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「国難突破解散」に疑問符

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トップ画像:安倍晋三首相とトランプ米大統領 出典/自民党2017政策パンフレット

清谷信一(軍事ジャーナリスト)

【まとめ】

・北朝鮮が核弾兵器や弾道弾を日米に撃ち込むメリット無し。

・安倍政権の北朝鮮の弾道弾、核兵器対策は不十分。兵器調達の合理性もない。

・自衛隊の即応性や能力が減退している現状で国防が全うできるのか。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真の説明と出典のみ記載されていることがあります。その場合はhttp://japan-indepth.jp/?p=36824で記事をお読みください。】

■ 北朝鮮は真の脅威か?

安倍首相は「国難突破解散」と今回の解散を呼んでいる。だが、最大の国難は安倍晋三総理だ。

安倍首相は北朝鮮の核兵器や弾道弾が我が国の極めて深刻かつ喫緊の脅威であり、これに対する対処が必要であることを解散の理由に挙げている。だが安倍政権は過半数どころか、現有は自公で323議席もある。これで何故解散する必要があるのだろうか。公明党が信用できない、という以外の理由は思いつかない。

安倍首相は強い指導力で、国家の壮大なフレーム構築能力があって、外交や軍事に明るく、強い指導者というイメージがあるが、完全にイリュージョンである。安倍首相は極めて重度の軍事音痴である。

そもそも明日にも北朝鮮が核弾頭を撃ち込んでくるぞ、と国民を脅すが、その根拠は極めて薄弱である。北朝鮮がこれまで長年に核兵器や弾道弾を開発してきたことは周知の事実であり、これを阻止するための国際的な制裁が効いていないことも、これまた周知の事実である。

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▲写真 北朝鮮の弾道ミサイル「火星12号」 出典:CSIS Missile Defence Project

我が国に届く弾道弾は既にかなり前から実用化されている。昨日今日に実用化されたわけではない。その「国難」に対して何で今まで安倍政権は無策だったのか。

また水爆実験も実験に過ぎず、実用化、特に弾道弾の弾頭に搭載するための時間はかなりかかる。つまり、明日にでも水爆ミサイルが飛んでくるわけではない。急いで国会を解散する理由にはならない。逆に喫緊の脅威であるならば、のんびり解散して選挙などやっている場合ではない。

安倍政権が北朝鮮の核と弾道弾を喫緊かつ重大な脅威だと認識していたのであるならば国家防衛体制の強化、それは防衛省だけでなく民間防衛も強化する必要があった。だが、そんな政策は第一次及び今期の安倍政権において殆ど実施されなかった。小泉政権は国民保護法や有事法を制定したが、これらの法律を安倍政権が強化したという事実はない。

そもそも北朝鮮が実際に核弾兵器や弾道弾を我が国や米国に撃ち込むメリットは全く存在しない。これらを使用すれば北朝鮮は米国によって地上から抹殺され、「金王朝」も同時に消滅する。北朝鮮が核兵器や弾道弾の開発・配備を続けるのは独裁国家の体制を維持し、生存するためである。つまり「政治的な兵器」であり、使ったらお終いなのである。

ショッカーやギャラクター、ましてはジオン公国などアニメや特撮の悪の組織ですら、地球征服や独立戦争を起こしたのは、それなりのビジョンと理由があったからだ。

繰り返すが北朝鮮が核兵器や弾道弾を開発、実用化しているのは「理由」と「利益」があるからだ。これらを政治的・外交的な脅しに使えるカードである。

換言すればそのカードを切ったら後がない。そのときは体制の維持どころか北朝鮮が無くなる可能性も高い。言うならば暴力団の暴力と同じである。暴力団が暴力を振るう、あるいは振るうと威嚇するのはそれが楽しいからではなく、儲かるから、経済行為だからである。北朝鮮の核兵器や弾道弾はこれと同じだ。

■ 北朝鮮の核以外の危機とは

核兵器と弾道弾を保有しているのは北朝鮮だけではない。国連の安保理常任理事国の米国、ロシア、中国、英国、フランスに加え、イスラエル、パキスタン、インドなど持っている。核兵器や弾道弾を持っている国が気まぐれで、それらを使う危険性があるというのであれば、これらの国が周辺諸国に核や弾道弾で面白半分に攻撃する危険も警戒しなければならいだろう。

独裁国家だからというのであれば中国もそうだろう。ロシアも我々の言う意味での民主国家ではない。むしろ独裁国に近い。中ロは戦後長年にわたって我が国に核弾頭の弾道弾を指向している。それらは多弾頭であり、北朝鮮のそれよりも遙かに洗練されて迎撃も難しい。なのに、北朝鮮だけが脅威であると宣伝するのは滑稽ですらある。

単に核弾頭付の弾道を持つ国というだけで「脅威」であるならば世界最大核保有国であり、同盟国の米国はもっと大きな脅威だろう。米国も我が国に核兵器や弾道弾を撃ち込む理由は存在しない点では北朝鮮と同じである。

繰り返すが、実際の国家である北朝鮮が何の政治的、外交的な果実を期待できないのに、面白半分に「政治的兵器」を使うわけがない。

仮に北朝鮮が実際に核兵器や弾道弾を我が国に使用する恐れが最近になって急に増大したのであれば、安倍政権は北朝鮮が核兵器や弾道弾を撃ち込む理由を説明すべきだが、していない。単に危ない、危ないと騒いで国民の危機感を煽っているだけだ。

不安を煽るために気休めの避難訓練等を行わせているだけだ。これらは戦時中のバケツリレーで焼夷弾の火を消すようなものであり、いたずらに国民の不安を煽るだけだ。モリカケ問題で地に落ちた政権の支持率を、国民の不安を煽ってあげようと勘ぐれても仕方あるまい。

更に申せば、核兵器や弾道弾よりも剣呑な北のサイバー攻撃に関して安倍政権は特に述べていない。サイバー攻撃、サイバー・テロは犯人の特定が極めて難しいし、確実なエビデンスの確保もこれまた難しい。しかも、北のサイバー部隊はかなり優秀とされている。

発電(特に原発)、金融機関、航空や鉄道の管制などのシステムに悪さをされれば大きな被害を受ける。しかもサイバー攻撃は使用に際しては核兵器や弾道弾よりも遙かにハードルが低い。実際に北朝鮮や中国によるとされるサーバー攻撃が我が国や米国などでも確認されている。このことを安倍政権は国民に説明していない。

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