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女性は労働市場でも日本の救世主になるかもしれない

政府が厚生年金や国民年金の支給額を2012年度から段階的に引き下げる方針を打ち出し、高齢者は怒りに震えている。これは過去の物価下落時に支給額を下げなかったために、払いすぎになっている特例水準を本来水準に戻すための当然の措置である。金融危機以降、物価は大幅に下落し、11年度は支給額と本来水準との差は2.5%にまで達している。少子高齢化によって支え手が減り、年金財政は高齢者に対する給付抑制と現役世代に対する保険料の引き上げを行なわないと立ち行かなくなってきている。これまでの年金改革では保険料引き上げのみが行なわれ、現役世代の負担感は強まるけれど、受給者に対してはデフレの影響で実質的に受給額が増加しているのだ。果たしてこのような不公平感が高まる状態で、社会保障に手をつけずに増税だけを行なうということで理解は得られるのだろうか。

世間はデフレを悪者として捉えているけれど、僕は常々「福の神」だと思っている。確かにデフレ状態が継続すれば、日本の大企業は売上が伸びずに困ることになるかもしれない。だけど個人という側面で見るとそれほど悪いことばかりではないのだ。仮にインフレ率が大きく上昇すれば、銀行に預けている預金はその価値が目減りし、僕達の給料はインフレ率ほどには増えないだろうから、実質的な収入は減少し、生活レベルは低下することになる。日本の企業は大抵年功序列制度を採用している。この制度に無理があることは、これまで何度も述べてきたけれど、通常の社会人の場合、年齢を重ねるごとに給料が増えて豊かになっているのだ。

年金問題が世の中を賑わし、政治家が慌てふためいているけれど、こんなことになることは初めから分かっていたことだ。日本は急速に少子高齢化が進み、ついに2011年の日本の出生率は1.3人にまで落ち込んでいる。これは多くの人にとって、高度成長期のように将来に明るい希望が持てなくなって、子供を産むことがリスクになってしまっていることが1つの原因かもしれない。労働力不足を補うために移民政策という方法もあるけれど、僕はいまこそ日本の優秀な女性の手をかりる時がきたのではないかと考えている。

[画像をブログで見る] (出所:総務省「労働力調査」及びOECD資料より筆者作成)

これは2010年の女性の年齢階級別労働力率を表している。日本では20歳代後半から30歳代にかけて比率が低下し、カーブが全体としてM字型になっていることが大きな特徴である。こうしたM字型カーブが見られるのは、アジアでも韓国だけである。台湾でも昔はM字型カーブが見られたけれど、今では見られなくなっている。結婚・出産・育児等のために、労働市場からいったん退出し、その後落ち着いたら再び復帰するという日本女性労働者の特徴が読み取れる。これは欧米諸国でも70年代には見られた現象だけど、現在は綺麗な台形型を描いている。

[画像をブログで見る] (出所:総務省HP、ILO LABORSTAデータベースより筆者作成)

これは就業者に占める女性の割合を国別に表示したものである。全体としては90年から08年にかけて上昇傾向にあるけれど、日本は主な先進諸国のなかで女性の割合が最も低いことが読み取れる。これは出産育児のために途中で労働市場から退出することによって、女性の労働率が低下するというM字型カーブがあることが要因の1つになっていることは間違いない。

日本の女性就業率は向上する余地が十分にあり、中途採用機会の拡大、仕事と家庭の両立支援などを通じた構造的な問題解決が求められる。また高齢者、特に男性の高齢者の就業率が、日本は他国と比較して高いことも女性の人的資本が無駄になっている要因として挙げられるかもしれない。

とりわけ女性はフルタイムの就業よりもパートタイムの就業が多い。これは妻の収入に対する税金の控除額が、フルタイムの就業の足枷になっているに違いない。税金の控除額の範囲内で働くというインセンティブが経常的に存在し、フルタイムではなくパートタイムという選択になってしまうのだろう。

僕は日本の女性たちの能力がいかに生かされていないかということを常日頃から感じている。外資系企業には能力の高い女性が多く存在し、企業の利益や国の税収に大きく貢献している。これはもともと外国文化での生活経験がある人が多い為、働くということについて積極的なことが考えられるし、企業側の制度体系が充実していることも要因としてあげられるだろう。

これはあくまで個人的な意見になってしまうけれど、若い頃に海外での生活経験がある女性はバランス感覚も優れていて、一緒に働きやすい人が多い。生粋の日本人女性と比較してもその差は顕著であるように思う。海外在住経験がない人はどこか男性に対して遠慮がちになるか、極端に敵視して対決姿勢をあらわにするような人が目立ち、日本社会の構造的問題が見え隠れしている。あくまでも割合の問題であって、当然そうでない人も沢山いるけれど。

2010年の35歳から44歳までの非正規雇用者の比率を見ても、男性が8%程度なのに対して、女性では5割を超えている。いったい日本全国で、どれほどの才能が使われないで浪費されているのだろうか。確かに移民政策は日本の労働力不足を解決する1つの手段かもしれないけれど、僕は日本文化の肌に合わないような気がするのだ。島国で単一民族という日本の特殊事情を考えると、海外のように移民を受け入れることに抵抗感があることは容易に理解できるし、何より日本の社会構造的欠陥を見直すことが先決であろう。

日本国の税制や社会保障制度は会社に強く依存しており、国家はその莫大な財政赤字をサラリーマンにたかることによって埋め合わせをしようとしている。こうした方針は、きっとこれかも変わることがないだろう。年金減額も決めることができず、膨張するばかりの社会保障費はいまにも破裂寸前だ。なでしこジャパンが夢をあたえてくれ、日本に金メダルをもたらしてくれたように、女性に企業戦士としても頼らなければならない時がきたのかもしれない。

参考文献

こんなに使える経済学―肥満から出世まで (ちくま新書)
労働市場改革の経済学 安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方 (中公新書)
年功序列制度から脱出したら日本の未来は意外と明るいかもしれない リベラル日誌

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