記事

皇位継承問題を考える(4.番外編 ~女性宮家報道について~)

 皇位継承問題の連載をしているところに(1か月サボってますが)、タイミングよく飛び込んできた女性宮家創設についての報道

「女性宮家」創設検討を……宮内庁、首相に要請(11月25日読売新聞)  宮内庁が、皇族女子による「女性宮家」創設の検討を「火急の案件」として野田首相に要請したことがわかった。  併せて安定的な皇位継承制度の実現も求めている。皇室典範は、女性皇族について、一般の人との結婚などにより皇族の身分を離れるとしており、女性宮家創設にあたっては、宮家の当主となる女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つよう、典範の一部を改正することになる。  (中略)  宮内庁側は、今後、結婚により女性皇族が皇籍を離れるなどして皇族方が少数になると皇室全体の活動に支障が出ると危惧しており、羽毛田信吾長官が先月5日に首相官邸で野田首相に直接、女性宮家創設により皇族方の減少をくい止めることが喫緊の課題と伝えたほか、政府高官にも同庁側から説明が行われた。

 官房長官と宮内庁は、女性宮家の創設の検討を要請したことは否定し、女性皇族の結婚による皇族の減少など皇室をめぐる課題を説明しただけだとしています。  まあ「出過ぎたマネを」を言われたくない宮内庁はそう説明するでしょうが、火のないところに煙は立たず。これに近いことはあったのでしょう。

 今回は皇位継承問題の連載の番外編として、この報道について感想を述べてみます。

1.宮内庁が女性宮家創設を考えるのは予想どおり  私は連載の第1回目 で、皇室典範改正の選択肢としての女性宮家創設について、こう書きました。

(2)女性皇族が結婚後も皇室に残ることだけ定める  女性皇族が結婚すると皇室を離れる今のルールのままでは、40年後には皇族は悠仁さまとその妻、子供(その時点で未成年)しかいなくなります。  つまり、今、7家(天皇、皇太子、秋篠宮、常陸宮、三笠宮、三笠宮寬仁親王、高円宮妃。御病気の桂宮を除く)で分担している公務を、1家で担うことになります。  その負担を軽減するため、眞子さま、佳子さま、愛子さまに結婚後も皇室に残って公務を分担してもらうけど、皇位継承権はないよ、という案。  皇位継承のルールは、その後、悠仁さまの男系男子の子孫が途絶えた時点で改めて考えることとします。  女系天皇の容認は過去125代続いた男系天皇の伝統を崩す大きな改正ですが、女性天皇はいたわけですから、皇族女性が公務を担うことに問題はないはず(夫がいるという点だけは新しいが)。  実務的にはなかなかいい案だと思うのですが、ちょっとずるいかもしれません。  結婚後も皇室に残ってもらう以上、本人とその子孫が天皇になる可能性が含みになっているのは明らか。  「女系容認か、旧皇族を復帰させてでも男系男子維持か」という大きな議論を回避したまま、既婚女性皇族の活躍という既成事実を作って、なし崩し的に女系天皇容認の流れを作り出すことになりますから。

 「実務的にはなかなかいい案」と書いたように、いかにも宮内庁が考えそうな案。  政治が大きな決断をできないなら、小さく分割して、まず緊急の問題だけ解決し、本質的な問題は先送りする弥縫策を考えるのが官僚の常ですから。

 女性宮家が創設されれば、皇位継承問題を35年ほど先送りできます。  35年後というのは、眞子さまの長子が20歳を超え結婚適齢期を迎え、悠仁さまが40歳になりもう子供は生まれないと判断される頃。

 まずは、皇位継承権には触れず、「皇族が少数になることによる活動への支障」を理由に女性宮家の創設を考えるだろうというのは予想どおりでした。ちょっと自慢。

2.このタイミングで表に出た背景は  宮内庁が女性宮家創設を考えているのは明らかだと思っていたので、私の関心は「どのタイミングで表に出してくるか」にありました。  眞子さまが成人していつ結婚相手を見つけてもおかしくない以上、できるだけ早くしたいのはやまやま。でも、政治情勢を見極める必要もあり、バランスが難しい。

 女性宮家創設に対する政治家の意見は、おそらく、民主党は大多数が賛成、自民党は多数派は消極的な賛成だが、少数の保守派は強硬に反対。

 総選挙まで1~2年。その前の改正は無理なので、その後をにらむ必要がある。  民主党が政権を維持すれば女性宮家創設に動き出すでしょうし、自民党の反対派が首相になればあきらめるしかない。ここまではわかりやすい。

 ポイントは、自民党の多数を占めるであろう消極的な賛成派(谷垣氏、石原(伸)氏あたり)が首相になる場合。しかも、こうなる可能性が極めて高い。  そう考えると、宮内庁にとって、今の民主党政権のうちに皇室典範改正論議が盛り上がるのは好ましくありません。

