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〝女子大生ブーム〟を生んだ「ミスDJ」…田中秋夫が語る秘話

BLOGOS編集部

今でもラジオ界で伝説的に語り継がれる深夜放送と言ったら「オールナイトニッポン」「パック・イン・ミューッジック」「セイ!ヤング」の3番組だろう。いずれも1960年代の後半にスタートし1970年代の前半にブームを迎えた。

その後70年代の末になるとブームは大衆化し、リスナーが大学生、受験生から高校生や中学生へと低年齢化していった。その結果、DJに寄せられる投書ハガキの質が落ち、番組自体が変質を迫られることになった。

ニッポン放送の「オールナイトニッポン」は笑福亭鶴光やタモリ、ビートたけし等、テレビで人気が出たお笑い芸人を次々に起用しはじめた。しかし、私にとってテレビが生み出した人気者を深夜番組に起用することには抵抗があった。「セイヤング!」の出演者たちの多くは無名時代に番組を担当し次第に人気者に成長していった。私はラジオが産み出した人気者にこだわったのだ。

再び「深夜放送ブーム」を巻き起こす

そこで私はラジオ自身の力で再び「深夜放送ブーム」を巻き起こしたいと考えた。

そして12年間続いた「セイ!ヤング」を一旦終了させて新番組をスタートさせようと決断した。そこで発想したのがアメリカのラジオ界を視察した時に聞いたラジオ編成の理論「レストーク・モアミュージック」だった。

アメリカのラジオ局の多くはミュージックステーションを売りにして「おしゃべりは短く、音楽はより多く」を標榜していた。

私は「その番組スタイルは日本では新鮮に感じられるに違いない。」と思い、「ミスDJ」というタイトルを思いつき、番組のDJを広く女子大学生たちから募集し、コンテストで「ミスDJ」を決定するという企画を考えた。

この企画提案は制作部、編成部共に歓迎され1981年10月改編で24時30分~27時で番組が決まった。

「ミスDJコンテスト」には各大学から523人の応募があり、タレントだった野末陳平審査員たちの審査の結果、成城大学1年の千倉真理がミスDJの第1号に選ばれ水曜日の担当となった。

その他のメンバーには立教大学の加藤エミ(月曜)、青山学院の川島なお美(火曜)、日本大学の川口雅代(木曜)が決定した。金曜日は文化放送の女子アナで「セイ!ヤング」に〝ぽんた〟のマイクネームで出演していた小林寛子が担当することになった。

番組のテーマ曲は当時デビュー直後のオランダ女性グループのドリードッツの曲を番組名に合うようににアレンジした「あこがれミスDJ」だった。

番組は前半30分がハガキによるベスト10の発表。25時からは個々のリクエストに応える形式だった。

番組はそれまでの深夜放送とは全く違う新鮮で華やかな雰囲気に満ちていた。

聴取率は「セイ!ヤング」の3倍

そして番組スタートと同時にスポーツ紙、週刊誌など他のメディアによる取材が殺到し大きな反響を巻き起こした。1つのラジオ番組がこれほど注目されたのは珍しい現象だった。

聴取率も前番組「セイ!ヤング」の3倍となり、短期間での躍進ぶりが話題となった。

82年3月2日のスポーツ報知で「おしゃべりから音楽中心へ」と言う記事で取り上げられた。この番組がきっかけになってラジオ各局に女子大生がパーソナリティを務める番組が次々に誕生した。

さらに2年後の83年にスタートしたフジテレビの深夜番組「オールナイトフジ」と共に女子大生ブームを巻き起こすことになった。

その後何回かのミスDJコンテストを行い担当DJは何人かが入れ換わった。

あれから30年数年を経た現在、あの時の「ミスDJ」たちは様々な分野で大活躍している。

女子大生の社会進出の踏み台に…

残念なことに、川島なお美さんは2015年9月24日に癌のため亡くなってしまったものの、出版社役員として良質の絵本をプロデュースする千倉真理、ニュースキャスターとして報道番組を仕切る長野智子、女優として活躍している斎藤慶子。TVタレントの向井亜紀、有賀さつき。エコツーリズムの提唱者で大学で教鞭をとる小林寛子、ジャーナリストとしてニューヨーク情報を伝える川口雅代、等それぞれの分野で大活躍している。

あの番組が女子大生だった彼女たちにとって社会進出し活躍する踏み台になったと思うと大いに感慨深い思いがある。

※田中秋夫プロフィル
1940年生まれ。一般社団法人放送人の会・理事。元FM NACK5常務取締役。
1964年、文化放送にアナウンサーとして入局、その後、制作部に。「セイ!ヤング」や「ミスDJリクエストパレード」など深夜番組の開発に尽力し、ラジオ界での名物ディレクターとして知られる。1990年にFM NACK5に制作責任者として転籍。ラジオ番組のコンクールでは「浦和ロック伝説」「イムジン河2001」「中津川フォークジャンボリー」等で日本民間放送連盟賞受賞。

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