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原子力の安全性

今回の原発災害にあたって、安全審査を徹底し、もっと安全な原子力を目指していくべきだ、的な意見が見受けられますね。停止中の原発の再稼働や、新規建造にあたって肯定的な意見を持っている人たちが賢しらに叫んでおります。なるほど。ごもっともかもしれません。キチンと、起きた災害に対して真摯な反省をしたなら、そういうのもありかもしれませんね。
「絶対安全」から「リスク評価」へ

この危機認識を社会に定着させていく上では、いわゆる原子力の「安全神話」や観念的な「絶対安全」という標語は捨てられなければならない。事故の発生防止に万全を期することは当然であるが、重要なことは、確率は低くとも事故は起こりうるものとして、それが大きな被害をもたらさないように事前に適切な手段が講じられており、それらが相まって事故の総合的リスクを許容しうるレベルにまで低減することであって、そのことが、関係者の間はもとより、国民的にも理解される必要がある。

このことは「絶対安全」から「リスクを基準とする安全の評価」への意識の転回を求めるものである。リスク評価の思考は欧米諸国において既に定着しつつあるが、我が国においても、そのことに関する理解の促進が望まれる。
(1)事業者の責任

原子力の安全確保に関する責任は、第一義的には事業者にあることが強調されるべきである。
素晴らしい!キチンと、「安全神話」「絶対安全」を否定してますね。しかも、事業者の責任を明確に唱っています。
惜しむらくは、この引用文がJCO臨界事故の事故報告書から引いてきたものでなければ。

ウラン加工工場臨界事故調査委員会報告
http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/uran/siryo11.htm

原子力災害に対しては、今までもずっと上記のように「改善」「見直し」が唱われてきました。でも、その結果はご存じの通り、「安全神話」「絶対安全」は捨て去られなかったし、東電は責任逃れに終始しました。
結局、どんなに立派な調査報告書が書かれようと、改善、見直しを言い募ろうとも、原子力ムラにはなんの反省も見られなかったのです。

調査報告書、本当に良いこと書いてあるんですよ。少し掻い摘んで紹介しましょう。
第三の視点は、原子力安全委員会の役割についてである。原子力安全委員会は本来、安全審査及びその指針類の策定などの安全行政の基本に係わる事項を所掌するとともに、行政庁の安全規制の妥当性を監視する役割を担っている。そして、当然のことながら、関連する技術の進歩や安全に対する社会的要請の変化などに適確に対応しつつ、その任務を遂行する責を負っている。原子力安全の取り組みに関する世界の動向は、1979年のTMI事故及び1986年のチェルノブイリ事故などを契機に大きく変化してきている。しかしながら、これらの進展は主として原子力発電所に関連した分野であったため、核燃料サイクル関連の分野には必ずしも十分に浸透していないところがある。それは、原子力発電所の数に比べて対象とすべき核燃料サイクル施設の数が少なく経験の程度に大きな差がある上に、原子力発電所の規制は通商産業省であるのに対して核燃料サイクル関連の規制は科学技術庁という、我が国独特の規制の二元性に関連しているとも考えられる。2001年の省庁再編によって、産業部門の原子力安全行政は経済産業省に一元化される予定であるが、原子力安全委員会は、原子炉と核燃料サイクルを全体的に俯瞰しつつ変動する時代や社会の要請に応えて、規制行政庁とは独立した立場から安全行政を監視し指導することが求められており、事務局の抜本的強化と専門的助言者集団を充実化すべきことを提言する。
(3)危機管理下における情報の適正な管理

今回の事故においても、危機管理下における情報管理の不備が改めて指摘された。臨界状態の継続性及びその終息に向けた対応に関しては、冷静かつ専門的な情報の分析を必要としており、地域住民及び一般公衆への情報提供のあり方とともに、適切な情報管理体制を整備する必要がある。そのような情報管理体制とは次のような条件を満足すべきである。

