
【”戦犯”と呼ばれた男が初激白】
石坂泰三、土光敏夫という2人の経団連会長を輩出した名門企業・東芝の不正会計問題は、関与した歴代社長たちの栄光を地に墜とした。なかでも、本来なら石坂、土光に続く財界トップとなるはずだった「テヘランからきた男」の屈辱たるや──同名の評伝を著したジャーナリスト・児玉博氏が、“東芝の戦犯”とまで言われた元社長・西田厚聰氏の本音を丸裸にした。
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西田厚聰は、東芝壊滅の責任は自分にはないという。では誰のせいだと言うのか。西田は、2009年に社長職を引き継いだ佐々木則夫の責任を明言した。以下は、西田による佐々木評である。
「僕は佐々木がどんな人間か、あまりね(知らなかった)……。佐々木が(故意に)僕を騙したかどうかは分からないけども、騙されたのは事実だね。あいつは猫をかぶっていた」
「どういう人間かって? もうね、自分のことしか考えない。しかも、自分が一番正しい、自分の考えがなんでもかんでも正しいとする人間ですよ」
「他に後継になれるような人間がいたら、そいつを指名していた」
「全体をドライブさせる人間として選んだ。でも間違いだった。何も成長させなかった」
西田は佐々木社長時代、すでに東芝の危機に気づいていたという。
「(佐々木の就任)2年目ぐらいでしょうね。取締役会でしか会わないけど、もうどんどん売上が減っているわけだから。僕がやっていた時は最高で、7.6兆円ぐらいまでいったんですよ。それが6兆円台になり、ひどいから取締役会で、ここまで売上が落ちたんだから、社長以下副社長、経営幹部は市場に打って出ろと言ったんだ。つまり新規の顧客を目指してみんなで営業活動を始めろということですよ。ところが、まったく外に出ず、馬耳東風です」
後継指名にしくじった自らの非に言及することは一度としてなかった。「選んだのはあなたですよ」との思いが強まるばかりだった。