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戦略なき増税路線

 政府・与党は、来年度の税制改正に向けて、会社員など給与所得者の所得税を計算する際に収入の一定額を経費とみなして課税対象から差し引く給与所得控除を、高所得者を中心に縮小する案の検討に入ったと報じられています。

◆高所得者に有利な所得税

 所得税の基本は、所得の高さに応じて税を負担する「累進課税」です。

 ところが、現行の所得税では、厚生年金などの社会保険料を給与から支払った場合、その分を差し引いた額をもとに、所得税が計算されます。そのため、多額の社会保険料を支払っている高所得層は控除の額も大きくなり、結果的に高い所得に応じた税負担がなされていないという実情が指摘されています。

 一方、厚生年金に加入していない人は、納める社会保険料の額自体が少なく、結果、控除額が小さくなっています。

 つまり、社会保険料の控除も視野に入れると、高所得層が事実上「優遇」されているのが現在の所得税と言えます。

◆「控除の見直し」は行うべき

 「所得税控除の見直し」は私の持論であり、政府・与党が検討を進めるのであればそれ自体は賛成です。

私は先の衆院総選挙において、消費税を5%に引き下げ、その「代替財源として」所得税の控除のあり方を見直すべきだと主張しました。

詳細は私のホームページの「馬淵澄夫「消費税引き下げの検討」(http://mabuti.net/%E3%83%88%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF/)」をご覧いただきたいのですが、具体的には、社会保険料に対する控除を見直すことで、消費税1%分以上の税収にあたる2.5兆円程度の税収を確保できます。これに加え、株取引などで得た所得への課税強化、脱法的に税逃れを行う企業への課税強化などを組み合わせることで、消費税3%分は十分賄えることを示した検討結果を公表しました。

◆控除見直しは消費減税とセットで

 政府・与党の検討する「所得税控除の見直し」は良いとしても、問題は「増税」路線の先にある「戦略」の有無です。

 政府与党案と私が主張してきた案との最大の違いは、「経済対策としての消費税減税を同時に行うか否か」です。

 政府・与党は消費税を10%に上げた上で、所得税控除を見直そうとしています。政府・与党は、全納税者を対象とした「基礎控除」を同時に見直すことで、企業に属さず働く個人や所得が低い層の税負担を軽くする方向で検討しているとされていますが、これが「経済対策」として、いかなるインパクトがあるかは検討された形跡は見あたりません。

 「こちらを増やしてあちらを減らす」的な帳尻合わせの税の見直しではなく、税と経済が密接に関係していることを踏まえ、「戦略的な」税の見直しこそが必要と考えます。

 消費が落ち込み続けている経済状況のもと、国民の暮らしを守るという最も大切な目標を実現するためには、所得の低い層に悪影響の大きい消費税を引き下げる代わりに、高所得層が恩恵を受けている控除を見直すべきです。個人消費=景気・経済の回復と、格差是正とを同時に行うべきというのが私の主張です。

政府・与党には、従来の硬直的な思考から離れた、「戦略的な」税の見直し論議を強く望みます。

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