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 障害者アートプログラムとアール・ブリュット(3)

2015年10月21日、アール・ブリュットに関心の高い都知事だということで、フランスのジャン=マルク・エロー前首相(2012年5月〜2014年3月在任)がご夫妻で都庁に私を訪ねてこられた。彼の地元はナント市で、市長も務められていた(1989年3月〜2012年6月在任、フランスでは最近まで国会議員と市長の兼職が可能で、多くの国会議員がそうしていた)が、ナントもまたアール・ブリュットへの取組が盛んである。また「ラ・フォル・ジュルネ」というクラシック音楽祭も有名である。

 その後、エロー前首相は、2016年2月に外務大臣に就任したが、その2ヶ月後に来日し、4月9日には、フランス大使公邸で日本のアール・ブリュット関係者のみを招いた晩餐会を主催してくれた。私も、招待されたが、美術との関わりが、都市外交という点でも東京に大きな貢献をしたことは、もっと正当に評価されてよい。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ではないが、美術を巡って投げかけられた私への罵詈雑言は、美術や文化の価値まで貶めるものだとして、内外の美術界で失笑を買っている。

こういう活動がある。私が国会議員のとき、海外から美術品を借り受けて開催される展覧会は、不況による主催者側の体力低下に加え、テロや自然災害などによる美術品保険料の高騰により、回数の減少や規模の縮小、展覧会自体の中止が相次いだ。そこで、この問題に関心のある議員たちが努力し、「展覧会における美術品損害の補償に関する法律」(2011年6月1日施行)の制定にこぎ着けた。

この法律は,政府が美術品の損害を補償する制度を創設することによって,海外等からの美術品の借り受けを円滑にし,展覧会の主催者の保険料負担の軽減等を図り,国際レベルの展覧会や地方巡回展の開催を促進しようとするものである。この法律によって、世界一流の美術品を日本で鑑賞することが引き続き可能になったのである。何度も言うが、複製や美術書ではなく、本物を観ることが大事なのである。

 とまれ、世界に目を向けると、美術をはじめ芸術や文化に無知・無関心な政治家は尊敬されない。ヨーロッパに留学していた若い頃、来訪する日本の政治家があまりにも「非文化的」で顰蹙を買っている現場に通訳として居合わせることが多々あった。同じ日本人として恥ずかしかった。それが私の原点であり、それ以来、自分の専門学問分野を超えて、美術や芸術への教養を深めていったのである。40年にわたるその蓄積を東京のために使おうと決意し、それを都市外交などで実践してきたが、それなりの成果をあげたと思っている。

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