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アジアのコールセンター、ワーキングホリデー〜劣悪すぎる日本の「労働」から逃げ出す人々〜の巻(雨宮処凛)

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 先週、日本にワーキングホリデー(ワーホリ)で来ているという韓国人男性と食事する機会があった。

 2週間前に日本に来たという30歳の彼は作業服姿。聞けば、仕事内容は日雇い派遣と変わらず、前日まで働く場がわからないという。仕事は、電気工事などの現場仕事。時給は1000円だが、交通費は一切出ない。よって8時間働いても、その日は1400円ほどが交通費で消えたので、日給は6000円ちょっと。その上、3400円の作業服は自腹で買わされ、軍手などの必需品も自分で買わなければならないという。そうなると、作業服を買った日の日給はわずか3000円ほど。

 そんな待遇の上、現場では韓国人ということで差別され、誰も口を聞いてくれず、仕事も教えてくれず、みんなが連れ立って食事に行く昼休みに、彼だけはコンビニで買ってきたパンなどで済ませるという。

共に働く日本人からは、「フォークリフトの免許をとれば時給は1200円になる。そうしたら貧しい国のお前でも家に仕送りできるだろう」などと言われるそうだが、彼は日本語がペラペラで英語もできるエリートだ。韓国にいた時は不動産関係の仕事で月収30万円を稼いでいたという。韓国で月収30万円とは、かなりの額と言っていいだろう。そんな彼が、日本に夢をもってワーホリで訪れたら、この待遇。

 なんのことはない、日本人の日雇い派遣労働者に10年前にやらせていたことを、今は外国人に押し付けているという構造が明らかになったのだった。

 そんなワーホリについて、最近、非常に興味深い記事を読んだ。それは『POSSE』2017年9月号に掲載された「海外でのノンエリート労働は逃げ道にならない!? ワーキング・ホリデーと日本人の国際労働移動」。日本人のワーホリ問題を研究してきた藤岡伸明氏が『若年ノンエリート層と雇用・労働システムの国際化 オーストラリアのワーキングホリデー制度を利用する日本の若者のエスノグラフィー』を出版したことを記念して、POSSE代表の今野晴貴氏と対談しているのだ。

 対談から浮かび上がるのは、2000年代からの雇用破壊、労働のブラック化、貧困化が急速に進んだ結果、海外に逃げ出すように向かう層がいるという事実だ。実際、藤岡氏の2人の兄も00年代前半にワーホリに行っている。英語が話せず、海外で働くようなスキルもないので、労働市場の下層に組み込まれる可能性が高いわけだが、「それでも行きたいという思いを抑えきれない、非常に切羽詰まった状況」だったという。

 このことがきっかけで藤岡氏は自身もワーホリビザを取得し、オーストラリアに滞在。観光施設や日本食レストラン、農業ボランティアなどの現場で働きながら研究を進めてきたという。

 そんなワーホリに行く日本人を見ていくと、「そのまま日本にいたら過労で倒れかねない」男性や、「給料未払いや雇用主との不和といったトラブルを何度も経験して」いるノンエリート女性、「IT関連の激務で燃え尽きかけてワーホリに行った」人などなど、日本の労働市場の閉塞が浮かび上がる。が、ワーホリに行くことが自身のキャリアアップに繋がるかというと、決してそんなことはない。

 仕事は日本食レストランやカラオケ店、CD・DVDレンタル店など、日本人も多く利用する場。「長時間労働を受け入れ、日本語能力が高く、将来性がない仕事でもいい、というような層の労働需要が増加」しているため、そのような仕事はある。

また、オーストラリアには農業従事者の中に、「定住しないで渡り鳥のようにあちこち移動する」、「かなり底辺に近い人たち」がいるそうだが、日本人ワーホリは「その人たちすら働きたがらない果物の収穫や果樹の剪定といった非常に単純な労働」に入っているという。

 そんなオーストラリアの日本人ワーホリの平均時給は主要国のなかでもっとも低く13.6ドル。次いで低いのが韓国人。ちなみにイギリス人ワーホリとの差は5.8ドル。少ない時給で一生懸命働き、権利意識が希薄な日本人ワーホリは、「極限すれば奴隷的な労働への適応力が高い」と藤岡氏は指摘する。

そんなワーホリ経験は、やはりなかなか帰国後のキャリアに結びつかず、ワーホリに行く前は正社員だったのに、帰国後は非正規になるなど、「経済的に下降してしまうことも珍しくありません」。

 さて、ここまでワーホリについて書いてきたわけだが、「日本の労働環境があまりにも劣悪だから海外へ」という流れは、10年ほど前から一部のロスジェネ世代でも起きてきたことだ。

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