- 2017年11月01日 18:03
北朝鮮の核脅威の解決と北東アジアの平和をどう実現するのか ~「日米対話」公開フォーラム 報告~
2/2核保有国化をいかにして阻止するか
タウン氏は、交渉のやり方自体を見直すことの必要性を示唆。そこでは、北朝鮮との交渉はこれまで25年間の交渉では時期によっては全く対話に応じなかったかと思えば、一転して合意に至ったりしたこともあるなど、行ったり来たりで持続性がなかったと振り返りました。そして、金正恩総書記の対応は先代の金正日氏よりもさらに読めないものであり、「交渉はしても良いと考えているはずだが、北朝鮮も力を付けてきているので簡単にはいかないはず」とし、「核保有国として認めてはならないが、現実的オプションも考えるべき」と述べました。
宮本氏は、北朝鮮の核保有を止めるための手段は限られているとの認識を示した上で、「しかし、ここで国際社会が一体となってプレッシャーをかけ続けていかないと、さらに北朝鮮は核開発を進めてしまう」と語り、選択肢が乏しい中でも現状でできる限りの対応をしていくことの必要性を説きました。
その上で宮本氏は、タウン氏に対し、北朝鮮の非核化の可能性を尋ねました。
これに対しタウン氏は、交渉自体がスタートできず、対話のための関係づくりができない難しさがあるとしつつ、「長期的な合意は可能」であり、「米国も国際社会も朝鮮半島非核化という大原則を断念してはならない」としました。
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宮本氏は、北朝鮮が核保有国となることは、日韓が常に核による恫喝にさらされることになるため、自国の安全を確保するために、場合によっては核武装を検討する必要が出てくるなど、これまでとは全く異なる安全保障戦略の選択を迫られることになると指摘。そして、日韓が核武装するようなことになれば他にも核武装をする国々が出てきて核不拡散体制が崩壊するため、したがって、とにかくまず北朝鮮の核保有を阻止するための対応が最優先だと主張しました。そして、国際社会の一致した対応が不可欠であるが、経済制裁が本格化した今こそが一致結束の好機だと述べ、そうしてこの経済制裁を対北朝鮮政策全体のプログラムの中に位置付けつつ、非核化への道筋を描いていくべきと主張しました。
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香田氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止できないことがどのような事態をもたらすのかについて語りました。香田氏は、北朝鮮はICBMで米国を抑止することができると考えているが、これはすなわち、日米安保を無力化することにつながり、さらには、インド、オーストラリアも含めた日米のインド洋、アジア太平洋戦略にとっても大きな障害となることを指摘。そのため、「核・ミサイル開発は絶対に阻止しなければならない」と強調。そのためには、交渉や圧力も重要であるが、これらが機能しなかった場合を常に考慮し、「最後のオプションとして軍事攻撃のことは考えておかなければならない」と主張しました。
日米同盟と拡大抑止
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德地氏は、米国の拡大抑止の信頼性について、冷戦時代を引き合いに、「当時、米国と日本はソ連の戦略を把握していたかというと必ずしもそうではなかった」とした上で、それでも実際に拡大抑止は機能していたと振り返りました。したがって、「北朝鮮の戦略が分からないとしても、冷戦時と同様に拡大抑止は機能するだろう」との見通しを示しつつ、それでも不確定要素があるのであれば、それをできる限り取り除く努力をしていくべきと語りました。
また、取るべき戦略はcontainment(封じ込め)であり、そこでは中国の役割が重要なのは確かであるが、「これは民主主義体制と権威主義体制の対峙である以上、権威主義側の中国に頼らず、やはり米国との協力を中心とすべき」と主張しました。
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クリングナー氏は、米国の拡大抑止の信頼性については、「やや疑問がある」としつつも、同盟国の間では、「米国はロサンゼルスを危機にさらしてまで東京やソウルを守るのか。北朝鮮からの核攻撃を恐れ、同盟国である日本や韓国に対する防衛を躊躇するのではないか」という「デカップリング(切り離し)」に対する懸念が高まっていることに対しては、日韓両国に多くの米兵・軍属がいることを指摘し、「米国は同盟国のため、また自由と平和を守るために今後もコミットメントを続けていく」と述べました。
西氏は、仮に米国がコミットメントに失敗した場合、世界中から「約束を守らない国」との烙印を押されることになるため、必ずコミットメントはしていくと予測。その上で、コミットメントには米国の負担が大きいため、「こちら(日韓など同盟国)側が負担を減らすべくどうサポートするか」が課題になるとし、米国のコミットメントを疑う前になすべきことがあると喝破しました。
中国をどう巻き込むか
パール氏は、北朝鮮の「レジーム・チェンジ」の可能性について言及しつつ、「これは中国にとって非常に心地良くない言葉だ」と指摘。ティラーソン国務長官も言っているように、「中国の面子」をつぶさないように配慮すること、そして、これから北東アジアで起こるであろうパワー・トランジションに伴うバランス・オブ・パワーの変容を踏まえながら、中国も巻き込んで「大きなピクチャーを描くための議論が必要だ」と述べました。
