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"引き際"を見極められない年長者の醜悪さ

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■自分も「ロートルへの階段」を上がっている

この事件を見て、44歳の私自身も「引き際」について、改めてグッと考えるに至った。現在、私が生業にしている「ネットニュースの編集業務」というジャンルは生まれてまだ20年ほどの職域で、一般的になったのはこの10年ほどの話である。ここ数年で若い編集長が続々と生まれ、さらには紙メディアの記者・編集者が続々とネットニュース、ネットメディアに参入し、活況を呈している。

長らく存在してきた既存メディア、たとえば雑誌の編集者であれば「40歳で副編集長になり、48歳で編集長になり、その後は書籍編集部か管理部門へ行き、無事60歳の定年を迎えるか……。はたまた55歳で早期退職し、これまでアウトドア誌の編集で培った専門分野の知見を活かし、アウトドア関連のビジネスを始めるか……」など、先人たちの事例を参考にしたキャリアモデルが存在する。

でも、われわれネットニュース編集稼業の場合、そうしたモデルがほぼない。ネットの編集をやり続けた人間が、その後に何をするのかがよく分からないのである。

さらに本音を述べてしまうなら、私個人の感覚としては、自分より若い世代たちの「面白いことがやりたい!」「会いたい人がいる!」「こんな企画を思いついた!」といったあふれるようなパトスには、正直「かなわないな……」と思うことしきりとなってしまった。結局、自分も「ロートルへの階段」を着々と上がっているのだ。

■トークイベント出演・引退宣言

そうした心境の変化もあって、ここ数年、自分の「引き際」「引退」についてよく考えるようになったのだが、その第一弾として、トークイベントへの出演を基本的には今年でやめることにした。もっともこれは「自ら企画することはない」という意味で、誘ってもらえたら、その人の顔をつぶさぬよう参加するかもしれない。

2010年に東京・阿佐ヶ谷のライブハウス「阿佐ヶ谷ロフトA」で開始した「津田大介と中川淳一郎のオフ会」は、程なく山本一郎氏を加えた3人の「オフ会」となった。その後「ネットニュースMVP」と名称を変更し、ネット上で発生した珍事やいさかい、そしてネットで大いに話題になったものを壇上で解説し、観客とともに振り返るというイベントに発展した。年間1200件ほどのネットニュースMVP候補から厳選し、イベントでは200の話題を紹介するという、ボリューム感のあるイベントである。

回を重ねる過程で、山本氏と私の2名がメインの登壇者という形になり、回によってはゲストも交えて開催してきた。そんな長寿イベントを、2017年12月12日に行われる回をもってファイナルとすることにしたのだ。山本氏も私も、なんとなくそんな気持ちになったがため、今年の暮れを最終回とした。

私の1学年上の山本氏は、子育てや親の介護などさまざまな家庭の事情もあり、最近、セミリタイア宣言をしている。私の場合、とくに家庭の事情というものはないのだが、とりあえず“人前に出る”ことについては、専門領域である編集・広報に関するセミナーや講義などを除いて、「そろそろ潮時かな」と考えるようになったことが大きい。なんというか、44歳にもなった男が、イベントの壇上で酔っ払って奇天烈な話題を垂れ流し、うひゃうひゃと笑っているのも大人げないのではなかろうか、と。大人であれば持っておきたい「年齢相応の立ち居振る舞い」というものから離れてしまったように感じているのである。

■貴重な機会だからこそ、若者に席を譲る

また、私の場合、多い年は阿佐ヶ谷ロフトAに年間6回ほど出演していた。これは、明らかに出過ぎである。イベントというものは構成力や話術、空気を読む力が鍛えられる良い機会な上に、ギャラまでもらえるありがたい場なのだが、これは「もうじゅうぶんにやった」と判断した。

そして、この「大勢の前でしゃべる」というあまりにも貴重な機会は、むしろ経験したことが少ない若者にこそ提供されるべきだと考えるようになった。僧侶や神父の説法は、年齢を経るにつれその深みが増すだろう。しかし、「ネットニュースMVP」的な企画は、毎年の出来事をコツコツと収集していけば実現できる刹那的なものであり、「深み」は求められない。ネットのくだらない出来事、バカ事例が数多く紹介される一方で、ありがたいお話なんぞ一切しない。テーマ的にも、瞬発力や熱量が求められる企画なのだから、さっさとその場を若者に譲るほうが、よほど世間のためになる。

冒頭の上尾市の件に戻るが、市長は3期、議長は議員生活を5期も続けていた。その過程でやっていたことは収賄(およびその疑惑)だったわけで、結局、為政者という立場に就いたのは、市民のためというよりも、自分のためだったということだ。まったく醜い事件だが、「こんなジジイにだけは絶対になりたくない」という逆ロールモデルを提示してくれたことだけは、少し感謝する。

【まとめ】今回の「俺がもっとも言いたいこと」
・自分が「老害化」する前に静かに去り、若者に席を譲る。それが年長者の作法だ

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中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。

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