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【読書感想】バカ論

2/2

 さんまは、しゃべりの天才。

 それはもう突出した才能がある。テレビでトークさせたら、右に出る者はいないんじゃないか。反射神経と言葉の選択のセンスは凄い。

 ただ、いかんせん教養がない。

 そこが限界かもしれない、と思ったりもする。

 バラエティ番組の中で、素人でも誰でもどんな相手だろうときちんと面白くする。けれど、相手が科学者や専門家の場合、結局自分の得意なゾーンに引き込んでいくことはできるし、そこで笑いは取れる。でも、相手の土俵には立たないというか、アカデミックな話はほとんどできない。男と女が好いた惚れたとか、飯がウマいマズいとか、実生活に基づいた話はバツグンにうまいけど。

 トークに関して大天才なのは認める。けれど、例えば数学者と話す場合、その笑いのキーがどこにあるのかわからない。数学者の外見や私生活、奥さんの話を突っ込んで、そこから話を膨らませるのは上手いけど、数学そのものの話はできないから。これでもっと教養があればと、惜しいと思う時がある。

 だからさんまは、”教養なき天才”ということ。


 ”教養なき天才”か……
 悪口を言っているのか、「教養」がどうしても気になってしまう、たけしさん自身と比較して、さんまさんの潔さと「天才」ぶりに、憧れのような、複雑な感情を抱いているのか……
 さんまさんの場合は「自分の笑いのなかから、徹底的に”教養”を排除している」ことが、強みでもあるのですが、たけしさんは、ちょっともったいない、と思ってもいるようです。
 この数学者の例は、本当にうまい説明だよなあ。


 どちらかというとタイトルにある「バカ」についての話よりも、この新書の端々に出てくる、ビートたけしという人の人生観や他者への評価軸のほうが、僕には興味深いものでした。
 基本的には、読んで感心する、とかすごく役に立つ、というよりは、たけしさんの「話芸」を愉しめば良いと思うんですけどね。

 モノマネ芸人が、「本人より似ている」と言われるのと同じで、本物よりコピー商品の方が好まれる時代なんだろうか。エルメスだって、辞めた職人がコピーを作っているところもあって、そっちの方が本物より質がいいらしい。

 笑ったのは、昔「元気が出るテレビ!!」のTシャツを売り出した時のこと。偽物が出回って、それにプレミアが付いちゃったから、慌てて「本物と偽物の見分け方」というのを伝えたらしいけど、「本物は、洗濯すると柄が落ちます」だって。

 本物のほうがセコいってどういうことだ。「偽物はいくら洗っても、色落ちすることもありません」だって、バカ野郎。


 こういう部分を読むと、たけしさんの声と口調で、自然に再生されてしまうのですから、やっぱり、ビートたけしはすごいな。

fujipon.hatenadiary.com

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