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私が「死にたい」と言ってた頃〜座間の9人殺害事件を受けて〜の巻 - 雨宮処凛

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 「生きていればいいことがある」「親や周りの人の気持ちになってみろ」。そんな言葉も同じくらい響かなかった。そんな通り一遍の言葉より、「自分も死にたい」という言葉が沁みる夜がある。「死にたい」でしか繋がれない瞬間が、誰の人生にもきっとある。だけど、必死で伸ばした手を誰が握り返してくれるのか、そこまではわからない。そうして今回、最悪の事態となってしまった。

 「死にたい」人をターゲットとした事件は、05年と07年にも起きている。どちらも自殺サイトで知り合った相手を殺害したというケースだ。犯人の一人には既に死刑が執行されている。

 「実際に死にたいと思っている人はいなかった」。今回の事件の容疑者はそう供述している。

 事件を受けて、自殺を仄めかすネットへの書き込みの削除や通報を求める声もある。政府の関係閣僚会議では、自殺に関する不適切なサイトや書き込みへの対策強化について検討されるという。

 だけど、多くの人が指摘しているように、「死にたい」は、貴重なSOSだ。普段から、リアルな関係で弱音を吐けていれば、それが当たり前のことだったら、こんな事件は起きなかった。禁止されるべきは「『死にたい』という書き込み」ではなく、弱音を禁ずるような圧力ではないのか。

 20代、30代の死因の1位はもうずーっと前から「自殺」だ。そして08年からは、11年をのぞき、15〜39歳の死因の1位が自殺である。先進国の中では突出して高い数字で、私たちは若い世代がもっとも自殺で死にやすい国に生きている。

 リストカットやオーバードーズをし、「死にたい」と散々言ってきた私が生き延びられたのは、自分と同じように「死にたい」人たちとたくさん出会ったからだ。

 今だって、死にたいと思う瞬間はある。これからだって、そんなことは無数にあるだろう。だけど、私が「死にたい」と口にすれば引かずに聞いてくれる人たちがいる安心感があるからこそ、生きていられる。

 「死にたい」と言っていいし、弱いまま生きていい。弱音を吐いてもいいし、何もできなくてもダメでもいい。

 そんなメッセージが、どうか誰かに届きますように。そう思いながら、書いている。

画像を見る座間のアパートの前に供えられたお花など

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