第一に、事故発生後の非常時においては、地域住民及び一般公衆に対し、正確で、かつ、わかり易い情報がタイムリーに提供されなければならない。そのため、情報源を出来るだけ一元化し、情報の混乱を最小限にとどめるべきである。報道機関への情報提供者は、その情報源と直結し、とくに指名された者が当たるべきである。また、災害弱者に対する対応を含めて、外国人居住者及び海外の報道機関への情報伝達にも配慮すべきである。

第二に、災害防止や事故の終息に向けた迅速かつ的確な判断を可能にするためには、提供される情報を専門的に分析する作業を必要としており、それらの作業は、適切な場で特別にその任に当たる者によって遂行されるべきである。情報の提供が優先されるあまり正確かつ迅速な判断が遅れるようなことがあってはならない。この点に関しては、報道機関の節度ある取材活動による協力が不可欠である。
第二に、規制する側とされる側との間に健全な緊張関係があってはじめて自己責任の安全原則が効力を発揮するという点である。一方的規制強化は、場合によって、事業者の自主的保全努力や新たな安全に関する提案権を奪うものになりかねず、また、際限なき規制緩和が安全規律の劣化を招き易いことは過去の例により明らかである。規制する側とされる側との間の健全な緊張関係が含意するところは、申請・報告と審査・検査という行為を通して状況が常に改善され進化していくという循環的関係であることを認識すべきである。
http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/uran/siryo113a.htm
(2)今後の課題

原子力防災対策においては、初動時から複数の関係省庁の密接な連携や高度な調整が必要とされるため、初動時から内閣がリーダーシップを取る形式は有効であると考えられる。一方で、初動時における事故対応体制については、特に迅速性を要求されるものであり、一定の事象が生じた場合直ちに対応体制がとれるよう、迅速な初動と密接な連携体制を確保し得る強力な危機管理体制の実現を検討すべきである。
今後の課題としては、まず国の初動時の情報把握体制や助言体制については前述のとおり検討が必要である。また、テレビ等のマスコミによって国の発表がリアルタイムで報道される一方、住民に実際にどの本部のどの決定が防護措置を決定しているのか十分理解されたか疑わしく、防護措置の円滑な実施の観点からは、一元的に住民の防護対策の判断、実施が可能となるような体制を検討することが必要と考えられる。

また、今回の事故は我が国において初めて住民に対して屋内退避や避難等の防護対策が実施された事故であったが、乳幼児、児童、高齢者、障害者、外国人等の災害弱者に対する対応を含めて、今後事故時の住民行動や広報の実態を検証し、住民に対する防護措置のあり方について更に検討を行うことが必要である。
(2)今後の課題

今回は幸いにも現地に多数の専門機関等が存在したために多数の専門家や装備等を動員できたが、今回の経験を踏まえ、緊急技術助言組織や技術的な支援を行う専門家の能力を迅速に投入できる体制の整備が必要である。また支援に必要な情報の迅速な提供、資機材の確保、後方支援の充実が必要である。
(2)今後の課題

事故発生後の非常時においては、地域住民及び一般公衆に対して正確でかつわかりやすい情報がタイムリーに提供されなければならない。そのため、情報源をできるだけ一元化し、情報の混乱を最小限に止めるべきであり、国及び現地においてプレス対応をより適切に実施するために、常時対応が可能な専任の報道担当官を設置する等の体制について検討すべきである。また、事故の際には事故そのものの情報だけでなく、原子力や放射線に関する基礎的な情報も発信することが重要である。

今回の事故について週刊誌やテレビ等のマスコミで多数の報道がなされたが、「報道内容のチェック体制も必要であり、あまりに誤りの多いものや流言飛語の類は、科学技術庁、原子力安全委員会で訂正等の措置をすべき」との指摘もあった。
http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/uran/siryo114a.htm
倫理問題の背景

