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選挙と財政

 先の総選挙では落選しました。得票、惜敗率とも前回より伸びていましたが、小選挙区のみならず、九州沖縄比例ブロックでも引っ掛からないくらいの惨敗でした。多くのお支えいただいた皆様に感謝申し上げます。

 これで一私人となりましたので、少し今回の総選挙で感じたことを書いていきたいと思います。私はかねてから日本の財政の継続性について強い危機感を持ってきました。このままだと日本の財政は2025年までには確実に持続性を失うという危機感です。

 まず、内閣府の中長期経済推計では、経済成長シナリオ(最も楽観的な成長率)ですら、2025年以降はGDP比での国の借金は拡散します(正確には、我々が何度要求しても2025年以降のデータを出さなかったのです。拡散するからです。)。しかも、そのモデルの楽観的な成長率はこの5年、一度も実現出来ていないような水準です。普通に考えれば、東京オリンピック後、2025年より前に持続的でなくなる時が来そうです。

 こういう事を言うと、大体、色々な反証を出してこられる方がいます。その大半は「ええじゃないか運動」みたいなものです。

● 国民の金融資産は国の借金より多い。

 国民の金融資産が、国の借金より多いというのが何の指標になるというのか、私にはさっぱり分かりません。いざとなったら、国民がすべての財産を差し出して、国の借金を返済するという事なのでしょうか。それこそ意味の無い想定です。もっと言えば、そんな比較をしながら無理筋の納得をしなくてはならないくらい日本の財政は危機的だという事です。しかも、その金融資産増は、日本銀行やGPIFによる株価維持策でなされているとしたら論外です。

● 国の資産はかなり多い。

 たしかにかなりの資産があります。それでも純債務残高は、世界最悪の大幅な赤字です。更に国の資産は売れないものがたくさんあります(年金積立金等)。そもそも、国の資産が積み上がって、負債と帳消しに出来るという発想は、畢竟、無駄な箱物を作って資産に計上しても何ら問題ないという結論になります。大幅な赤字の上、今持っている資産に売れないものが多いのであれば、あまりその比較は意味がありません。太平洋戦争末期に、「国の借金はたくさんあるけど、うちの国には戦艦、軍用機が資産としてあるから大丈夫。」というのと大差ありません。

● 政府と日本銀行の収支を合算して統合政府で見れば何の問題も無い。

 こんな最低の議論を平気でする人間が跋扈する事、そして、それを信じる有識者がいる事に、私は懸念を持ちます。これは国が幾ら借金をしたとしても、それを日本銀行が賄う限り、何の問題も無いという事になります。この理屈が正しいのであれば、5000兆円くらい国が借金をして、それをすべて日本銀行がお札を刷って賄えばいいのです。さすがにそれを是とする人はいないでしょう。私は統合政府論者に「1000兆円(現在)ならOKで、5000兆円ならダメだとすると、何処かで限界値があるはず。それは何処か?」と聞いた事があります。勿論、答えはありませんでした。日本の財政の議論で「統合政府」という言葉を口にする人は絶対に信用してはなりません。

● 日本銀行が持っている国債を帳消しにすればいい。

 時折、こういうトンデモ論を展開する人がいます。日本銀行にも勿論バランスシートがあります。勝手に国債を帳消しにしてしまったら、例えば、銀行が日本銀行に預けている超過準備については、見合いの資産がなくなってしまうことになります。市中の銀行のバランスシートが瞬間に悪化して、即預金封鎖でしょう。

 そもそも、今の国の債務残高はGDP比250%、太平洋戦争終戦時とほぼ同じです。戦後、日本経済に何が起きたのかを考えれば、「ええじゃないか運動」をするだけのゆとりはないはずです。上記の様々な議論の中に一切含まれていない要素があります。それは「円(や日本経済)への信任」です。これは指標化できないので、経済モデルに組み込みにくいのです。

 今の日本経済は、積み木崩しみたいなものだと思っています。かつて、強固に積み上げた積み木を一本ずつ抜きながら当面の飯を食っているという感じです。最初は三本ずつ縦横に積み上げられていたのですが、一本抜き、二本抜きと、今は各段に一本の積み木があり、それを十字にしながら何とか積み木の段を維持しているようにしか見えません。今は積み木の段が維持できているので問題を実感することはありませんが、いざ崩れるとガタガタッと行きかねません。

 そうなってしまったら、円の信頼が崩壊します。その時はハイパーインフレが有力だと思います。太平洋戦争後、色々な経済政策が打たれましたが、結局一番強烈な調整機能を持ったのはハイパーインフレでした。ハイパーインフレだとすると、国民の資産を著しく減価します。特に資産を大量に保有している高齢者を強くヒットします。ハイパーインフレが来ないとしたら、強烈な緊縮、重税国家で緩やかに調整していくしかありません。どちらかしか無いでしょう。

 そうさせないためには、絶対に財政再建に真面目に取り組むべきです。今回の総選挙、消費税の使い道を財政再建ではなく別の事に使うとか、消費税増税凍結とか、色々な案が出ました。これらはすべて、「孫子(まごこ)のポケットにどれだけ手を突っ込むか」を競い合うゲームです。例えば、消費税の使い道を見直し、真水(新規の充実分)に当てる部分を増やすという案ですが、消費税の増税分は①新規の充実分、②年金を借金でお支払いしていることの埋め合わせ、③借金返し、④高齢化による負担増、⑤消費税増税に伴う負担増にそれぞれ1%ずつ充てる事にしています。仮に①を増やすとするなら、②~⑤の内のどれかを断念するという事です。これらはすべて孫子のポケットに手を突っ込みます。そして、財政をどんどんと危うくしていきます。

 もう、日本は「ええじゃないか運動」に耳を貸している時間はありません。こんな時に、すべてバラ色の未来予想図を言うような人が信頼できるはずが無いのです。それは国民各位が薄々、しかし確実に感じておられる事でしょう。

 最後に。「そう思っているなら、国会でやればよかったじゃないか。」というお声があると思います。言い訳がましくなりますが、間接的には何度かやっています。ただ、現職議員としては言い難かった部分があります。その上でご批判があるのであれば、甘受したいと思います。

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