 総選挙前で与野党対決を演出する必要がある以上、自民党は少数ながら強硬な反対派に引きずられ、反対でまとまってしまうかもしれないですから。  そうなれば、女性宮家創設には民主党色がついてしまって、自民党の消極的賛成派が首相になっても、賛成に回帰するのは容易ではなくなります。

 宮内庁もそう考え、女性宮家論議を表に出すのはまだ早い、総選挙までは様子見と思っているはず。そういう中、このタイミングで報道された背景は何か。  ハプニング的な読売新聞のスクープだったのか、宮内庁の女性宮家創設に向けた長期戦略の一環としてのリークだったのか。おそらくは前者でしょうが、後者だとしたら、宮内庁がどういう長期戦略を持っているのか、とても興味深い。

3.今後の展開は  皇室典範の改正論議は、この女性宮家創設案を軸に展開していくでしょう。  皇位継承権には触れず、皇族が減って公務に支障が出ることを理由にすれば、女系天皇の容認派と反対派の妥協点となり得ます。

 ただ、建前としては「皇位継承権とは無関係」との説明はできますが、実態として見れば女系天皇誕生に一歩近づくのは丸見え。

画像はこちら

↑「丸見え」のイメージ画像

 女系天皇反対派は女性宮家創設にも反対するでしょうね。現に、安倍晋三氏や平沼赳夫氏からそういう反応 が出ています。

女性宮家創設、「性急に考えるべきでない」と自民・安倍氏(11月26日産経新聞)  自民党の安倍晋三元首相は26日、都内で行われた保守系団体の集会で、藤村修官房長官が女性皇族の結婚による皇族の減少を食い止めるため「女性宮家」創設検討の必要性を指摘したことについて「性急に考えるべきではない。民主党政権が取り組んで大丈夫なのかと強く危惧している」と述べ、慎重に議論すべきとの考えを示した。  安倍氏は「(女性皇族に)適齢期がくれば、民間に降嫁されて宮家がなくなってしまうという状況にもあり、いくつか選択肢を考えるべきだ」と述べた。  同じ集会で、たちあがれ日本の平沼赳夫代表は「125代にわたって、男系で続いてきた世界の宝といわれる皇室を女系に変えることがあってはならない」と指摘。一方、「女性の宮家をつくることはいい」と一定の理解を示したが、その場合でも「(旧宮家などの)男系のいわゆる血を持っている男性と結婚して男系の血を守っていくことが皇室の存続にとって大切だ」と強調した。

 この報道はなかなか興味深い。女系天皇反対派も、女性宮家なら最後はしょうがないというトーンがにじみ出ています。  女性宮家を創設するとして、その形をどこまで女系天皇反対派に譲るかがポイントになってくるでしょう。

 論点は大きく分けて2つ。

 1つは、女性宮家の呼び方、夫や子供の法的位置づけといった形式的な問題。  女性皇族を結婚後も皇室に残すという実さえ取れれば、名はいくらでも譲るでしょうから、それほど問題にはならないでしょう。

 難しいのは2つめ、旧皇族の男系男子の取り扱い。  反対派は、女性宮家創設の代償として、旧皇族の男系男子を皇室典範に何らかの形で位置づけることを主張するでしょう。

 この主張に対してどこまで譲るかが、女性宮家論議の天王山となるでしょう。  何も譲らない案から、女性宮家の創設を旧皇族の男系男子と結婚した場合に限定する案まで、選択肢はいろいろあります。

 私は、以前も書いたように 「潜在的皇位継承候補者」的な位置づけをして、その名簿(「準皇統譜」的なもの)を宮内庁が管理する案が妥協点と予測しているのですが、どうなるでしょうね。

トピックス

ランキング

  1. 1

    ナイキ多様性広告 日本で大反発

    BBCニュース

  2. 2

    PUFFY亜美を選んだTERUの離婚劇

    文春オンライン

  3. 3

    「鬼滅の刃」米で成功の可能性は

    田近昌也

  4. 4

    「小泉さんの仕事」橋下氏が指摘

    橋下徹

  5. 5

    宗男氏 礼儀ない野党議員を非難

    鈴木宗男

  6. 6

    秋篠宮さま誕生日に職員2名辞職

    文春オンライン

  7. 7

    扇動行為ない周庭氏を封じた中国

    新潮社フォーサイト

  8. 8

    吉村知事の苦言に「ブーメラン」

    女性自身

  9. 9

    マスク勧めない国 感染増の現在

    文春オンライン

  10. 10

    流行語とヒット商品「やっぱり」

    ヒロ

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。