いずれにせよ、国際競争下での経営合理化と今回の事故の厳密な意味における因果関係を明らかにすることは困難である。

しかしながら、経営難に起因する厳しい人員削減等の経営効率化を契機として、社員の士気・倫理、さらには企業としての社会的責任感・倫理が低下したことが今回の事故の「背景」にあったことは推論するに難くない。また、特に、保安規定違反の手順書の作成、手順書に違反する作業工程の考案・実施という一連の行為のなかで、自己制御のメカニズムが作動しなかった背景には、国際競争の激化のなかで企業の安全管理意識が鈍化したという事情があったのではないかと思われる。

さらにこうした状況から、職場の雰囲気も原子力産業創生期の活気あふれる状況から大きく変化し、産業としての魅力が薄れていった可能性がある。

もちろん、だからといって国際競争を阻害したり、電力産業の規制緩和を押しとどめるということが問題の解決策となるわけではない。?原子力産業における効率性と安全性、?事業者及び技術者の社会的責任と倫理、といった問題について検討する必要がある。
安全性の確保

安全確保に万全を期すためには、関係する組織・体制の整備と企業風土としての安全文化の醸成が必要とされる。

事業者自らが行う自主保安活動の実効性を高めるよう組織・体制を整備するとともに、これを補完するものとしての国の安全規制の実効性を高めるべきである。また、安全確保活動が機能する上で、企業風土としての安全文化が重要な役割を担っている。安全文化の醸成には、経営者が率先して取り組み、従業員全体に自覚を促すとともに、安全性向上に向けた不断の活動が保障される基盤整備が必要となる。それ無しに、仮に国の規制だけを強化してみても、事業者の受動的な姿勢を固定化するだけとなっては、実効は挙がらないであろう。

安全性の確保には、事業者と規制当局との間の適度な緊張関係の形成と両者の間で緊密なコミュニケーションを確保することが不可欠である。

原子力産業界は、自らが持つべき使命感や自己向上意欲を堅持し、常に最新の安全確保技術の把握と自らのレベルアップに努めるとともに、安全確保にかかわる判断力を的確に発揮していくことが求められる。このためにも、総合力を発揮できるよう原子力産業界は体制整備に努めるとともに、積極的に技術革新に取り組み、国際競争力を維持することが求められる。我が国の原子力産業界が、魅力ある産業としての自立と発展を遂げる上で、我が国が進めている核燃料サイクル技術の産業としての確立は必要であり、これは国際社会への貢献としても極めて大きなものがあるが、これを実現するためにも、上述の如く、安全確保が何よりも優先されるべきである。
(事業者の責任)

事業推進に伴う安全性の確保の第一義的な責任が事業者にあることは、国際社会における共通認識である。また、本来国民一般に禁止されている事業について、特に許可を受けて事業を行う以上、事業者に期待される責任は大きいといわざるを得ない。ここにいう「責任」とは、法的な責任のみならず、社会全体に大きな影響を有するエネルギー政策を担う者として求められる社会的責任を含む。

いやしくも原子力事業に携わる事業者は、安全確保を第一として事業を展開すべきであるとの哲学を持ち、その考えが全従業員に浸透するようにあらゆる機会を捉えて自覚を促す努力を続ける責任がある。

 一般的には、事業者は規制当局から要求されている安全水準(あるいはルール)を守ることは当然として、これを更に実行可能な限り高めたより厳しい安全目標を事業者において自主的に具体化して、自主保安活動を能動的に展開するよう企業組織を運営すべきである。 このようなより厳しい安全目標に対応できる高度な安全管理意識が企業全体に浸透するよう従業員を教育・訓練していくシステムや、危機管理に関する行動指針の制定等を通じたマネージメント体制の確立が求められる。さらに、企業が組織として確実に責任を履行していくために、適切なコーポレート・ガバナンス(企業統治)を確立しておくことが求められる。この観点からは、十分な情報公開等を通じた透明性の高い企業経営等も重要である。
(1)社会と安全をめぐる基本問題

