- 2017年11月01日 18:03
北朝鮮の核脅威の解決と北東アジアの平和をどう実現するのか ~「日米対話」公開フォーラム 報告~
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⇒ 北朝鮮の核保有は認めず、軍事行動を抑えるため日米で何ができるのか
~「日米対話」非公開会議 報告~
午前の非公開会議を経て、午後からは公開フォーラムが行われました。ここでは、北朝鮮から核保有を排除するために米国はどのようなシナリオを描いているのか、米国の軍事行動を避けることはできるのか、そのために何が必要か、日米韓でどんな協力ができるのか、などを中心に議論が展開されました。
今回の日米対話には、米国側から6氏、日本側から5氏の外交・安全保障の専門家、自衛隊関係者が参加して行われました。
参加者は以下の通り
日本 工藤泰志(言論NPO代表)
香田洋二(元海上自衛隊艦隊司令官)
德地秀士(元防衛審議官)
西正典(元防衛事務次官)
宮本雄二(元駐中国大使、宮本アジア研究所代表)
米国 ダグラス・パール(カーネギー国際平和基金副会長)
マーク・リッパート(前駐韓大使)
ジム・ショフ(カーネギー国際平和基金日本部長)
ブルース・クリングナー(ヘリテージ財団シニアフェロー)
ジェニー・タウン(ジョンズホプキンス米韓研究所副所長、「38ノース」編集長)
シブリー・テルハミ(メリーランド大学クリティカルイシュー世論調査ディレクター)
北朝鮮の核保有を認めないこと、軍事行動を避けるという連立方程式の解はあるのか
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公開フォーラムの主催者挨拶に立った言論NPO代表の工藤泰志は、「11月5日にはトランプ大統領が来日し、政府外交も動いていく中で、民間で出来ることは限られているが、議論するだけでなく、課題解決に向けたアプローチを私たちはしていきたい」と今回の対話にかける意気込みを説明。さらに工藤は、「同盟国として日米協力は必要だが、加えて多国間のチャネルも作ろうとしている。そうした中では目標を共有すべきだ。そこで、私たちは二つの目標を立てることにした。一つは、北朝鮮の核の保有は認めないこと、もう一つは、軍事行動は避けること。この連立方程式の答えは描けるのか」と語り、今回の対話を通じてそうした連立方程式の答えやその端緒が出て来ることに期待を寄せました。
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続いて挨拶に立った宮本氏は、「東アジアは風雲急を告げている。2012年の尖閣諸島問題で日中が対峙したのに次いで、北朝鮮が核兵器国家に向かって緊張が高まっている。だからこそ、中長期的な平和安全メカニズムを構想すべきだ。その要になるのが日米関係の意思疎通で、共通の手段が最も重要だ。北朝鮮の問題は山積みだが、問題を解決することの難しさは当たり前のこと。難しさに負けて戦争への道を開くのか、回避する道はあるのか、核兵器国家として認めるのか、そこではどんな戦略環境が待っているのか。戦後、安穏としてきた日本に安全保障問題が突きつけられている」と、100人近く集まった聴衆に呼びかけました。
続いて、日米5氏が議論に向けて問題提起を行いました。
無秩序の時代を迎えているからこそ、日米関係をより前進させるいい機会
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まず、パール氏は、「トランプ大統領が来日する中で、中国は共産党大会を終えて習近平総書記の力が強まり、朝鮮半島ではICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射が行われるのでは、と懸念が高まっている。またISIS(イスラム国)は崩壊し、今、世界は無秩序の時代を迎えている」と指摘。さらにアジア各国がで中国の挑戦を受けているとした上で、「海上での日中船舶の衝突を防がなければならず、経済は弱まってもロシアは軍の配備を広げている。こうした状況で、新しいコンセプトが大事なのではないか。19世紀の中国は14カ国と国境を接していたが、どこの国とも同盟したくなかった。中国が関係を持つのは投資目的であり、中国が強国を目指しても、安定的政権である日米にとっては、より前進出来るいい機会ではないか」との認識を示しました。
米国がとり得る手段とは
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前駐韓大使だったリッパート氏は、マティス米国防長官の「北朝鮮の核を認めず、交渉のテーブルにつかせることが目標だ」との発言を紹介し、「強力な北朝鮮政策を持つには米韓、日米同盟が連携すべきであって、この三極体制で強い圧力を加えるべきだ」と北朝鮮を交渉につかせるというベクトルは合っていると主張。しかし、南北対話、六者協議などすべての交渉を拒否し、まったく交渉に関心を見せない金正恩についてリッパート氏は、「北朝鮮と関係のあったパキスタンの核が、保有を事実上認められたので、そのような形を望んでいるのでは」との可能性を指摘するも、「その最終目標は何もわからない」と北朝鮮に関しては推測の域を出ない曖昧な表現に終始しました。
