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おしどり×グリーンピース(その2)

3・11以降、「原発事故の本当のことを知りたい」という思いで、さまざまな記者会見に参加してきたおしどりのお二人。グリーンピースの記者会見にもしばしば参加し、質問を投げかけているマコさんとケンさんですが、今回は直接グリーンピースのスタッフとテーブルを囲み、気になっていることをおおいに語り合いました。さて、どんな話が飛び出しますか?

画像を見るおしどり●アコーディオンでのシャンソン演奏&針金アートで人気を集める、マコとケンの夫婦コンビ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。芸人としての活動のかたわら、3・11の原発事故後は政府・東電の合同会見などに通い詰め、鋭い質問で地元住民や原発作業員の内部被曝の問題などを厳しく追及。マガジン9での連載コラム「脱ってみる?」が話題に。

画像を見る佐藤 潤一(さとう じゅんいち)●グリーンピース・ジャパン事務局長 1977年生まれ。アメリカのコロラド州フォート・ルイス大学在学中よりNGO活動に参加し、貧困問題に取り組む。また、メキシコ・チワワ州で1年間先住民族のタラウマラ人と生活をともにし、貧困問題と環境問題の関係を研究。帰国後の2001年、NGO「グリーンピース・ジャパン」のスタッフに。2010年より現職。twitter はこちら→@gpjSato

画像を見る花岡 和佳男(はなおか わかお)●グリーンピース・ジャパン キャンペーン・マネージャー、海洋生態系問題担当。米国、フロリダ州フロリダ工科大学在学中に海洋環境学及び海洋生物学を専攻。卒業後、モルディブでの海底調査や、マレーシアでのマングローブ林を伐採しないエビの養殖施設の立ち上げメンバーを経て、2007年よりグリーンピース・ジャパン海洋生態系問題担当のスタッフとなる。

画像を見る鈴木かずえ(すずき かずえ)●グリーンピース・ジャパンエネルギー・核問題担当。第一次湾岸戦争の際にグリーンピース・ジャパンでボランティアを始め、1992年より職員に。アクション・コーディネイターなどを経て1995年より核問題担当。ノンフロン冷蔵庫の日本での商品化を実現させる「グリーンフリーズ」プロジェクト、東京電力福島原発プルサーマル燃料装荷差し止め裁判、福井県の原発へのプルサーマル燃料装荷反対運動などにもかかわる。2004年末に退職後、2011年に復職。

広がる不安の声に、どう応えるか

鈴木  ともかく、一番問題なのは、内部被ばくの影響については現代の科学では解明ができていないにもかかわらず、影響が「ない」とされていることだと思います。

おしどりマコ チェルノブイリでだってあれだけ健康被害が出ているのに、「因果関係が証明できていない」で終わってしまっていますからね。

鈴木  グリーンピースでもチェルノブイリの健康被害について調査してまとめたことがあるのですが、そこにもウクライナの被災した子どものうち、8割が何らかの疾病を持っていて、「健康」な子どもは約2割しかいないというデータがあります。原子力安全委員会などは「100msv以下の被ばく量であれば健康に影響はない」というけれど、この「8割」の子どもたちみんなが100msv以上を浴びたわけでは当然ないですから、やっぱり内部被ばくが大きな原因だと考えられますよね。影響が出るかどうか「わからない」のであれば、「ない」のではなくて「わからない」と言ってもらわないといけない。

おしどりマコ 浴びた線量が低くても、健康被害が出る人はいるはず。それはもう、本人の特性によりますよね。健康被害といっても、がんの発症だけではなくて免疫力の低下とかいろんな形があるし…今年はインフルエンザの流行が始まるのも早いと言われているし、福島に行っても、風邪をひいてる人がすごく多いと感じました。免疫力が低下してるのかな、と不安になります。

鈴木  そう、福島に行くといろんな不安の声がありますよね。子どもが鼻血を出したとか下痢が続いてるとか。「被ばくと関係あるんでしょうか」とお医者さんに行っても頭ごなしに「関係ない」と言われるだけだし、周囲の人に相談しても「あなた神経質ね」と言われるだけだし…と。
 それで今度グリーンピースで、キエフのウクライナ放射線医学研究センターから小児科専門医のステパノワ博士をお呼びするんです。この方はチェルノブイリ以降の25年間、5万人の子どもを検診しずっと子どもの疾病について研究してきた方なんですね。その方に、福島の人たちが健康について不安に思っていることを、とにかく何でも聞いて答えてもらおうと。
 まず、皆さんに「何が不安なのか」という声を寄せていただいて、それをもとに、12月11日に福島市で講演をやります。そして、多分2時間くらいでは質問に答えきれないと思うので、ステパノワ博士にはその後も数日間は日本に残っていただいて、答えきれなかった質問に答えていただくセッションをやろうと思っているんです。

おしどりマコ それはいいですね。どうせなら映画館とかでも中継して、すごいたくさんの人たちが見れるようにしたらどうですか?

