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EU諸国も巻き込んだカタルーニャ「異常事態」 - 大野ゆり子 | ヨーロピアン・ラプソディ

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「反逆罪」で身柄拘束

 スペイン政府は現在、ソラヤ・サエンス・デ・サンタマリーア・アントン・スペイン副首相をカタルーニャ州首相の職務代行に充て、直接統治に乗り出している。

 首相を解任された2日後、プチデモン氏は地元サッカーチーム「ジローナ」が強豪「レアル・マドリッド」を見事なタイミングで破ったことに大喜びし、「世界の強豪相手にジローナが勝利したことは1つのお手本で、いろいろな状況で参考になる」と含みを持つツイートをした。そして密かに陸路で仏マルセイユに行き、そこからベルギーの首都ブリュッセルに飛んでいた。

 その後10月31日、前閣僚らの一部と、事実上の亡命政権の樹立ととれる記者会見をして、ふたたび国際メディアの注目を浴びたのである。

 しかし11月2日には、カタルーニャ州政府の前閣僚8人が、反逆、治安妨害、背任罪などの容疑でスペイン司法当局に身柄を拘束された。さらに同日、裁判所への出頭を拒否してベルギーに残ったプチデモン氏や他の前閣僚4人に対し、司法当局は裁判所に逮捕状を請求した。スペインでは反逆罪は最高30年の禁固刑に処される可能性がある。

 そして11月5日の逮捕状発付を受け、スペイン司法当局からの要請を受けたベルギーの検察はプチデモン氏らの身柄をいったん拘束。が、現在は、ベルギーの司法当局がスペインに送還するか否かを決めるまで保釈され、ベルギー国内にとどまっている。ベルギーがスペインに同氏の身柄を引き渡すには、手続き上、60日以上を要する見込みで、そうすると12月21日の州議会選挙時には、プチデモン氏は収監されぬままベルギーに滞在している可能性がある。

 ベルギーのテレビ・インタビューに登場し、その点について問われたプチデモン氏は、流暢なフランス語で、「グローバリゼーション時代の今、ブリュッセルからでも十分に選挙活動はできる」と答え、自らの出馬を表明している。

 ベルギーが望む望まないにかかわらず、この件はすでにスペインの「国内問題」という他人事では済まされない状況にまでいたっており、むしろ、ベルギーの「国内問題」をも揺るがしているのである。

EU内でも割れる評価

 プチデモン氏がカタルーニャを離れたことに対して、国際世論の評価は必ずしも好意的なものばかりではない。

 ベルギーのヒー・フェアホーフシュタット元首相は、プチデモン氏を、逃亡するタンタン(ベルギーの人気漫画の主人公)に模した風刺画がEUで出回っていると、フェイスブックに載せた。コメントには、「タンタンはいつでも冒険の解決策をみつけているが、かたやプチデモンはカタルーニャをカオスと荒廃の中に残している」と書いている。

「(プチデモン氏の行動は情けなくて)涙が出る」と嘆くのは、独『フランクフルター・アルゲマイネ』紙のコラムだ。カタルーニャの地元紙『ラ・ヴァンガルディア』のディレクターもコラムで、強制送還をされるような事態を避け、マドリッドに出頭して意見陳述をしたほうが賢明な判断であったのに、と指摘している。

 しかし自治権停止によって下火になるはずだったカタルーニャ問題が、再び国際問題のトップニュースとして報じられ、EU内で様々な反応を呼び起こしたことは確かだ。

 自分の仲間である前閣僚らの逮捕の報が入ると、プチデモン氏はビデオメッセージで「民主主義に対する深刻な攻撃」とスペイン政府を非難した。

 これに対して英国政府は、「スペイン憲法を尊重し、統一を維持する法の支配を望む」と、スペイン政府を支持する姿勢を示している。一方、独立問題が他人事ではないスコットランドのニコラ・スタージョン首相は、カタルーニャ前閣僚逮捕の報にいち早くツイッターを更新。「カタルーニャについてどういう意見があろうとも、選挙で選ばれたリーダーを収監することは間違っており、すべての民主主義者から非難されるべきだ」と、スペイン政府の対応を非難した。

 ベルギーも副首相が、「彼らは何も悪いことをしていない」と、プチデモン氏に同情的な発言を行い、スペインとの外交問題に緊張を生みかねない状況である。

州を分断した「溝」

 1978年に施行された民主憲法制定以来、自治権が認められたカタルーニャで、スペインの直接統治という異常事態が始まった。予想されていた現場での抵抗もなく、市民生活のレベルでは一見「ノーマルな」1週間が過ぎた。しかし独立に賛成、反対とカタルーニャ社会を完全に分断してしまった溝、そしてカタルーニャとスペインを分断してしまった溝をどうやって埋めていくのか、現状では何も見えていない。

カタルーニャ独立旗、スペインの国旗が翻る街頭での市民の対立は消えたが、舞台は12月21日の州議会選挙という「第2ラウンド」に移り、リングの横にEU諸国を座らせながら、新たなカウントダウンを迎えている。

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