- 2011年12月01日 08:00
9兆円の市場!?人材サービス産業が取り組む5つのテーマとソーシャルリクルーティングの可能性
2011年に入ってから、ソーシャルメディアを活用した人材採用/就職活動の手法である「ソーシャルリクルーティング」という用語の認知度は劇的に上がり、多種多様なサービスも生まれ始めました。例えば、FacebookとKDDIが提携し、日本独自のFacebookサービスとして、同じ業種の就職を目指す学生同士を「就活フレンド」として結びつけるサービスを本日12月1日より開始するとしています。
今回は、人材サービス産業の民間団体が発表した共同宣言の内容を踏まえ、人材サービス産業がこれから取り組むべき課題を理解し、ソーシャルリクルーティングが担うべき役割について考えてみましょう。
大きな「うねり」を迎える9兆円超の人材サービス産業
2011年11月21日(月)、以下の4つの人材サービス産業の民間団体が、人材サービス産業の機能や社会的役割、今後の労働市場の課題に関する研究報告(http://www.zenkyukyo.or.jp/a-jij/f/releases/report.pdf)をまとめ、人材サービス産業の取り組みに関する共同宣言を発表しました。
・社団法人全国求人情報協会(会長:丹澤直紀)
・社団法人日本人材紹介事業協会(会長:佐々木和行)
・社団法人日本人材派遣協会(会長:坂本仁司)
・社団法人日本生産技能労務協会(会長:清水竜一)
共同宣言では、労働市場の変化や人材サービス産業の役割を踏まえ、以下の「人材サービス産業が取り組むべき5つのテーマ」を設定しています。
【人材サービス産業が取り組む5 つのテーマ】
1.マッチング・就業管理を通じたキャリア形成の支援
2.採用・就業における「年齢の壁」の克服
3.異なる産業・職業へのキャリアチェンジの支援
4.グローバル人材の採用・就業支援
5.人材育成を通じた人材サービス産業の高度化
さらに4団体は、人材サービス産業を横断連携する組織である「人材サービス産業協議会(仮称)」を発足させ、5つのテーマを推進するためのプロジェクトを立ち上げ、取り組みの具体化に向け検討を開始するとのことです。
なお、下記のとおり人材サービス産業の市場規模は、売上ベースにおいて、介護、衣料品、電子部品・デバイスなどより大きく、国内で約9兆円であることも発表しました。
画像を見る
出展「2020年の労働市場と人材サービス産業の役割」(人材サービス産業の近未来を考える会)
ソーシャルリクルーティングに何ができるか
これまでの人材サービス産業は、転職コスト削減や成長産業の雇用促進などに大きな役割を果たしてきました。しかし、世界的に経済が縮退する中で、雇用の不安と労働力不足、働き方の多様化など、早急に解決するべき課題も山積みしています。
こうした課題の解決を見据えて提案された5つのテーマを推進する上で、インターネットの活用は外せない要件になることは明らかです。もちろん、ソーシャルメディアを活用した採用活動、求職活動も、上記のテーマとも結びつくでしょう。
以降では、「2020年の労働市場と人材サービス産業の役割」(人材サービス産業の近未来を考える会)の内容を踏まえ、人材サービス産業が取り組む5つのテーマに対し、ソーシャルリクルーティングがどんな影響を与えるかを考えていきます。
マッチング・就業管理を通じたキャリア形成の支援
報告書では、このテーマについて「より安定的な雇用への転換や処遇の向上、そのための能力開発など、個人の発展的なキャリア形成を、人材サービス産業の中核機能であるマッチングと就業管理を通じて支援する。」としています。
企業と人材のマッチング、あるいは、雇用主/就労者と求職者のマッチングは、ソーシャルリクルーティングが得意とする分野です。
例えば、ソーシャルリクルーティングを実現するFacebookアプリの一つである「Social Job Posting」では、Facebookページに掲載した求人票内に「この求人に関連する人」という項目を設けています。
表示されているアイコンをクリックすると、すでに働いている社員のFacebookの個人プロフィールページにアクセスすることができます。これにより、求職者は事前にその職場にいる人の普段の様子をFacebookを通して知ることができます。
これまでは、就職活動において、事前に職場の人の情報を知りたい場合、直接会社訪問をしたり、インターンとして働くといった方法がありました。しかし、相手の都合や時間の制限などもあるため、就職を検討しているすべての企業に対して行うことは現実的でありません。
しかし、Social Job Postingを使えば、誰でも気軽に働いている人の情報を知ることができます。働いている人が魅力的であることや、その人と一緒に働いてみたいということが応募の動機になることも今後増えていくのではないでしょうか。