鈴木  今予定している会場はそれほど大きくないんですけど…代わりに、いわき市や郡山市や南相馬市にもサテライト会場みたいなのを設置して、そこでも同時に見ていただけるようにしたいと思っています(詳細はこちら)。

 先日の原子力損害賠償紛争審査会でも、福島市長が「(今回の原子力災害について)国に適切な法律がなく、地方自治体に経験も権限も財源もなく、国民・県民・市民に、放射能の適切な概念・知識がない」と言われていましたけれど、まず市民の知識が閉ざされているというか、ウソの情報がどんどん流される一方で、本当に欲しい情報がない。皆さんが求めている情報を届けていく、答えていただける方を見つけていくというのは、私たちNGOがやることとして非常に重要かなと思います。

おしどりマコ 本当にそう思います。今、非常にシビアな状況に置かれている人たちに、たくさん情報が与えられていて、その正否を判断できる知識がきちんとあって、その上でそれぞれの人が考えて出した要望に添って行動できる選択肢が与えられている。これが最低限必要なことですよね。

鈴木  政府交渉に行っても、政府側は責任のある人がなかなか出てきてくれなくて。毎回「持ち帰ります」と言われてしまうんですけど、そう言っている間にも福島の人たちは日々被ばくしているわけで。東京都内でもホットスポットがどんどん見つかっていますけど、福島の線量は桁が違う、そしてその中で人々は毎日生活しているんですよね。おうちの中が放射線管理区域みたいなもの。
 この状況を何とかするには、やっぱり福島の人たちだけが闘ってるのではダメだと思う。例えば、全国に「放射能から子どもを守ろう」というお母さん、お父さんの団体は250以上あるわけで、その人たちが福島の子どもたちのことを自分の子どもだと思って立ち上がってくれれば…。

おしどりマコ そうなんですよね。一番シビアな状況の人が大声をあげないといけないというのがすごく恥ずかしくて、申し訳ない。

おしどりケン その人たちは、ただでさえしんどいのにね。

みんな、もっと怒ったほうがいい

おしどりマコ あとは、「脱ってみる?」のコラムでも書きましたけど、福島の事故現場で働いている作業員の方の被ばくのこともとても気になってます。今、連絡を取り合っている作業員の方が、「一番ひどい作業をしたときは2時間で15msv浴びた」という話をしていて。でも、彼の会社の基準では、去年までなら1日に0.9msvが最大限度だったというから、本当に無茶苦茶ですよね。
 しかも、これまで作業員が3人亡くなったと言われてますけど、それは作業中に倒れて亡くなった方が3人、というだけであって…転職後に亡くなった方はそこには一切カウントされてないんですよ。

――転職後というのは?

おしどりマコ 下請けの会社ごとに年間線量限度が定められているので、その限度まで被ばくしたらもう現場では働けませんよね。そうすると、後方支援の部署に回されるケースもあるんだけど、特に3・11以降に緊急作業のために雇われた人などは、自宅待機になったりもう別の仕事に移ったり、ということになるんです。実際、8月に線量限度になったために9月から自宅待機になって、10月に心筋梗塞で亡くなったという方がいるんですけど、それは「3人」にはカウントされないし補償もない。それはおかしくないか? と思います。
 私が連絡を取っている人は正社員なんですけど、それでも本当にひどい状況。とすると、そうではない非正規雇用の人たちはどんなことになってるんだろうというのがすごく気になります。あと、阪神・淡路大震災のときにも、ボランティアで瓦礫撤去をしてた人たちが、今になってアスベスト被害に苦しんでるんだけど、ボランティアだから何の補償もない、という問題が出てきてるらしいんですね。それと同じように、今ボランティアで福島に入っている人たちが今被ばくしていて、あとで健康被害が出てきたときに同じ問題がまた出てくるんじゃないか、というのも気になっていて…。今はまだそっちをやっている余裕がないという感じなんですけど。

鈴木  事故前、私たちは日本国内に54基もある原発で、作業員の人たちが年間数msvの被ばくをするのを「許してきた」わけですよね。だから今こういう状況になっているわけで。今こそ原発を止めて「脱原発」を実現していかないと、そういう被害が永遠に繰り返されていくんだろうなと思います。

おしどりマコ ただ、正直言って今、私たちは直接的に「脱原発」を言おうとはあまり思わないんです。それよりも、作業員の人たちや飯舘村やいわき市の人たちがどういう状況にあるのか、そのことをやるだけで精一杯。もちろん脱原発を言うこと、次のエネルギーを考えることは重要なんですけど、今現場で、福島で何が起こってるのか、作業員の人がどんなことになってるのか、そういうことを徹底的に追及して改善していくことが、結果的には一番「脱原発」に近かったりもするんじゃないかな、と思うんですよね。

鈴木  その意味では、私はそれぞれの人が「一番許せないこと」を一生懸命やればいいんじゃないかな、と思っています。子どもの内部被ばくのことが許せない人はそのことを、原発の再稼働のことが許せない人はそのことを……。とにかく自分が許せないことに対してそれぞれが動く。ほかの人に「なんでこの問題をやらないの」という時間があるなら、自分がまず立ち上がって言えばいいんだと思うんですよね。

