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欧州共同債はどんぶり勘定債

 株価が落ちました。何故? とうとう危機がドイツにまで及ぼうとしているから。

 ドイツに何が? ドイツが国債の入札をしたところ、応募が満額に達せず、札割れ(ふだわれ)が 発生したのだ、と。つまり、ドイツの国債でさえ人気が落ちているというのです。その証拠に、これまでは、ドイツ国債の方が英国国債よりも利回りが0.3%ポイントほど下回っていたのが、ついに逆転してしまったのだ、と。

 ということで、今回も震源地は欧州ということになるのですが、どうにかならないものなのでしょうか?

 メルケル・サルコジ・コンビに今回、マリオが加わって‥仲の良さをアッピールしているのですが、 なんという手際の悪さ。というのも、仲良く見えるのは表面だけで、言っていることには大変な差があるからです。

 今回もまた同じ。欧州危機を何とか食い止めたいということで、またまた欧州共同債構想が浮上しているのですが、それに対して、ドイツは聞く耳を持ちません。そんなことをしても効果はない、と。それよりも債務国側がもっと緊縮財政に努めるべきである、と。

 まあ、そういう頑なな態度をドイツが取り続けると、どうしてもドイツは分が悪くなるというものです。 「ドイツも、自分の国のことだけを考えるのではなく、全体の利益を優先してはどうか?」なんてことを言う人も多いのです。

 では、貴方に質問したいと思います。貴方は、欧州共同債を発行すべきだと思いますか?

 はっきりいって、この問いにすぐに答えることができる人は極めて少ないのではないでしょうか。というのも、そもそも欧州共同債って何?という人が殆どであるからです。

 欧州共同債とは何か?

 簡単に言えば、これまで、ユーロ圏の各国が独自に発行していた国債を一本化しようというものです。つまり、これまでは、各国の信用度に従って、国債の発行条件(金利)に大きな格差が発生してたのが、共同債を発行することによって、各国とも同じ条件で資金調達することができるようになるということなのです。

 「欧州共同債を発行するとどういうメリットがあるの?」

 ですから、例えば、ギリシャでもスペインでもイタリアでも、或いはドイツでもみんな同じ借り入れ条件になるということです。

 最近、イタリアの国債の利回りが危機ラインの7%を超えたなどということがニュースになっていたのですが、このように共同債を発行することになれば、イタリアなどは7%を大きく下回る金利でお金を借りることができるようになるでしょう。

 「では、ドイツはどうなるの?」

 多分、ドイツにとっては金利は高くなるでしょう。何故ならば、欧州共同債とは、どんぶり勘定で各国の国債を発行する制度であるので、各国の国債の発行条件がすべて反映されることになるからです。一番利回りが低いドイツ国債よりも共同債の利回りの方が高くなるのは当然でしょう。

 「ドイツは、自国が支払う金利が増大することになるので欧州共同債に反対するのね?」

 それもあるでしょうが、それ以外に、国債の発行が困難になりかけている国が欧州共同債の発行によって比較的低い金利で資金調達をすることができるということは、結局、ドイツなどの信用がバックにあるからできることなのですが、そのような保証を与えることにドイツは躊躇を感じているのです。

 それに、幾ら金利が高くなっても‥時には行き過ぎのこともあるかもしれませんが‥それでも、基本的には市場の率直な声として捉えるべきものであるのです。つまり、投資家がある国の信用度について疑念を感じるから金利は上がる、と。そして、そのように金利が上がると、借り入れ国側としては、それに応じて行動を取る必要がでてくるのです。つまり、自国の財政再建の実現の可能性をマーケットに分かりやすい形で示すとか。そのようなことが望まれれるのですが‥もし、共同債というものが導入されてしまうと、共同債で調達した資金が、どこの国によって使用されるかが不明確でもあり、また、借入国側では、財政再建に真剣に取り組むことをしなくても、一応資金調達に支障をきたすことがなくなるので、財政再建が進まなくなる恐れもあるのです。

 ユーロ圏各国の国債の利回りが7%台に乗ると危機ラインだ!と叫ぶ共通認識が出来上がりました。

 ついに、イタリアも危ないぞ!と。何とか、長期金利を引き下げる方法はないものか、と。そこで、共同債のアイデアが注目されているのだと思います。

 共同債は、どんぶり勘定債。どこの国がそれによって得たお金を使うのかもはっきりしない。そして、全ての国が連帯して債務の支払いに責任を持ってくれる。

 全ての国が連帯して責任を持ってくれると言えば、大変心強くなるのです。では、その全ての国が連帯して責任を有する共同債と今現在のドイツ国債の信用度はどちらが高くなるのか?

 答えは、簡単です。単にドイツ政府だけが責任を有するドイツ国債の方が信用度が高いのです。

 今回の共同債という構想は、またも事態の先送り、臭いものには蓋の方式に逃げ込む作戦であるのです。もちろん、そうした共同債を市場の投資家たちが歓迎するというのであれば、部外者が何も言うことはないのですが‥そもそも、そういう投資家が欧州の財政事情や金融機関の経営内容に懐疑的になっているからこそ、このように危機が増幅してもいるのです。なのに、またまた後戻りするような政策なのですか?と私は言いたい。

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