記事

なぜ学校では「天才」を育てられないのか 「年相応の学び」が才能をつぶす

2/2

■今の学校が抱える2つの問題

問題は現在の日本の教育、特に学校教育がこうしたスーパーヒーローたちを育てるのに貢献しているかどうかです。従来の平均的に伸ばせても云々という日本の教育の限界を本気で突破していく姿勢を示せないと、学校がこうしたヒーローたちを育てる、あるいは多様な子どもの特技をうまく伸ばすことにはなかなかつながらないのではないかと思うのです。

現在ある日本の学校の多くはかなり変わってきましたが、まだ大多数は教師主導型で画一的な指導という点で同じ特徴を持っています。このままでは、個々の(隠れた)才能を上手に開花させていくことは難しいのではないでしょうか。

私は平均点を伸ばすだけでなく、それぞれの個性や特性、それに育つ環境に合わせて、柔軟で多様な学びや教育があるべきと考えています。

実際、今の学校教育にうまく適応できずに不登校になる子どもたちはなかなか減りません。むしろ増えているのではないかと思われます。学校は、受験社会を勝ち抜いて「いい学校に入っていい会社に入る」ことがゴールとされた時代はもうとうに終わったはずなのに、学校がまだその体質から抜けられないでいるからでしょう。

今や中学生の間では、オリジナル動画をネットにアップさせる「YouTuber」が将来になりたい職業の上位に上がっています。ソニー生命保険の「中学生が思い描く将来についての意識調査2017」では、男子中学生の1位は「ITエンジニア・プログラマー」、2位は「ゲームクリエイター」、女子中学生の1位は「歌手・俳優・声優などの芸能人」、2位は「絵を描く職業(漫画家、イラストレーター、アニメーター)」という結果が出ました。


ランキングには、もちろん公務員、教員、会社員も入っています。ですが、これらの職業に憧れる10代の気持ちに、私はなるほどと思いました。

果たして、今挙げたようなポスト第三次産業とでも言える仕事を志向する子どもたちに今の学校は対応できているのでしょうか。時代とともに、価値観や人生の目的が変化・多様化しています。そのスピードに、大人たちも学校もなかなかついていけないというのが実情のように思えます。

今の学校にはふたつの点に問題があります。

ひとつは、先述したように、そもそも学校とは「平均的な能力の底上げをするシステム」であって、その子どもたちのそれぞれが持っている特別な、その子にひそんでいるその子なりの才能の芽を上手に伸ばして、個性的な力を育てられないこと。

ふたつ目は、古い子ども観が残っていること。育て方によっては子どもはすごい力を発揮するのにもかかわらず、彼らの可能性に対してまだまだ目が閉ざされていて、悪い言い方をすれば「子どもは子どもなんだ」というところで考えが止まってしまう。結果、それが授業のあり方、子どもたちへの接し方に表れてしまい、「年相応の学びを提供する」ことで終わっている。

■従来の教育システムでは可能性は育てられない

日本の学校は、「平均的に底上げ」と、大人から見た「年相応の学び」のために、「個別の可能性育て」を封印してきました。また、誰が採点しても不公平が出ないような○×式の回答を求めてきたために、正解のあるものをどれだけ正確に覚えるか、あるいはちょっとトリックのあるような問題だと、それをやはりいかに覚えるか、というところに注力してきました。それが受験勉強という形で、ある時代までは機能してきたのです。

今、日本の学校はどこまで機能しているでしょうか。

○×式で正解を求めていくことで、その分野で秀でた力を持った人材は見出すことができたかもしれませんが、まだ答えが見つかっていない問題、答えを自分たちでつくるしかない問題、みんなの意見を上手に束ねることが必要な問題に、答えられる力はどうでしょう。

世の中にないものを提案する力、しかも5年たったら大きく変化していくであろうこの時代のなかで、新たな提案をする力は、残念ながら従来の教育システムではまかないきれなくなっているのです。

----------

汐見稔幸(しおみ・としゆき)
白梅学園大学学長、東京大学名誉教授。1947年、大阪府生まれ。東京大学教育学部卒、同大学院博士課程修了。専門は教育学、教育人間学、育児学。育児や保育を総合的な人間学と位置づけ、その総合化=学問化を自らの使命と考えている。主な著書に『小学生 生きる力を育てる』『本当は怖い小学一年生』など多数。近著に『「天才」は学校で育たない』(ポプラ新書)がある。

----------

(白梅学園大学学長、東京大学名誉教授 汐見 稔幸)

あわせて読みたい

「学校教育」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。