そのシェルターへの不信を記事したものがありました。
「DVシェルターへの不信感を訴える女性が急増、職員も「牢獄のような管理」と葛藤」(週刊女性PRIME)

まずシェルターの中が逃亡されないように所持金と携帯を取り上げられるというところから始まり、内部での私語は禁止とあります。
私自身は、携帯は預かるということは担当者から聞いたことがありますが、それ以外のものは知りませんでした。ただ内部の規則には従ってもらうということで、自由にできるようなところではないという説明は受けました。いろんな事情で入ってきている人たちがいるし、その秘密は守られなければなりません。もしかすると、入居していないかどうか探りのために入ってきているのかもしれません。特定の誰かがいることさえ知られてはならないと考えれば、妥当な規則です。
文字通り着の身着のままの人もいるわけで、好き勝手にされても困るというのも理解できます。
それからシェルターは長期に滞在することは想定していません。新たな自活をすることを前提にしていますが、その第一歩は生活保護の申請です。転居費用も保護費から出ます。シェルターの職員もその手助けくらいはしてくれます。
記事では管理されていると批判的に書かれているのですが、さっさと出ることが可能な上、とりあえずの居場所だということで早期に出る準備をすることの方が大事なことなので、この記事の論調には非常に違和感があります。
さらにこの女性は夫の元に戻って再度、DV被害に遭い、シェルターに戻ってきたというのですが、そこで治療を勧められ子と引き離された、だったらシェルターに戻らなかった方が良かったとありますが、その経緯が全く不明であり、実際にも精神が病んでしまっているようにすら読めてしまいます。そうであれば育児能力にも問題があるわけで、引き離さざるを得ない場合もあるわけです。子を離されたという場面だけを取り上げるのは明らかに誤りです。
次に取り上げられていた事例ですが、職員から離婚を勧められたということが極めて批判的に書かれていることです。
その女性は、結局、また夫の元に戻り、再びDV被害を受けたとあります。
職員にしてみれば、やっぱりね、としか思わないでしょう。離婚について迷うということの意味がわからず、離婚しないのであればさっさと夫の元へ戻ったらいかがですかというのも、それ自体、ひどい対応とは思えません。少なくともシェルターは長期滞在するところではなく、DV夫の元へ戻るのか、離婚はしないまでも別居して別々の生活を歩むのか(その場合には生活保護を受給することも必要になります)、本人が決断すべき問題です。
むしろ、その女性は一体、シェルターに何を期待しているというのでしょうか。夫を諭して暴力はいけないよ、と言ってくれることを期待しているということでしょうか。夫が捕まったときの弁護人が一番、気持ちをわかってくれたということからすると、そういうことなのかもしれません。しかし、職員は、その夫婦の友人でも親族でもないのに、そのようなことをすべき義務も責務などあるわけもないし、それをすることの意味があるとは思えません。所詮、DV加害者は、諭してわかってもらえるというものではないからです。
そうではない、その女性だって迷っているんだ、夫からマインドコントロールを受けているんだという声も聞こえてきそうです。
その割には職員に対する不満をぶちまけています。それだけ強固の意思があるのであれば、それに従って行動したらよく、周囲を振り回すのはどうなんだろうと思います。
DV被害者から夫の元に戻りたいなどと言われれば、援助しようとしていた職員にとってもはっきりと無力感しかなくなりますし、ムッとした態度を示すというのも、仕事でやっていると割り切るのも必要かと思いますが、私は正直、その気持ちはとてもよく理解できるものです。職員が力が抜けるのも当然です。
警察も同様です。桶川事件のような問題ある対応もありましたが、最近ではとにかく被害者の側がはっきりしないという案件に対して対応に難儀するというのはよくわかります。
結局、全体として何が言いたいのかよくわからない記事でした。
もとよりDV加害者が暴力を正当化する余地はなく、当然のことながら刑事罰によって適正に処理されるべきはもちろんのこと、それ以上にDV被害者が加害者に怯えながら生きていかなければならないこと自体、不合理なことです。
DV加害者に対する厳罰は当然だし、本来的に強制治療の是非も検討されなければなりません。しかし、職員の対応に矮小化してしまうのは問題です。
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