おしどりマコ 自分が一番怒りを持てるところで怒ってほしい、というのはそのとおりだと思います。ただ、そこで重要なのは、自分や周りの人だけじゃなく、他の誰かが虐げられていることに対して激怒できる人がどのくらいいるかですよね。
 例えば先日、水俣病患者への補償を求める裁判にかかわっている方のお話を伺う機会があったんですが、最初に被害が出たときに、もっと全国の人たちが、水俣で何が起こってるのか、被害者の人たちがどれだけ虐げられてるのかをちゃんと知って、怒っていれば、あそこまでひどいことにはならなかったんじゃないかな、と思って。
 今の放射能被害も同じ。誰かが虐げられているということは、いつ自分もそうやって虐げられるかわからないということでしょう。その意味で国に対して、権力に対して、みんなもっともっと怒ったほうがいいと思う。

おしどりケン 怒ることがかっこ悪い、感情的になるのはよくない、みたいなことを言う人たちも多いしね。

佐藤  みんな、どこか「観客席に座って見ている」感じがするんですよね。プレイヤーになろうとしない、自分で動こうとしないというか。そこを変えていかなきゃいけないんだろうな、と思います。

グリーンピースが、捕鯨に反対する理由

――さて最後に、めったにない機会ですので、おしどりのお2人から、グリーンピースへの要望やアドバイスがあればお聞きしたいと思います。

おしどりマコ えー、まず、何度かグリーンピースさんの記者会見に出席したことがあるんですけど、配布資料がフルカラーで、ちょっと豪華すぎじゃないかと(笑)思いました。

佐藤  毎回そうだというわけではないんですけどね(笑)。大半の資料はモノクロのコピーで配布してるんですけど、カラーでお見せしたほうがわかりやすい資料もあったりするので、臨機応変にしています。

おしどりマコ あと、捕鯨問題に関しても、もっともっとちゃんと説明していったほうがいいと思うんですよ。私はグリーンピースさんが今やっていることはすごく好きなんですけど、日本ではグリーンピースというとやっぱり「クジラ」のイメージでしょう。

――日本の固有の文化である捕鯨に反対している集団、みたいな。

おしどりマコ それで偏見を持って信頼しない人がいるのがすごくもったいないな、と思って。

佐藤  一つ誤解されているのは、グリーンピースが捕鯨に反対している理由は何か、ということなんですよね。クジラはかわいいから(笑)食べるべきじゃないとか、頭がいいから保護しようとか、そういうことではないんですが。

おしどりマコ 捕り方が残虐だからとか?

佐藤  いや、そこでもないです。基準は、生態系に影響があるかないか。生態系を崩してしまう可能性がある捕鯨には反対します、というスタンス。だから、商業捕鯨や南極海での調査捕鯨には反対していても、ある一頭を殺す殺さないということについて、それがいいとか悪いとかは今まで一度も言っていないはずです。なぜかよく、「あいつらはクジラが大好きだから」とか(笑)言われてしまうんですが、そうではないんですよね。僕自身、クジラが好きかと聞かれたら「そうでもない」と答えるだろうし。

――グリーンピースの日本事務局長が、そんなこと言っていいんですか?(笑)

佐藤  ですからクジラだけ特別扱いしているとか、「好き、嫌い」でやっているわけではない、ということです。

おしどりマコ 捕鯨反対は、日本みたいに魚食が盛んな国の漁業を圧迫するためのアメリカの陰謀だ、なんて話も聞いたことがありますけど。捕鯨をやめさせて鯨を増やせば小魚が減って魚が捕りにくくなって、アメリカの牛肉がもっと売れる、食物戦争において有利になるから、と。

佐藤  それは、捕鯨推進のためだけに捕鯨協会がPR会社を雇ってつくった理論なんですよ。鯨が魚を食べ尽くしてしまうというと、害虫駆除みたいな観点から「捕鯨はやるべきだ」ということになるけれど、考えてみたら鯨という生物は何万年も昔から海にいたわけでしょう。それなのに、その鯨が魚を食べ尽くしてしまうなんてあり得ない。

おしどりマコ そういうことなんですね。謎が解けてよかった(笑)。
 でも、日本ではやっぱり「グリーンピース」といえば捕鯨に反対している団体、というイメージなので、機会があるごとにちゃんと説明していったほうがいいんじゃないかと思うんですけど…。

佐藤  そうします(笑)。
 ちなみに、今国会で審議中の、「震災の本格的復興対策」を掲げて組まれた第三次補正予算にも、実は23億円もの調査捕鯨補助金が含まれているんですよ。もともと捕鯨基地のある宮城県石巻市の復興に向けて、という名目で、どさくさに紛れて。実際には南極海での捕鯨を継続する目的なんですけど。

――この水産庁から出された予算案の文面はすごいですね。まったく石巻の復興にはつながらないと思う。

おしどりマコ ひどい話ですね。

佐藤  本来ならその23億円もみんなの税金ですし、被災者支援に使われるべきです。それがこんなところで、利権の存続のために使われるというのは、どう考えてもおかしいと思うんですよね。

――話は尽きませんが、今回はこのあたりで。皆さん、長い時間ありがとうございました。

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