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欧州債務危機〜「最後の砦」でもあり「最大の難関」でもあるドイツ

ドイツは欧州債務危機の「最後の砦」であり、問題解決に向けての「最大の難関」である。

23日に実施されたドイツ10年債入札で、募集額 60億ユーロ(約6200億円)に対し応札額は38億8900万ユーロにとどまった。 これまでも入札で応札額が最大目標に達しない「技術的札割れ」はあったが、欧州債務危機の「最後の砦」と思われていたドイツの国債入札で、発行予定上限を 35%下回る「札割れ」が起きたという事実は、金融市場に大きなショックとして迎えられた。

11月7日に実施されたEFSFの10年債入札でも「札割れ」が起きたことが指摘(EFSFは否定)されており、欧州の「資金調達難」が鮮明になって来た。欧州「最後の砦」であるドイツやEFSFで「札割れ」が起きた位であるから、他は推して知るべしといったところ。

25 日にはイタリアの国債入札が実施された。6カ月物国債と2年物ゼロクーポン債の入札で、目標の100億ユーロを調達したものの、6カ月物入札利回りは前月の3.535%に対して6.504%、2年物ゼロクーポン債の入札で利回りは前回の4.628%に対して7.814%と、調達金利は大幅に上昇する結果となった。

入札金利の大幅上昇を受けて流通市場でのイタリアの2年債利回りは8%を超え、ユーロ導入後の最高水準を更新。7.3%まで上昇した10年債利回りをも上回る、「債務危機下の長短金利逆転現象」が起きた。「債務危機下の長短金利逆転現象」は、金融市場が、イタリア財政が10年持ち堪えることよりも、近い将来デフォルトに陥るリスクの方を高く見積もっていることを表したもの。

欧州債務危機の「最後の砦」となる筈であったドイツの国債入札における「札割れ」。これは、欧州債務危機の問題解決に必要な「資金調達」が困難を極めていることを示したものである。金融市場は、「資金調達」が出来ない限り、現在の欧州債務危機に対する有効な決策が存在しないことを強く意識し始めている。

それは、金融市場が期待している「過去の経験に基づいた穏健な政治的解決策」をドイツが受け入れようとしていないことにも原因がある。

11 月14日に開催されたドイツ与党キリスト教民主同盟(CDU)の党大会で、ユーロ危機の重大さについての認識を明確にし、「ユーロが挫折すれば、欧州も挫折する」と語ったメルケル首相。ユーロの結束を強く訴える一方で、債務危機にECBが直接的に関与することも、IMFを通して関与することにも頑なに反対する姿勢を見せている。国内に向けて「ユーロが挫折すれば、欧州も挫折する」と主張するメルケル首相も、海外ではドイツが欧州債務危機の「最後の砦」になることを頑なに拒否して格好。

ユーロが債務危機を脱するための資金を獲得する方法としては、ユーロ圏以外の国、要するに中国を中心とした新興国から「資金調達」するか、ECBが債務危機国に直接財政支援を行う、即ち「輪転機を回す」か、のどちらかしかない。

イタリア国債の利回りが8%前後まで上昇してしまった今となっては、ユーロ圏以外の国からの「資金調達」は極めて難しい。そもそもEFSFが資金規模を現状の4400億ユーロから1兆ユーロまで拡大する計画を立てたのは、イタリアやスペインが財政危機に陥った場合、4400億ユーロでは対応出来ないからである。

イタリアやスペインまで財政危機が拡大してしまった今となっては、EFSFへの資金を出す国は、始めから「元本毀損リスク」を負う格好になってしまう。どこの国にとっても、自国の税金を、始めから「元本毀損リスク」の高い欧州債務危機の支援に投入することが「国益」に適わないのは同じ。

従って、ECBが「輪転機を回す」というのが、善悪は別として、最も即効性のある現実的対策になる。しかし、ドイツはECBが財政危機に陥った国の支援において中心的な役割を果たすことに強く反対している。ドイツの主張は、財政規律を守り、監視する仕組を作ることで通貨ユーロの信頼を取り戻そうとする「平時の建前論」。

欧州債務危機の「最後の砦」であるドイツの同意を得られない政策は、全て「絵にかいた餅」に終わる運命にある。一方、ドイツの主張に沿った「平時の建前論」では、財政危機に直面している国が財政破綻に追い込まれることは見えている。そしてそれは欧州のみならず世界経済に大きな打撃を与えることになる。

ECBが債務危機の拡大を食い止める程度に「輪転機を回し」、中国を中心とした欧州域外からの「資金調達」を可能にする道筋をつけ、問題解決の「見せ金」を用意することが出来ない限り、欧州の財政危機は行くところまで行ってしまいかねない状況にある。

問題は、中国がEFSF債の購入やIMFへの出資拡大という形で、欧州への影響力を高めることを米国が黙って認めるかである。米国債の最大の保有者である中国が、今回の欧州債務危機解決の最大のスポンサーになるとしたら、中国は欧米に対して極めて大きな発言力を持つことになる。

米国のガイトナー財務長官は15日、「欧州債務危機の解決に向け最も重要な役割を担うは、欧州中央銀行(ECB)や国際通貨基金(IMF)ではなく域内各国政府だ」という考え方を示し、米国自身が財政問題を抱えて主導出来ないなか、他国が欧州域内で影響力を高めることを警戒する姿勢を鮮明にした。

「投資銀行」のレバレッジを効かせたビジネスが限界点に達して起きたリーマン・ショック。「投資銀行」の膨らませ過ぎたバランスシートの受け皿を担ったのが「国」。「国」は「財政支出」を膨らませることでリーマン・ショックを乗り越えた。しかし、ここに来て膨らませ過ぎた「国」のバランスシートが元凶となって「財政危機」が生じてしまった。そして、膨らませ過ぎた「国」のバランスシートを守るために、米国と英国を中心に「中央銀行」がバランスシートを膨らませて来ている。

「投資銀行」「国」のバランスシート拡大に限界が見え始めた今、「中央銀行」がバランスシートを膨らませて支えることが正しい政策なのかは意見の分かれるところである。「投資銀行」「国」「中央銀行」がバランスシートを膨らませた後、その「出口」となる主体が見当たらないからだ。

欧州債務危機の「最後の砦」となっているドイツは、「中央銀行」のバランスシート拡大による問題解決を望む欧州各国や金融市場にとって「最大の難関」ともなっている。

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