- 2017年10月29日 10:08
風前の灯の「高品質日本」のイメージ
2/2◾️団塊世代の老害
中でも、特に(数が多いこともあるのだろうが)、団塊の世代に対して、若い世代からの反発、恨み節が大変多くなっている。例えば、こんな感じだ。
団塊世代の特徴
・説教大好き
・矛盾した事しか言わない
・自分はさて置き。と言う事しか言わない
・相手が反論すると直ぐ恫喝
・派閥大好き
・金に物凄く汚い
・自分の価値観を相手に押し付ける
・自分の言う事を聞かないと直ぐ排除しようとする
私は人間的にすばらしい団塊世代の人達を沢山知っているから、このような事例を出すことは身が縮まる思いだが、若年世代の多くがそのように感じていることは認めざるをえない。それに、私自身何度も悩まされた「質の悪い団塊世代」について言えば、なまじ成功体験があるからかもしれないが、自分の意見や価値観を絶対と信じてしまい、他の世代より柔軟性に乏しいと感じることは確かだ。だから不幸にして、「質の悪い団塊世代」が跋扈した企業では、まさに辞書的な意味*2での老害が、組織内に蔓延ってしまうことになる。
◾️若年老害と大企業病
しかも、評論家の常見陽平氏が指摘するように、この老害は今では多くの企業の組織の中で下方にまで浸透していて、「若年老害」としか言いようがない現象となって現れている。常見氏によれば、次のような特徴が典型例として見られるという。
自分の小さな成功体験を大きく語り、俺は若い頃凄かったと言い出す(伝説になるのが早すぎ)
『俺の頃は……』と自分の新人時代を語りだす(勤務し始めて数年であるにも関わらず)
企画書の書き方を細かく指導する(自分のパワポ技の凄さをアピールする。一方で後輩が色やフォント、アニメを使いすぎると叱りだす)
自分も成長しなくてはいけない立場なのに「あいつも成長してきたな」的な話をする。
こうなると老害というより、企業文化自体の問題であり、そこにいる若手(劣化した若手というべきだが)がどんどんその文化に染まって、老害を再生産しているということになる。これを称して「大企業病」と呼ぶことも可能だろう。
このような「大企業病」に対しては、本来、それぞれの企業の若年層や中途入社者等、自社の文化に染まっていない、あるいは他社の文化を知る人材による改革がボトムアップで起きて来るべきではあるが、今でも特に日本の大企業では「終身雇用」「純血主義」の文化は残っており、よそ者の改革は内容の如何に関わらず排除される傾向にあるし、問題意識を持つ若年層も問題を社内で口にするより「忖度」するほうがメリットがあると思えるようなシステムになっている。
この文化を嫌気して、会社を離脱する人は昨今では少なくないが、長期的に考えて、その企業に終身で勤めることよりメリットがあることはほとんどない。新進のベンチャー企業や外資系企業はやりがいと大きな成果を得ることができる可能性はあるが、その分競争も厳しく、脱落してしまう恐れもまた大きい。総合的には日本的な大企業に終身で勤めることは(ぬるま湯であるとしても)、少なくともこれまではメリットが大きかったことは認めざるをえない。
◾️日本企業に決定的な敗北が迫る
だが、これも企業が生き残ることができることが前提だが、どうやらそうもいかなくなってきている。足元が大きく揺らぎ始めている。1992年と2016年の株価時価総額トップ50社を比較すると、1992年の時点では時価総額世界トップ50に日本企業が10社ランクインしていたが、2016年ではトヨタ1社のみとなってしまった。この期間、世界中の株式は大きく上昇しているが、(トヨタ以外は)日本のみ株価が上昇していないということになる。
これと比較して、躍進著しい中国企業は、テンセント/アリババ/4大銀行をはじめ多くの企業がトップ50にランクインしている。トップ10を見ると、2016年には、1992年にはトップ50にも入っていなかった、アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾンドットコム、フェイスブックがランクインしている。いかに日本企業が成長せず、新しい企業を生み出していないかがわかる。
時価総額上位企業(1992年と2016年) / グローバルでは大きな変化、日本は同じ顔ぶれ - ファイナンシャルスター
新しい企業という点では、未公開で時価総額が10億ドル以上の企業は「ユニコーン企業」と呼ばれるようになったが、Sage UK社がまとめた調査結果によると、最新のユニコーン企業数は、アメリカ144社、中国47社、インド10社などとなっている。残念ながら日本のユニコーンは1社だけだ。
世界のユニコーン企業に共通する13の事実 - Onebox News
ユニコーン企業のような急成長ベンチャー企業を「創造的破壊企業」と呼ぶことも一般化してきている(Uber、Airbib等が典型例)。日本企業に限らず、図体だけ大きくて動きが鈍い恐竜のような大企業は動きが鈍く、俊敏で鋭い牙を持った哺乳動物=「創造的破壊企業」の餌食になりつつある。
昨今では、この個別の創造的破壊企業をM&A等で飲み込み、超巨大化して猛威を振るうGoogleやAmazon等のようなIT企業自体が、おそるべき破壊者として君臨しつつあるが、実際、先んじてそのような競争にさらされた日本のエレクトロニクス産業は惨敗した。そして、同種の競争の局面はさらに広がりつつあり、今後それがもっと大きく広がることは確実視されている。
例えば、IT技術を使った新たな金融サービスである「フィンテック」については、昨今日本でも法制度を整備したり、銀行等の投資額も急増しているが、国際会計事務所大手のKPMGとベンチャー・キャピタルのH2 Venturesが作成する「2016 フィンテック100 - 最も成功しているグローバルなフィンテックイノベーター」を見ても、アメリカが35社、中国が14社ランクインしているが日本企業は1社も入っていない。このままでは、ますます日本企業は成長できず、新分野も開拓できず、創造的破壊企業の恰好の標的となってしまいかねない。
「ビジネスモデル革命」に中国が成功し、日本が乗り遅れる理由(野口 悠紀雄) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
最近では、すっかりAIブームということもあり、これから仕事の大半はAIが肩代わりする、という議論もにぎやかだが、様々な技術進化の成果と共に、ビジネスモデルも劇的な変化を余儀なくされることは確実だ。いずれにしても今は歴史的転換点にあり、1992年から2006年に至る変化をはるかに上回る激変が予想されている。今のままでは、日本企業は決定的な敗北を喫してしまうだろう。
◾️真の危機を見据えた対策を
ずいぶんまどろっこしい文章になってしまったが、神戸製鋼のような会社が、現場改善にだけに頼る「品質」頼りというのでは、従来の栄光を維持できるどころか、創造的破壊企業の恰好の餌食となってしまうだけだ。
今起きている目前の危機にパッチワークのようなその場の対処をするのではなく、根本的な構造変革のきっかけとしなければ、結局、絶滅した恐竜の後を追うことになりかねない。よって今回の日本ブランドの危機の背後の真の危機を見据える機会として、災い転じて福となすではないが、痛みを覚悟の上で改革に着手する企業が増えることを願いたいものだ。
*1:
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*2:「老害」を辞書で調べてみると、次のように表記されている。「企業や政治の指導者層の高齢化が進み、円滑な世代の交代が行われず、組織の若返りがはばまれる状態」(大辞林)「企業や政党などで、中心人物が高齢化しても実権を握りつづけ、若返りが行われていない状態」(デジタル大辞泉)
- SeaSkyWind
- IT関連ビジネスを中心に思想などを社会学等文化系の語り口で



