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民主制と独裁制

中央大学の大杉謙一教授が、11月25日の日本経済新聞朝刊・経済教室に「問われる企業統治 トップの後継指名 透明に」と題する論考を掲載された。

論旨はとても明快。王子製紙とオリンパスの事件を概観した上で、二つの提言をされている。一つは監督制度の充実であり、もう一つは後継者指名の透明化だ。いろいろなことを考えさせる、よいテキストだと思う。

株式会社は、薄く広くかつ大量の資本を集めるための、法律的な仕組みである。外部から資本を出して貰う以上、会社経営の内情は可能な限り公開され、判断材料が提供されなければならない。また、経営の素人に安心して金を出して貰うためには、監査役などの専門家が常に、経営の有様をチェックしなければならない。会社経営が透明で、監督制度が充実していることと、薄く広く大量に資本を集めることは、表裏一体の関係にある。株式会社において、企業統治の透明化が叫ばれるゆえんだ。

しかし他方、何のために投資するかといえば、端的に「儲ける」ためだ。だから、「会社経営が透明化されているが、株価の上がらない(配当の少ない)会社」と、「会社経営が不透明だが、株価の上がる(配当の多い)会社」のどちらに投資するかと聞かれれば、後者を選ぶ投資家は多いはずだ。「透明・不透明」「配当が多い・少ない」の組み合わせは4つあり、「透明で配当が多い」のが一番よいに決まっているが、世の中、なかなかそうは行かない。

同じことを社長の側から見れば、経営の透明化は株主に対する社長の責任だが、透明化すれば良い、というものではない。同じ日経の「私の履歴書」にあるとおり、名社長は常に孤独であり、その最大の仕事は後継者指名だ。投資家の利益を無視しているのではない。最大限に考えるからこそ、名社長は孤独になり、秘密裏に後継者を指名せざるを得ないのである。もちろん、逆必ずしも真ならず。秘密裏に後継者を指名する社長が名社長とは限らない。

会社におけるガバナンスの透明性と利益の問題は、民主制と独裁制の問題に似ている。国民利益追求には、優れた独裁者こそ適任だが、独裁制は、いつか国民を不幸にする。チャーチルの至言に倣い、我々は、ガバナンスの透明性を基本に据えつつ、利益追求との両立という困難な問題に取り組み続けなければならないのだろう。

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