その上で、米国が取りうる手段として、「封じ込めて、交渉へのプログラムに連れ出し、それがだめなら攻撃」と三段階のプランを紹介しました。
北朝鮮を孤立化させると、地下にもぐりさらに悪国になってしまう
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一方、北朝鮮を監視衛星でウオッチし、マスコミに流している「38ノース」のタウン編集長は、「トランプ大統領はこの脅威を喫緊のものとし、問題を解決することで自分の名声が上がることも考えている。北朝鮮は1990年代から見れば、経済も強くなり、核ミサイル開発の技術も向上してきた。今は米・北朝鮮とも、お互いプッシュし合ってエスカレートしている状況だ」と指摘。そして、余りに北朝鮮を孤立させると、もっと地下に潜り、更に悪人になってしまうのではないかとの危惧を示しました。
加えてタウン氏は、「北朝鮮は他国の通貨と容易に交換が可能な通貨であるハードカレンシーを入手したいだろうが、北朝鮮がどんな制裁を受けても国家崩壊しないのは、苦しむことに耐えるのを得意にしているからだ。北朝鮮が苦しいのは、米や国際社会が制裁をやっているのが原因で、北朝鮮が悪いのではない、という論理なのだ」と、冷静な見方でした。
米国の調査から、トランプ大統領自身が国家を分断していること、
また軍事行動に対して受け入れる米国民が増えてきていることが明らかに
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言論NPOと共に世論調査をやってきたメリーランド大学のテルハニ氏は、これまで米国で行われた様々な調査結果を紹介しました。
それによるとトランプ大統領絡みの返答では、共和、民主両党支持者の間で意見が大きく分かれ、大統領候補時代の米国を見るようだとの見解を紹介しました。具体的には、「北朝鮮問題でのトランプ大統領の手腕に期待しますか」という質問に対して、共和党員の83%が「イエス」と答え、逆に民主党員の93%は「ノー」と返答していること、「世界で最も嫌いな指導者は」という設問には、民主党員の52%がトランプ大統領(共和党員は5%)を挙げ、金正恩(共和党員の23%が嫌い)をも超えて大きくリード、大統領自身の存在が国家を分断していることがわかります。また、「平和解決が失敗に終わった場合、軍事行動を支持するか」との質問では、2003年には47%が支持していたが、今年の調査では58%と半数を超えるまで支持を延ばし、軍事行動に対してより受け入れやすくなっている米国民の存在を指摘するのでした。
残された少ない時間でどういう方針を取っていくのか、早急に議論を進める必要がある
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日本側の西氏は、「北朝鮮の核問題は1990年代初めから起きて、私たちは四半世紀もこの問題とともに暮らしてきた。その間、一番驚いたのは、在日米軍が問題に対処しても、日本は何も出来ないということだった」とそのもどかしさを紹介。その後、2015年に日米ガイドライン(防衛協力の指針)改訂になり、安保法制も成立し国内整備が進んできたものの、「この25年の間に北朝鮮の核ミサイル開発はほとんど完成の域に達し、そのメリットは北朝鮮にあった」と、これまでの経過を回顧しました。「しかし、ここで潮目が変わるかもしれない」と、西氏は聴衆に語りかけます。
「中国が禁輸に乗り出し、米国も独自の制裁をしている。北朝鮮が次の段階に進むには時間がかかり、今回の時間のメリットは我々の側にあるのではないか。ロシアが北朝鮮に寄っていく中で、日本も準備が必要だ。米はICBMを心配しているが、日本はすでにミサイルで狙われており、日米でミサイルの意味は違ってくる。半年、一年、残された時間でどういう方針を採ったらいいか、議論を進めていく必要がある。そうした中でも日米関係がコア(核)になるので、何を、どういう風に考えるか」と問題を提起し、あまり時間がないことを指摘する西氏でした。
5氏の問題提起に引き続き、フリーディスカッションに入りました。
米国は今、北朝鮮問題をどう考えているのか
まず、アメリカ国内、特にワシントンの北朝鮮問題に関する論調が話題になると、パール氏は例えば、北朝鮮に対する経済制裁強化については、上院では98対0、下院では419対1で可決されたというように、他の政治課題では共和・民主両党で全く合意が形成されていないにもかかわらず、ここではコンセンサスができていることを紹介。
一方で、どこまで北朝鮮の能力増強を許すか、朝鮮半島の将来をどう考えるか、中国の役割などといった長期的な問題点では、「ビッグピクチャー」はまだ描かれておらず、まだ議論の余地があるとしました。
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米国側の司会を務めたショフ氏も、特に軍事力の行使については、「議論はまだ初期の段階」と説明。短期的な課題としては偶発的衝突を避けるなど、解決を急ぐべきこともあるが、ICBMによる本土への攻撃など米国への脅威が差し迫っているわけではないので、長期的な視点が必要であると語りました。
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