科学技術の飛躍的な発展に支えられた20世紀の高度産業社会の形成は、その一面として、1.人類社会が保全すべき自然資源に大きな負の波及効果を及ぼし得ること(地球環境問題の例)、2.克服すべき安全問題を内包する多くの新技術の開発によって支えられていること(原子力技術や遺伝子技術の例)、3.保存・保全すべき新たな産業文明的資源の蓄積が増大し、災害時の被害規模が著しく増大してきたこと(大都市災害の例)、という現実を社会に突きつけることになった。

こうして「安全」という価値は、いまや人間の種々の価値の一つという一般的な位置づけを超えて、20世紀を代表する「開発・発展」という価値に並置・対置されるような文明史的意義を担うものになりつつある。「安全」を来る21世紀に固有の価値の一つとして位置づけ、その認識と合意を国民的規模で浸透させるとともに、社会の責任として「安全」という価値に対する適正なコストを負担していく必要がある。

とりわけ先進国においては、高度産業化の成熟に伴って、「開発・発展」よりも「生活・福祉・環境」を優先させる価値観が台頭してきており、今後は「安全」価値が「開発」価値に比べて優位ないし等価とされるという価値意識が主流になるであろうことにも留意すべきである。開発コストには積極的であるが、安全コストには消極的であるといった風潮は、克服されなければならない。

今回の事故は、今日の日本人と日本社会が科学技術の発展に支えられて享受してきた繁栄が、いかに危うい点を含んでいるかについての一つの強い警鐘であると受けとめることができる。

単純な手順違反という人的因子がいかに大きな影響を及ぼしうるかを目の当たりにし、科学技術の発展が支えてきた安全がある種の限界性を示す中で、結局は人間の行為にまで遡って対応することが、問題を乗り越える最も重要な道であると考えざるを得ない。

原子力の安全問題は、安全問題一般の中でも特に象徴的な意味をもっており、今回の事故は、文明史的な「安全」価値一般の我が国社会への浸透を図る一つの好機と捉えることもできる。チェルノブイリ事故の直後に国際原子力機関(IAEA)の安全諮問グループ(INSAG)が導入した原子力をめぐる「安全文化」の概念は、端的に「安全最優先」をうたっている。原子力に携わる者は、これが最重要の原則であることを改めて確認する必要がある。
(危機認識)
ここで重要なことは、危機認識とは自分あるいは他者の行う行動や事象に対して「おそれ」を持つことではなく、自分あるいは他者がかかわっている目的の事象の意味を正しく理解し、その行動のもたらす結果を予測し、その事象の背後の「潜在的危険性」すなわちハザードを認識することである。具体的には、事故や障害等の発生確率と被害規模についての事前の認識とその認識を意識として維持することである。この被害規模の認識は、直接被害にとどまらず2次被害をも考慮する必要があることに加えて、加害者側のみならず被害を蒙る側に立つ視点が欠かせない。危機認識が的確なものでなければ、間接的なものも含めた的確な事前・事後の安全確保対応や安全確保支援の形成はあり得ない。このため、危害及びハザードの認識は、安全問題の原点となるものである。
http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/uran/siryo116a.htm

これらの問題点は、故高木仁三郎氏が「原発事故はなぜくりかえすのか」で指摘していた事です。氏が鬼籍に入られて10年以上。その著作の中で指摘されていた事が、何一つ省みられていなかった、ということは、原子力ムラが“繰り返す”問題に対して、その場しのぎの言い訳としか機能していなかった事を意味しています。

二度あることは三度ある*1。仏の顔も三度まで。もんじゅも二度や三度じゃないし。再び、立派な安全審査指針が出て、改善計画が打ち出されたとして、あなたはそれをどう判断します?

少なくとも、私は、何度と無く同じことを繰り返す彼らを信用することはいたしません。では。

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