かりん・『週刊金曜日』編集委員。11月3日号)

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