- 2017年11月11日 09:14
若者は本当に自民党を支持しているのか - 島澤 諭 (中部圏社会経済研究所チームリーダー)
2/2自民党への投票は雇用の改善が大きい
上で見たように、またこれまでも繰り返し指摘してきた通り、若い世代ほどイデオロギー・フリーな無党派層であり、その多くは、時々の政権与党に対して、業績評価・経済投票を行うものと考えられる。現役世代や社会に出たばかりの新米世代にとっての一番の関心事は、雇用と所得であろう。安定した生活を送るためには、雇用と所得が保障されている必要があるからである。
そこで、図6、図7で雇用関連指標の最近の推移を見てみると、失業率は趨勢的に低下を続け、有効求人倍率も上昇している。特に、パートを除く有効求人倍率は2014年12月に、正社員有効求人倍率も2017年6月には1を超えてさらに上昇を続けている。
内定率も高卒大卒ともに上昇を続けているし、初任給も増加を続けている。こうした雇用関連指標の改善は実質的に第2安倍政権発足後勢いを増している。であるとすれば、若者世代にとっては、政権与党の業績は抜群に素晴らしく、モリカケのような「スキャンダル」があったとしても、アベノミクスに代わる建設的かつ説得的な経済政策を提示できない、批判ばかりの野党に敢えて乗り換える誘因は存在しないと言えよう。
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(出所)総務省統計局「労働力調査」、厚生労働省「職業安定業務統計」により筆者作成
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(出所)文部科学省資料、厚生労働資料より筆者作成
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現在の生活、政治状況に満足している層は 自民党に投票する
次に、表3により生活満足度と投票政党との関係を見ると、生活に満足している者は平均よりも自民党や与党に投票する者の割合が高く、生活に不満な者は平均より革新政党に投票する者の割合が高いことが分かる。つまり、自民党や政権与党の政策のパフォーマンスが良く有権者の生活満足度が高まると自民党や政権与党への投票割合が高まることとなる。
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(出所)公益財団法人明るい選挙推進協会資料により筆者作成
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さらに、政治的満足度と投票政党との関係を図8により確認すると、政治的に満足している層は自民党や与党に投票し、民進党や革新政党に投票するのは政治的に満足していない層であることが分かる。
つまり、自民党の政策のパフォーマンスが良く有権者の生活満足度が高まると自民党への投票割合が高まり、自民党の政治基盤が安定し、有権者の政治的満足度が高まると、有権者はより一層自民党に投票するようになるのだ。アベノミクスはその名の通り安倍総理の経済政策であり、アベノミクスの高パフォーマンスはすなわち自民党への支持に直結する。
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(出所)公益財団法人明るい選挙推進協会資料により筆者作成
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上で見た通り、政権与党の経済政策のパフォーマンスが、想定通りであれ、偶然であれ、良好でありさえすれば、国民の生活満足度が高まり、その結果国民はより政権与党に投票しその結果政権与党の政治基盤が安定すれば、政権与党は現在の経済政策を継続しやすくなったり、場合によってはさらに思い切った経済政策の採用が可能となることで、今まで以上に経済パフォーマンスを向上させることが可能となれば、政権与党にとっては好循環が続くこととなる。こうした業績・生活満足度・政治的満足度のトライアングルがもたらす好循環が現在自民党に有利に働いていると考えられる。
つまり、こうした好循環の結果こそが、若者の自民党支持がそれほど上向かない中で投票先政党として選択されている理由なのである。
自民党への風は経済パフォーマンス次第
これまで見てきた通り、若者は最近突然積極的な自民党支持に転じたわけではなく、イデオロギー・フリーな無党派の立場から、自民党の業績評価に基づく投票を行い、自民党に投票するか野党に投票するかを決定しているに過ぎない。現在、自民党は好調な雇用状況を起点とする好循環に支えられている側面が強い。
これは別のアングルから見れば、自民党の一人勝ちが今後も続くか否かは、経済の動向次第であるとも言える。例えば、2009年に民主党は、高齢世代から子育て世代重視へとそれまでの政策のパラダイムチェンジを行うことで政権を奪取したように、政策上のイノベーションにもう一度成功することができれば、支持を回復することが可能となるかもしれない。
客観的なデータに基づいて様々な観点から、若者の自民党支持の増加について検証を行った結果、若者の自民党支持が近年特に増加したとの積極的な証拠は見つからなかった。どちらかと言えば、良好な経済・雇用パフォーマンスに支えられた現象に過ぎず、今後の経済動向次第では自民党への支持も一転減少してしまうこととなるだろう。
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