採用・就業における「年齢の壁」の克服
報告書では、2020 年の労働市場では、就業者の年齢構成が大きく変化し、45 歳以上の就業者が過半数を占めると予測しています。また、年齢が上がるに連れて再就職が決まるまでの期間が長くなることを指摘しています。
今後、中高年の転職市場がより厳しくなると考えられます。ソーシャルリクルーティングでは、個人がこれまで築いてきたプロフェッショナルネットーワークを活用した転職活動および人材探しを後押しします。
例えば、先日日本語化されたことで話題になった「LinkedIn」では、過去の同僚や上司、取引先の担当者などとつながって、ネットワークを構築することができます。従来は、職場を変わってしまうと、これまでの職場の人たちとは縁が遠くなりがちでしたし、取引先と連絡をとったりすることはほとんどありませんでした。
しかし、自分が確立してきたプロフェッショナルなネットワークがサービスによって可視化されることで、より多くのマッチングの可能性が生まれるはずです。採用する企業にとっても、ネットワークを介して知り合った人材は、何のつながりもない応募者よりも信頼できるでしょう。つまり、LinkedInはネットワークの広い中高年こそ、チャンスを広げられるということができます。
異なる産業・職業へのキャリアチェンジの支援
報告書では、今後産業構造の変化によって、異なる業界や業種への転職が増えることを予測しています。同時に、転職市場においては、即戦力であることが求められるため、未経験の仕事への転職は容易ではないことも指摘しています。
ソーシャルリクルーティングは、こうしたキャリアチェンジの適応ギャップを埋めるための直接的な支援には向いていません。
しかし、実績や経験などを分析し、これまでのスキルやナレッジを活かせる業界のリコメンドなどを提供する仕組みは、今後発展していくと考えられます。こうしたリコメンドサービスに加え、上記で説明したようなプロフェッショナルネットワークを組み合わせることで、新たな支援策を打ち出せるのではないでしょうか。
グローバル人材の採用・就業支援
報告書では、グローバリゼーションの加速にともない、企業からのグローバル人材の採用ニーズの高まりが予想されるとしています。
ソーシャルリクルーティングは、企業のグローバル人材の採用活動も後押しします。例えば、LinkedInには海外のユーザーが多いため、LinkedIn内に求人広告を出せば、効率的にグローバル人材にアピールすることができるでしょう。
また、「Google+」のサークル機能を活用し、国によって発信する言語を使い分けるということも可能です。またGoogle+には、複数人で実行できる動画チャット機能「ハングアウト」も用意されています。ハングアウトでは、動画チャットをしながら共通のドキュメントを作成することも可能です。遠方の受験者の第一次面接はオンラインチャットで行い、直接面接するのは最終面接のみといった採用方法もこれから普及していくでしょう。
人材育成を通じた人材サービス産業の高度化
報告書では、今後の労働市場の諸課題を解決するために、能力の高い人材サービスのプロフェッショナルの育成が必要であるとしています。
今後の人材サービスのプロフェッショナルには、ソーシャルリクルーティングを始めとする新しいサービスや考え方なども柔軟に取り入れ、実際に運用できるような能力も求められていくでしょう。
当ブログでは、ソーシャルリクルーティングの本質や活用、導入などについて、引き続き情報を発信していくとともに、少しでも多くの企業と人材が出会い、よりよい未来のきっかけになることを目指していきます。
まとめ:ソーシャルリクルーティングの可能性は大きい
今回は「2020年の労働市場と人材サービス産業の役割」(人材サービス産業の近未来を考える会)の報告書を踏まえて、今後のソーシャルリクルーティングの可能性について考えてみました。
報告書の内容は、今後の人材サービス産業を考える上で大変参考になりました。そして、今後の大きく変化していく人材サービス産業において、ソーシャルリクルーティングは確実に必要なサービスであることも実感することとなりました。
特に、企業と人材のマッチング、年齢や職歴を超えて個人の能力やスキルを活かした転職、グローバルな人材採用などは、まさにソーシャルリクルーティングが得意とする分野です。つまり、ソーシャルリクルーティングが正しく理解され、適切に運用されることが、今後の雇用状況の改善、日本経済の発展に大きく影響するといっても過言ではありません。
- 池見幸浩/ソーシャルリクルーティングの世界
- ソーシャルリクルーティングの世界!