宮本氏は、これまでの中国の対北朝鮮政策は妥協の産物であったと振り返った上で、しかし賈慶国・北京大学教授が論文"Time to prepare for the worst in North Korea"で示したように、中国も朝鮮半島で軍事衝突が勃発する事態となった場合を想定して準備を始めていると分析。中国がこのように積極姿勢に転じたことを「西側も最大限に利用していくべき」と主張しました。
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リッパート氏は、米大統領と中国の国家主席がまず話をすることが北朝鮮問題を解決していく上では理想的なスタートポイントであるとしつつ、それはなかなか理想通りにはいかないため、「マルチラテラリズムによって対応していくしかない」と述べました。そこでは、六者協議とは異なるもっと柔軟性のあるフォーマットが必要であると同時に、そこでミサイル防衛や抑止力の議論が出ると中国は枠組みに対して懐疑的になってしまうと注意を促しました。その上で、枠組みのコアメンバーとなる日本と韓国が、それぞれ中国との関係を改善し、チャネルを回復していくことが中国を巻き込んでいく上で重要なポイントになると指摘しました。
西氏は、日本の姿勢として中国から見て「いやな日本」になるべきと主張。すなわち、「後に日本が核武装するくらいなら、ここで北朝鮮を抑えておいた方がましだ」と計算するように仕向けることで、中国を国際連携の場に引き出すべきだと語りました。
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一方、香田氏は、中国は北朝鮮をめぐって大きな利害関係があり、自らの国益上譲れないものがあること、経済制裁の是非に関しても国内で対立があることなどを指摘し、中国にはあまり期待できないため、こちらが期待した対応を取らなかったからといって失望すべきではないと述べました。そして、それよりも「中国ができないことを他の国々がどうカバーするか」という視点が必要だと説きました。
制裁をどう実効性のあるものにするか
パール氏は、経済制裁の効果については、抜け穴も多いため「楽観的ではない」し、そもそも「制裁だけで問題が解決するわけではない」と前置きしつつ、それでも「核・ミサイル開発に直結するような貿易は断固阻止しなければならない」と語りました。特に、北朝鮮がミサイル燃料の原材料を中国から輸入しているというアメリカの研究機関のリサーチ結果を紹介し、そうした取り引きは徹底的に取り締まらなければならないとしました。また、北朝鮮が企業名の偽装など様々な巧妙な手口で制裁を回避しているため、それに対する対応も不可欠と述べました。
宮本氏も、現時点では制裁をしっかりと実施していくための国際的な体制が整っていないとし、まず体制整備を求めました。その上で、最も制裁逸脱を見破ることに長けているのは、米国であるとし、CIA(米中央情報局)の予算拡充による対応強化を提言。さらに、中国企業による制裁潜脱が多いことに関しては、「実は中国政府もそうした企業の取引の実態は把握できていない」と指摘。そこで、自身の中国大使時代の経験から、トップが号令をかければしっかり現場が動くという中国社会の特性を生かすべく、「トランプ大統領は折に触れて習近平国家主席に電話をしているが、その機を捉えて対応徹底を要請する。そして、習主席が発破をかければ現場は動かざるを得なくなり、制裁の網の目もより細かくなるのではないか」とのアイディアを披露しました。
北朝鮮の沈黙は何を意味するのか
9月以降、北朝鮮が核・ミサイル開発で目立った動きを見せていないことに話が及ぶと、香田氏は、北朝鮮はこれまで自らの核・ミサイルが米国を射程に収めたことによって、米国は恐怖に慄き、抑止に成功したと思っていたが、トランプ大統領のツイッターを見るとむしろ逆効果だったと思い始め、これ以上米国の怒りを買うことに躊躇し始めているのではないかと指摘。もっとも、「このまま引き下がることはない。今は戦略の立て直しのために時間を稼いでいるのではないか」とも指摘しました。
タウン氏も、今の北朝鮮の沈黙から何らかの政治的なメッセージを読み取ることは妥当ではないとし、「技術レベルを一段上に上げるための準備に時間がかかっているのではないか」との見方を示しました。
信頼に基づく「五者協議」を
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その後、会場からの質疑応答を経て、ショフ氏は議論の総括としてまず、関係各国が意志を統一し、対話を深めていくことの重要性を再認識したとコメント。また、北朝鮮の核・ミサイル技術のさらなる高度化まで時間的猶予は少ないものの、「即時に危機が起こるわけではない」として拙速な対応を戒めるとともに、「全地域的な対応が必要」としました。そこでは時に、米中の役割が重要であるとして、「五者協議」を提案。中国も北朝鮮問題に本腰を入れて取り組み始めた今ならこうしたマルチの枠組みも有効になるとの見方を示しました。もっとも、そこで重要になるのは「相互信頼」であると主張。例えば、日本にとってのミサイル防衛のように、いかに自国にとって不可欠なオプションであっても、信頼がないまま進めれば、他国からは軍事的なエスカレーションとして見做されてしまうと指摘。その結果として五者のまとまりを欠くことは北朝鮮を利することになると説き、「だからこそ五者協議の枠組みの中で信頼関係を構築すべきだ。特に、日米韓の間では様々な安保協力を通じてすでに基礎は出来ているからそこを足掛かりとすべき」と語りました。そうした取り組みを地道に続け、「世界が北朝鮮を問題視している」というメッセージを伝わるようにすべきだとして、三時間にも及んだ対話を締めくくりました。
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