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- 2011年12月01日 02:01
ゾンビのごとく次々復活する債務危機
11月のはじめにひいた風邪がいまだによくならない。今年の風邪は、ゾンビ風邪と言われているらしくて、死滅(治癒)したと思って油断すると、ウィルスが復活(再発)して、体調を崩す。これを何度も何度も繰り返すのが今年の風邪の特徴らしい。そして、現在の世界経済の動きも、今年の風邪の症状とよく似ている。
危機から脱出したかと思えば、再び危機が襲ってくる。この背景には抜本的な治療法がほとんど行われていない、もしくは完全治癒させる処方箋がないからなのかもしれない。たとえば、欧州債務危機ではファンロンパイEU大統領が、「欧州の債務危機は今や完全にシステミックなもの」と指摘し、「解決にはシステミックな対応が必要」と発言した。つまり、欧州の債務危機はすでに金融の「システミックリスク」を脅かすところまで来ている、ということを認めているということだ。
これがEFSF(欧州金融安定ファシリティー)の機能強化で合意した直後のEU大統領のコメントというのも驚きだが、債務危機に直面しているEU加盟国のソブリン債を、元本の20─30%を保証したり、外国人投資家のユーロ圏国債購入を促すため「共同投資基金」を設立するそうだが、問題は「ドイツがECBが最後の貸し手となったり、EFSFの流動性供給に反対していること」だ。
ECBが最後の貸し手にならないとすれば、パニック的な金融危機が起きたときにだれがストッパーになるのか。なすがままで放置するのか。ユーロ崩壊の始まりになってしまう可能性があるし、リスクマネーが放っておかないはずだ。IMFの融資にも限界があるし、中国や日本、米国がどの程度を差し伸べられるかだろう。
そんな中で、金融市場のドル不足について追加措置がとれらた。FRB、ECB、カナダ中銀、英中銀、日銀、スイス中銀が共同声明を発表して、12月5日から現行の「ドルスワップ」のコストを50ベーシスポイント(bp)引き下げることで合意したのだ。さらに、各中央銀行が2国間でスワップ協定を締結して、流動性を確保する。
この方法も、果たしてどこまで効果的なのか。ドルが売られて、ニューヨーク株が上昇したが、素直に好感できる部分もあるが、ゾンビ風邪と同じで、金融マーケットの流動性をちょっと確保しただけにすぎない。
ちなみに、今週は、格付け会社がフル稼働だった。フィッチがついに米国の格付けを「安定的」から「ネガティブ」に変更、米国議会の超党派委員会が財政赤字削減策で合意できなかったことで、将来の格下げを示唆した。さらにスタンダード&プアーズ(S&P)がフランスの最上級格付けの見通しを「ネガティブ」に変更する可能性がある、一部のメディアに報道された。一方の日本国債でも、味方だったはずの「格付投資情報センター(R&I)」が、日本の外貨建て・自国通貨建て発行体格付けをAAAから引き下げ方向で検討すると発表している。
さらに、米国経済もあいかわらずケースシラーの住宅指数は横ばい、雇用統計もあまり期待できそうにない。さらに、中国人民銀行がリーマンショック以来の3年ぶりとなる商業銀行の預金準備率を50ベーシスポイント(bp)引き下げた。インフレ抑制一辺倒だった中国が、大きく政策を転換したことになる。世界経済の信用危機に対する措置と思われるが、これがどんな影響を及ぼすのかがよくわからない。
いずれにしても、システム全体が狂い始めている中で、どうすればシステムをもと通りに機能回復できるのか。世界各国の中央銀行や政府当局の手腕が問われている。
<新刊紹介>
最新海外口座の開設・活用徹底ガイド
2004年に発行した書籍の最新リニューアル版。超円高の中で、海外旅行を楽しむ人、あるいは日本の銀行に不安を持つ人向けの外国銀行口座開設マニュアルだ。
危機から脱出したかと思えば、再び危機が襲ってくる。この背景には抜本的な治療法がほとんど行われていない、もしくは完全治癒させる処方箋がないからなのかもしれない。たとえば、欧州債務危機ではファンロンパイEU大統領が、「欧州の債務危機は今や完全にシステミックなもの」と指摘し、「解決にはシステミックな対応が必要」と発言した。つまり、欧州の債務危機はすでに金融の「システミックリスク」を脅かすところまで来ている、ということを認めているということだ。
これがEFSF(欧州金融安定ファシリティー)の機能強化で合意した直後のEU大統領のコメントというのも驚きだが、債務危機に直面しているEU加盟国のソブリン債を、元本の20─30%を保証したり、外国人投資家のユーロ圏国債購入を促すため「共同投資基金」を設立するそうだが、問題は「ドイツがECBが最後の貸し手となったり、EFSFの流動性供給に反対していること」だ。
ECBが最後の貸し手にならないとすれば、パニック的な金融危機が起きたときにだれがストッパーになるのか。なすがままで放置するのか。ユーロ崩壊の始まりになってしまう可能性があるし、リスクマネーが放っておかないはずだ。IMFの融資にも限界があるし、中国や日本、米国がどの程度を差し伸べられるかだろう。
そんな中で、金融市場のドル不足について追加措置がとれらた。FRB、ECB、カナダ中銀、英中銀、日銀、スイス中銀が共同声明を発表して、12月5日から現行の「ドルスワップ」のコストを50ベーシスポイント(bp)引き下げることで合意したのだ。さらに、各中央銀行が2国間でスワップ協定を締結して、流動性を確保する。
この方法も、果たしてどこまで効果的なのか。ドルが売られて、ニューヨーク株が上昇したが、素直に好感できる部分もあるが、ゾンビ風邪と同じで、金融マーケットの流動性をちょっと確保しただけにすぎない。
ちなみに、今週は、格付け会社がフル稼働だった。フィッチがついに米国の格付けを「安定的」から「ネガティブ」に変更、米国議会の超党派委員会が財政赤字削減策で合意できなかったことで、将来の格下げを示唆した。さらにスタンダード&プアーズ(S&P)がフランスの最上級格付けの見通しを「ネガティブ」に変更する可能性がある、一部のメディアに報道された。一方の日本国債でも、味方だったはずの「格付投資情報センター(R&I)」が、日本の外貨建て・自国通貨建て発行体格付けをAAAから引き下げ方向で検討すると発表している。
さらに、米国経済もあいかわらずケースシラーの住宅指数は横ばい、雇用統計もあまり期待できそうにない。さらに、中国人民銀行がリーマンショック以来の3年ぶりとなる商業銀行の預金準備率を50ベーシスポイント(bp)引き下げた。インフレ抑制一辺倒だった中国が、大きく政策を転換したことになる。世界経済の信用危機に対する措置と思われるが、これがどんな影響を及ぼすのかがよくわからない。
いずれにしても、システム全体が狂い始めている中で、どうすればシステムをもと通りに機能回復できるのか。世界各国の中央銀行や政府当局の手腕が問われている。
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