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年収600万円未満の夫は専業主婦の妻に「好きの搾取」をしている?

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白河桃子X是枝俊吾対談「年収600万円未満の夫は専業主婦の妻に『好きの搾取』をしている?」

エコノミストの是枝俊吾さんと新刊「『逃げ恥』にみる結婚の経済学」を上梓しました。大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の「主婦の給料月19.4万円」は妥当? 年収別家事育児分担表つき!

【1】少女マンガに描かれた一味違う「契約結婚」

●白河 いやー、ついに完成しましたね。私たちが「逃げ恥」への愛とリスペクトをこめてつくった本が……。

●是枝 私は小学生時代からの少女マンガファンで、今でも「逃げ恥」掲載誌の「Kiss」(講談社)を愛読しています。「逃げ恥」のドラマ化が決定した際には思わず興奮してしまいました!

●白河 私も少年少女マンガ含めてかなりのマンガ読みで、マンガの書評もするほどなのですが、是枝さんがそれほどマンガ好きとはびっくりしました。

●是枝 「逃げ恥」の海野つなみ先生も以前は「なかよし」で連載されていた作家。このほか、「りぼん」で連載されていた谷川史子先生や高須賀由枝先生など「Kiss」は、1990年代に少女マンガを読んでいた人に馴染みのある作家が数多くいます。

●白河 私は「花の24年組」※からのマンガ愛読者なので、じつは年代がちょっとずれています。でも、少女マンガは世代を超えて語り合えるものですからね。

※「花の24年組」昭和24(1949)年前後生まれで、1970年代に少女マンガに革新をもたらした女性マンガ家たちの総称。代表的な作家に、萩尾望都、竹宮惠子、大島弓子らがいる。

●是枝 少女マンガにおいて、「契約結婚」はいくつか出てくるのですが、すごいお金持ちの家に嫁ぐような話ばかり。それを普通のサラリーマン家庭でやっても面白いのではないかというところから、「逃げ恥」は生まれたそうです。

●白河 さて、今回は「逃げ恥」とそこで描かれた「契約結婚」を題材に、昭和結婚でまるっとひとくくりになっていた、愛、お金、家事、子育て、などの、結婚の要素を徹底的に因数分解し、新しい夫婦やパートナーとの関係を再構築してみたい。そんな野心的な本です。エコノミストでイクメンの是枝さんが、これまで私がモヤモヤしていた、家事や育児、お金について、欲しい数字をドンドン出してくれました!

【2】専業主婦の労働は月給19.4万円の価値があるけれど……

● 白河 私は、「女性が食いっ逸れないこと」をテーマにしているので、過去の本でもずっと「とにかく働こう」と言ってきました。しかし是枝さんとこの本を書かせていただき、目からウロコが落ちたことがある。それは、無償労働の経済価値を女性自身が知らないことです。まずは「これだけの価値があるんだ」と「見える化」してほしい。そして自信をもってほしいんですね。なぜか日本の女性は自己効力感が低い人が多い。私なんかというセリフをよく聞きますが、私なんか・・・ではなく、すっごく価値があるのですよ。

●是枝 数字もそうなのですが、まずドラマを見て、平匡の生活ぶりが激変したことに気づいたのではないでしょうか。外食やコンビニ弁当ばかりだった食生活は、三食手作りの健康的な料理になり、ベッドシーツも毎日洗濯してきれいに。ホテルで暮らすような生活に一変して、これに「価値がない」わけがないですよね。月給19.4万円という数字はマンガには登場せず、ドラマにおいてはじめて持ち出されたものだったのですが、これがまたいい数字でした。

●白河 女子大生と座談会をしたら、就活がうまくいかない女子大生たちは、これだけもらえるなら専業主婦がいいと言いだしているそうですが……。ところがどっこい。これだけ家事にお給料を払えるリアルな平匡さんには、ほとんどお目にかかれないのです。

●是枝 みくりの月給19.4万円は、子どものいない専業主婦の働きとしては、フェアな金額です。計算の根拠については本で詳しく述べていますのでそちらを見ていただくとして、専業主婦にフェアな対価を支払うためには、夫の年収は約600万円が必要になるという……。

■ 図 みくりの給料はこうやって決まった!

●白河 実際に妻にそれだけ払える男性がほとんどいないところが、婚活を難しくしています。600万以上稼ぐ独身男性はとても少ない。

●是枝 30代なら10人に1人の割合ですね。まったくいないわけではないところが、「もしかしたら」とか「私だったらなんとかして」と思ってしまうところなのでしょうか。

●白河 本当は、10人に1人の年収600万円の独身男性を奪い合うよりも、女性も働き続けることを前提に夫婦合計で年収600万円を目指す方が結婚への近道なのですが。

●是枝 とはいえ、現実の家事分担は妻に偏っていますよね。妻が働いて収入も得る一方で、家事育児もほとんどやることになるのでは割に合わないですよね。

●白河 男性の家事育児時間はだんだんに上がってきてはいますが……未就学児を持つ父親の1日の家事育児時間の平均は1時間程度です。しかも、これはあくまで、すごいイクメンの人も含めた平均で、日本の夫の7~8割は、妻が働いていてもいなくても、まったく家事や育児をやっていないのです(総務省「平成23年社会生活基本調査」より)。

【3】もしも妻にワンオペ育児の対価を払うとしたら夫は年収1250万必要!?

●白河 今、形の上では男女共働きが多いのですが、まったく「共育て」ができていない。今後は「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ、「ワンオペ稼ぎ」から「チーム稼ぎ」に変わっていかないと、結婚する人なんて増えないと思うのですが、家庭内は未だ「昭和」。だからこそ、みくりの「好きの搾取」というセリフがみんなに響いたのだと思います。

●是枝 最初は「契約結婚」で家事の対価をきっちり決めていたのに、恋愛感情が生まれて、「籍を入れた結婚」に移ろうとしたら、今度は家事の対価はタダになる? そんなおかしな話はないですよね。ただ、平匡がわざわざ家事をタダにするという話をしてきたところは、裏があって、二人に子どもが産まれた場合、育児の対価もきっちり計算すると、とても平匡には払いきれないからなのです。

●白河 そう、問題は子どもが生まれてからですね。ブラック労働、最低賃金以下になる可能性も高い。みくりも「残業代ゼロ法案」と反対しています。

●是枝 実際に未就学児を育てる専業主婦の家事・育児の「労働時間」は週61.7時間で、これは、月当たりの残業時間が86.8時間にあたる「ブラック企業」並みの働きぶりです。

●白河 私が逃げ恥の話をツイートしていたら、フォロワーさんから、「ワンオペ育児の対価は?」と聞かれたので、それも是枝さんが算出してくれています。

●是枝 未就学児のいる専業主婦世帯で、もし仮に家事育児の対価をきちんと払うとすると、夫の年収は1,250万円必要になります。ただ、これは夫の年収が1,250万円以上であればワンオペでもいいということではありません。

●白河 あくまで夫がいくら稼いでいようと、子どもは二人の子どもなので、子育ては共同責任です。しかし理不尽なワンオペが多すぎるので、あえて出しています。この本は奥さんにワンオペさせている夫は、奥さんに読ませない方がいいですね……。ブラックなのがバレてしまう。

●是枝 今の日本の法律では(36協定があれば)残業代さえ払えば、企業は労働者を無限に働かせることができてしまいます。それではダメだろうということで、白河さんもメンバーになった「働き方改革実現会議」にて、法律で残業時間の上限を定めようということになりました。家事育児にも時間の上限が欲しいところですよね。

■図 妻が専業主婦なら夫はどのくらい家事・育児を分担すべき?

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