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「アベノミクスで格差拡大」は本当か?

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ⓒJapan In-depth 編集部

山口一臣(「THE POWER NEWS」主宰)

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安倍政権の5年間で人々の生活はどうなったのか。「格差がより拡大した」「いや、格差拡大は改善された」、「可処分所得が増えた」あるいは「減った」、「雇用が増えた」「いや、数は増えたが質が低下した」、「貧困が減った」「貧困はむしろ拡大している」……などなど、先の総選挙ではアベノミクスの暮らしへの影響について真逆の言説が飛び交っていた。与党は「改善」の実績を主張し、野党は「改悪だ」と批判する。いったいどちらの言っていることが正しいのか。

代表的な言説である「アベノミクスで格差が拡大」は本当かどうかのファクトチェックを試みた。結論から言うと、単純に評価できないことがわかった。とりあえず「不正確」のレーティングを当てはめたが、厳密には「不正確と言えないまでも、正確とは言い難い」といったところだろうか。なぜなら、統計上の数字は万能ではなく、「格差」の基準も多様で、読み方によってさまざまな解釈が成り立つからだ。もしかすると、この種の言説はファクトチェックには馴染まないかもしれない。

所得格差を表す指標としてもっともよく参照されるのが「ジニ係数」と「相対的貧困率」だ。まずは「ジニ係数」について考えてみよう。

「ジニ係数」は世帯所得の分布から格差の大きさを測る指標だ。0~1の範囲で表され、0に近いほど格差は小さく、1に近いほど大きいことを示している。日本では、厚生労働省の「所得再分配調査」や総務省統計局の「全国消費実態調査」などが、それぞれ独自にジニ係数を調査・発表している。

厚労省のジニ係数は3年ごとに発表され、最新の調査は2014のものだ。それによると、同年の当初所得のジニ係数は0.570で、前回調査(2011年、第2次安倍政権発足は2012年12月)の0.554と比べると、確かに上昇している。

ここだけ見ると、「格差が拡大している」ことは間違いない。ただ、ジニ係数自体は実は1980年代から一貫して上昇を続けている(1981年は0.349、2002年は0.498…)。つまり、アベノミクスが「原因」で格差が拡大しているのかどうかは、この数字の推移だけで断定することはできない。(注1:平成26年 所得再分配調査報告書」厚生労働省政策統括官(総合政策担当

さらに厄介なのは、当初所得から税金と社会保険料を控除するなどした再分配所得のジニ係数というのがあって、これを見ると2011年の0.379に対して2014年は0.376とほんのわずかだが、格差が縮小していることが読み取れる。当初所得の格差は拡大傾向にあるが、再分配システムがうまく機能しているということだろう。

ただし、この再分配所得のジニ係数も80年代から上昇し、1999年以降はほぼ横ばい傾向にある。2008年は2014年と同じ0.376だった。つまり、2011年から2014年にかけて再分配所得のジニ係数が小さくなっているからといって、「アベノミクスのおかげで格差が縮小」とまでは言えない。

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ちなみに、総務省によるジニ係数も細部での違いはあるが、おおむね似たような傾向を示している。(注2:平成26年全国消費実態調査総務省統計局)

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