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座間9遺体事件と自殺願望

 悪質な連続殺人事件らしい座間の「9遺体事件」は、近年まれな猟奇事件の様相を示している。本来ならこの種の異常な事件は扱いたくないのだが、私にも高校時代には自殺願望に近い状態だった時期がある。自殺を考えている人間がどのように行動して、その人たちをどう扱うべきかという文脈で考えてみたい。私が怒りを感じるのは、他人の自殺願望を、犯人は自己の欲望充足に利用したという一点についてである。
 
 もう生きているのがいやになった人間は、物欲には淡白になる。所持金・財産を巻き上げるには格好の獲物と言ってよい。同情するふりで「あなたの気持はわかります。私も同じです」と近づけば、容易に引き寄せられるだろう。この犯人の場合は、呼び寄せた当日に殺していたらしい。しかも犠牲者の財産を手に入れる手続きもしていないようだから、殺人自体が目的のようにも思われる。その動機の解明には、綿密な取り調べと慎重な裁判が必要になるだろう。
 
 日本は自殺大国である。しかも若い人たちの自殺が多い。私も「自殺論」などという本を熱心に読んだことがある。そこで教えられたのは、「自殺者は、よりよく生きたい人だった」という事実だった。「よく生きたい」からこそ、現実との乖離に絶望するのだ。何をしたって生きて行けると思えば、自殺する必要はなくなる。それだけのことなのだが、インターネットの時代が、問題をより複雑にしている。
 
 情報交換を通して、共通のキーワードを持つ人たちが簡単に結びつくようになった。自殺願望者には、前述したような弱点がある。そこに悪意で付け込まれたら、簡単に生命・財産のすべてを奪われてしまうだろう。今は自殺防止のために、善意で運営されている「いのちの電話」などの活動もある。少しの勇気を出して話してみたらどうだろう。ただしここで注意すべきは、インターネット上の個人に頼るのは、非常に危険だということだ。言葉だけなら、どんなに優しくも力強くもできる。一度や二度会ってみたところで、相手の真意がわかるわけがない。
 
 救世主とは、ある日突然に現れたりはしないものだ。それは自分の心の中で、努力によって育てるものなのだ。

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