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戦後三大謀略事件のひとつ――「三鷹事件」44年ぶりに再審請求

 戦後混乱期の国鉄(現JR)三大謀略事件のひとつ、三鷹事件の犯人として無念の獄死を遂げた死刑囚竹内景助氏の長男(六八歳)が、一一月一〇日東京高裁に四四年ぶりの再審を申し立てた。

 一九四九年七月一五日夜、国鉄中央線三鷹駅で七両編成の無人列車が突然車庫から暴走して六人が死亡し、二〇人が重軽傷を負った。

 共産党が大躍進した一九四九年夏に起きた国鉄をめぐる下山事件、松川事件、三鷹事件。背景に日本での共産主義勢力の台頭に強い危機感を抱いたGHQ(連合国軍総司令部)の思惑があり、捜査も事実上、MP(憲兵)が指導していた。

 警察は、国鉄で人員整理された二八歳の竹内景助氏らの、国鉄労働組合(国労)組合員一〇人を「共同謀議で仕組んだ犯行」として逮捕。検察は電車転覆致死罪などで起訴した。

 事件の翌日、吉田茂首相は「共産主義者の扇動による」と長大な声明を発表し、マスコミも「不安を煽る共産党」などと報道した。検察の執拗な取調に竹内氏は単独犯を虚偽自供してしまう。若気の義侠心で組合員を庇おうとしたようだ。

 東京地裁は翌五〇年、「共同謀議は空中楼閣」と竹内氏以外の組合員を無罪にしたが、「単独犯行」として竹内氏に無期懲役を言い渡す。組合員一〇人のうち、竹内氏だけは党員ではなかった。五一年、東京高裁で竹内氏は死刑判決に。最高裁大法廷は弁論を開かず八対七で上告棄却した。

 五六年に竹内氏が獄中から再審を申し立てると浅沼稲次郎、鳩山一郎、亀井勝一郎、谷崎潤一郎ら各著名人が立ち上がった。六六年、東京高裁の樋口勝裁判長は竹内氏の妻に会い、再審決定への手続きを告げたが、竹内氏の脳腫瘍は悪化していた。翌年一月に四五歳で獄死し、同裁判長は再審請求の終了を宣言した。

 再審にあたり、竹内氏の長男は記者会見や報告会にも出ず、「死刑囚の子どもとしてひっそり生きざるを得なかった。再審申し立ての支援に感謝しています」などのコメントを弁護団に託した。

 二年前に『無実の死刑囚』(日本評論社)を著した請求人主任弁護人の高見澤昭治弁護士(六九歳)は「三大事件の中で一番忘れられていた三鷹事件で必ず無罪を勝ち取りたい」と話す。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、11月18日号)

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