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超優秀な人材が出版社に入るってホント?

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■「これだけいるのだから誰か行くだろう」

早稲田はというと、「これだけいるのだから誰か行くだろう」と出かけてしまって、その集まりは中止になった、と後から聞いた。

早稲田の100周年記念(1982年)の時だったと思う。社のエライさんが大学の理事か何かをやっていたため、講談社の早稲田OBからも寄付を募ろうという話になった。

だが、ほとんど集まらない。エライさんはご立腹召されて「給料から天引きする」といいだした。そうなると早稲田はまとまる。そんなのは憲法違反だなんだと大騒ぎになり、当然だが取りやめになった。

さまざまな経歴を持った途中入社の人間には、社会人を経験した落ち着きがあり世間知があった。週刊現代の記者には学生運動をやり過ぎて就職がない人間たちが集まり、呑むとすぐにけんかを始めた。まさに梁山泊であった。

私もいっぱし「スクープを取る」と、夜な夜な知り合いのブンヤや作家、ライターを誘い出して大酒を呑み、首輪のない猟犬だとほざいて人脈だけは広げていったが、スクープとはまったく縁がなかった。

■「わが社も一流企業の仲間入りができた」

そんな私が編集長になれたのは、講談社も業界もバブル景気に沸いていたからであろう。

講談社は『ノルウェイの森』(村上春樹・88年)、『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子・91年)、『日本をダメにした九人の政治家』(浜田幸一・94年)、『失楽園』(渡辺淳一・97年)、『五体不満足』(乙武洋匡・99年)など次々にベストセラーを出し、95年から97年まで売り上げ2000億円超、粗利で200億円をたたき出していた。

出版界のピークも96年に記録した2兆6000億円超である。あいまいな記憶で申し訳ないが、講談社の応募者に東大生の姿が目立つようになってきたのは、世間のバブルがはじけた93年頃からではないだろうか。

初任給もそれなりによかったが、出版業界が安定成長している業種だと思われるようになってきたのであろう。毎年20人~30人しか採らないが、東大生が早稲田や慶應を押しのけるようになってきた。

経営陣が、多くの東大生が受験に来てくれることで、わが社も一流企業の仲間入りができたと喜んでいると聞いたことがある。

しかし、98年頃から出版業界全体が右肩下がりになる。出版データブックによると、98年は「未曽有の出版不況、いずれも減収減益」、99年は「出版不況3年連続、前年割れが続く」とある。少し遅れてやってきた出版業界のバブル崩壊は壊滅的な打撃を与えながら、今も続いている。

16年度の電子書籍を含めた総売り上げは1兆6618億円。講談社の売り上げ(2016年11月期)は1172億8800万円。ピーク時に比べて、業界全体では1兆円、講談社も800億円減らしている。

私は「東大卒が多くなったから、この業界や講談社がダメになってきた」などというつもりは毛頭ない。私が知っている講談社の東大卒編集者は、みな優秀である。

法学部にいて、マンガがやりたくて入社したI。たぐいまれな語学力を生かして中国や北朝鮮問題を追いかけているK。数々の大ベストセラーマンガを世に出し、独立してマンガ家たちのエージェントをつくったSなど、逸材ぞろいである。

■メーカーや銀行に入るのと同じ感覚

問題があるとすれば、東大生だけに限らないが、ここにいれば一生食いっぱぐれないという理由で、入社してきた者が多いことである。

私が面接官をやっていた終わりの頃から、講談社の他にどこを受けているのかと聞くと、「××銀行と××証券を受けています」と悪びれることもなく答える応募者が年々増えてきた。

編集者という仕事が特殊で難しいものだとは思わない。しかし、今も昔も変わらない3K職場である。昔ほどではないだろうが長時間労働や徹夜は常態になっている。女性も例外ではない。

それでも大手といわれるところはまだいい。中小には、帰りは毎晩終電車、土、日出勤、有給なしという典型的なブラック企業がいくつもある。それは、自転車操業を通り越して、今や「F1操業」といわれる出版界の構造的な欠陥が原因だが、ここでは省く。

こうした環境で生き抜き、出版の屋台骨を支えられるのは、エリート街道を歩んできた者ではないのではないか。もちろん、難関大学を出た中にもそういう人材がいることを否定はしないが、それを見抜く目が採用する側にあるのか、心配である。

私は、2001年に出した『編集者の学校』(講談社)にこう書いたことがある。

「適性も志もなく、メーカーや銀行に入るのと同じ感覚で出版社に入ってきて、馬齢を重ねるだけの編集者の多いことを憂えているのは私ばかりではないはずだ」

講談社の単行本編集者に聞いてみると、年10冊以上のノルマがあるという。まるで1人で月刊誌を作っているようなものである。

上司からの、いい本よりも売れる本を作れというプレッシャーはどんどん強くなる。斬新な企画を考える暇もカネも与えてはくれない。したがって他で売れている本のモノマネ本をこぞって出すようになるのだ。

■読者と同じ目線で考えられるかどうか

藤原書店の藤原良雄店主はこういっている。

「いまの出版危機というのは、編集者の不在に求められるともいえると思います。それこそグローバルに、自分の世界観、歴史観というものをもって企画するのが仮に編集者だとすれば、そういう編集者はいなくなった。出版社がもっと編集者を育ててこなければいけなかったんじゃないかとさえ思います」

さまざまな経験や違う環境、生き方をしてきた人間たちが集まり、切磋琢磨して無から有を生み出す。

もし、講談社や集英社、小学館の経営陣が、東洋経済オンラインの記事を読んで、電通や三菱商事より優秀な人間が来ていると喜んでいるとしたら、この業界に未来はない。

もともと出版というのは机と電話ひとつあれば始められたのだ。あとはひたすら企画を考えればいい。その時一番大事なのは、読者と同じ目線で考えられるかどうかである。偏差値など関係ない。

有名企業といわれ、大きなビルに入り、難関大学からそつのない社員をそろえても、ゴミの山を築くだけである。

(ジャーナリスト 元木 昌彦)

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