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リベラル改憲派・枝野幸男代表と、長谷部恭男教授のダブルスタンダード ~そして枝野代表を指導した憲法学者・小嶋和司に関する補足~

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最近、枝野幸男・立憲民主党代表が、「改憲派」であったことが、少しずつ話題になっているようだ。衆議院選挙の中で、リベラル=護憲派のイメージで立憲民主党は「躍進」したことになっているが、枝野代表自身は、自分を「保守」だと自称している。枝野代表が「第三の道」なる改憲案を公表したのは、わずか4年前のことだ。保守を自認する小林よしのり氏が、衆議院選挙中から、一貫して「保守/改憲派」の枝野代表を応援し、選挙後も支援を繰り返し表明していることは、真面目に受け止めてよい。http://blogos.com/article/256525/

 安保法制を「立憲主義に違反する」とする立憲民主党/枝野代表の立場は、実は「安全法制は違憲だ」論ではない。立憲主義違反だが、違憲とは言っていない、というのが、枝野代表の発言である。http://www.nicovideo.jp/watch/1502956118

 控えめに言って、これはややこしい。護憲派の枝野ファンが、小林よしのり氏が枝野代表を誤解しているのではないか、と思おうとするのも、無理もない。実際、「アベを許さない」「リベラル」「保守」「安保法制反対」「改憲派」の枝野氏の立場は、仮に姑息でないとしても、ややこしい。

 たとえば、私は、安保法制は違憲ではなく、立憲主義違反でもないと考えている。全く逆に考える人もいる。しかし、枝野代表は、どちらでもない。立憲主義違反だが、違憲ではない、と言う。ややこしい。仮に姑息ではないとしても。

 それにしても驚いたのは、あの長谷部恭男教授が登場し、「すべて個別的自衛権の行使として説明できる」という「従来の政府解釈を憲法に明文化しようとしたもの」だという理由で、2013年の「枝野氏の改憲案」を擁護していることだ。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171031-00000051-sasahi-pol

 率直に言って、2013年10月に『文芸春秋』に掲載された「枝野氏の改憲案」について、長谷部教授のような描写をすることは、正しくないと思われる。しかし驚くのは、そのことだけではない。そもそも長谷部教授は、従来の政府解釈を明文化するだけなら改憲は必要ない、と考えるため、「アベ改憲は許さない」の立場だったのではないか?なぜ「枝野氏の改憲案」であれば、従来の政府解釈と同じだからOKだ、になるのか?これはダブル・スタンダードではないのか?

 アベはダメで、枝野なら良い、らしい。アベは敵だが、枝野は「アベを許さない」同志だ、ということなのか。党派的な対立関係は、明確だ。しかし知的議論の内容は、混乱しているように見える。

 2013年論文(枝野幸男「憲法九条 私ならこう変える」『文芸春秋』2013年10月号、126-131頁)において、枝野氏は、個別的自衛権か集団的自衛権かで「線引き」をした旧来の内閣法制局の見解から、明らかに距離を取っていた。

 「日米安全保障条約に基づき、我が国に米軍基地が存在しているという実態は、集団的自衛権の「行使」ではないにしても、ある種の集団的自衛と説明するしかありません。そもそも、こうして個別的か集団的かという二元論で語ること自体、おかしな話です。そんな議論を行っているのは、日本の政治家や学者くらいでしょう。」(同上、127頁。)

このような立場から出発した枝野氏は、「具体的に、どうしたケースであれば、実際に集団的自衛権の行使を可能とする必要があるのか」という問いを出した。そして公海上の米艦船を助けることを合憲とし、「その他の大部分の集団的自衛権行使」については否定する、という改憲案を提案した。長谷部教授は、これをもって、「個別的自衛権にあたるから合憲だ」と枝野氏が言っている、と解釈するようだ。だが、それは枝野氏の議論ではない。枝野氏は、「集団的自衛権の一部容認と説明するのか、それとも個別的自衛権として許されるギリギリの限界として説明するのか。説明の方法が異なるだけで大きな差はないと思います」、などと述べていた。

 日本政府は個別的自衛権と集団的自衛権が重なることはない、という解釈をとっている。したがって、枝野氏が述べたことが「従来の政府解釈」にそったものなら、枝野氏は、米艦防護が個別的自衛権か集団的自衛権かはわからないが、どちらかではある、しかしいずれにせよ合憲だ、と言ったわけである。枝野氏が、「集団的自衛権ではない、個別的自衛権だから合憲だ」、と主張した形跡はない。

 2013年の改憲案論文で、枝野氏は、「後方支援については言及する必要がない」、といって議論の必要性それ自体を退けた。国際法で集団的自衛権に該当するものは「違憲」だ、と考えるのであれば、枝野氏のような態度はとれない。枝野氏は、「私は憲法でタガをはめるべきなのは、実際に我が国が、自衛目的ではない武力行使に踏み切らないようにすること」だと宣言していた。枝野氏は、「集団的自衛権」と「個別的自衛権」の差異には、関心がなかったのである。2013年枝野論文によれば、「個別的か集団的かという二元論で語る」という「おかしな話」を広めているのは、日本の憲法学者、および憲法学者へのアンケート調査結果で政策を決める政治家だけである。ちなみに国連憲章51条は、個別的・集団的自衛権を包括的に扱っている。2013年枝野論文の見解でよい。

 そうした見解で、枝野氏は、解釈を明確にするための「9条の2」「9条の3」を加える改憲を提案したのであった。これに対して長谷部教授は、枝野氏の改憲案は良い、アベ改憲案は「地球の裏側」の活動も認めてしまうので、ダメだと言う。しかし共産党は、枝野改憲案に対して、「日本への攻撃に対する自衛措置としていますが、地理的な限定も示されていません」と批判していた。  http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-09-10/2013091002_02_1.html

  枝野氏は「公海」の話しかしていない。共産党のほうが、きちんと2013年枝野論文を読んでいると思う。

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