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どうだった?【幼児教育の無償化】

 今回の衆議院総選挙にあたっての一つの争点でもある「幼児教育の無償化」。実は、幼児教育の無償化も含めた教育の無償化は2009年の総選挙においても一つの争点となっている。自民党は、麻生総裁のもと幼児教育の無償化を当時から公約に掲げている。選挙で政権交代を実現した当時の民主党は、高校の無償化を公約に掲げていた。維新の会や希望の党など、影も形もない時の話である。2009年の総選挙では民主党が政権を取り、幼児教育の無償化にはスポットライトが当たらなくなったが、その後の国政選挙においても、自民党は幼児教育の無償化を目指すことを公約に掲げ続けている。

 教育の無償化には大きな予算がかかる。よって、無償化を訴えるにあたっては施策実現にあたっての財源を明確にしなければ、無責任であるという誹りを受けることになる。
 
 今回の選挙において、日本維新の会の松井代表が「大阪では4歳から高等学校まで私学を含めて無償化している」と発言をされた事に対して、一般の方がTwitterで発信された投稿が4000近いリツイートという驚異的な拡散をみせている。
フェイクに対するファクトチェックが機能した形と言える。実際、総選挙ファクトチェックというサイトにおいても、同発言はエンマ3の「事実ではない」という判定がなされている。
http://npo-iasia.org/2017/10/factcheck8/


 改めて、大阪市における幼児教育の無償化の実施について、2点おさえておきたい。大前提として、大阪市において幼児教育の無償化が先進的に進められた事は素晴らしいことであると評価したい。

 しかしながら、この幼児教育の無償化は各自治体間で競う様に実施する事業であるのだろうか。また、大阪市においては、しっかりとした財源が確保されているのか。

 幼児教育の無償化は、首長の意思で簡単に実現できるようなものではないことは、先に述べた財源の問題があるからだ。だとすれば、財源の対応が可能な自治体とそうでな自治体とで、実施及び実施内容についての格差が生じるということになる。

 教育施策については、各自治体で特色を出す事は重要である。地域の実状に合わせて、指導要領に則りながらも、どの様な教育を実施するのか。また、教育の質については、分かり易いところで言えば教員の加配などを地域実状に合わせて実施するなど、自ずと地域に濃淡が生じることから、全体的な予算や他の施策と調整しながら実施していく必要がある。

 しかしながら、無償化とりわけ幼児教育の無償化については、全国広くあまねく一律であることが望ましいのではないだろうか。今後は、国策として、推進されることを期待したい。

 大阪市の幼児教育の無償化は、平成28年度において5歳児、平成29年度においては5歳児に加えて4歳児に対しても対応している。今年度予算で約60億円の予算が投じられている。吉村大阪市長の任期中、平成30年度迄に3歳児まで実施すると言われているが、本当に実現できるだけの財源が保障されているのであろうか。

 「身を切る改革で財源を生み出す」という言葉、聞こえは良いがどれほどの財源が生み出せるのかは定かではない。橋下市長の時代にも、バウチャー制度や(不評ではあったが)デリバリー給食を選択制から全員喫食に行うなど教育関連予算に多くの予算が投じられた。しかし、当時は曲がりなりにもバッサバッサと様々な住民サービスを切り倒して財源を生み出していた。敬老パスの一部自己負担を象徴とし、新婚家賃補助制度の廃止や各種団体への補助金などもカット、廃止。固定資産税の免税などについても見直しがなされている。

 しかし、吉村市長になってから、同様の新たなカットは見られない。職員給与の特例カットは継続実施されているが、人事院勧告において指摘を受ける状況となっている。本来支給すべき給与水準以下ということであれば、大阪市は行政でありながらブラック企業を言われかねない。勿論、職員給与については自治体の財政状況も勘案しなければならないと考えるが、大阪市以上に財政状況が厳しいと見られる大阪府においては給与カットを既に廃止している。(大阪府における、高校の無償化財源も問題であるが、ここでは触れないでおくこととする。)加えて、大阪市では道路や公園、施設の維持管理費のカット継続が長引く中で「草木ボーボー」と揶揄される状態が街中で多く見られる。今丁度、平成28年度決算数字が示され、選挙後に大阪市会で議論されることになるが、大阪市の財政状況は前年度と比較して悪化しているそうだ。

 結論を言えば、大阪市における幼児教育の無償化は、財源の確保のないままに実施されたのだ。3歳児の実施については、様々な障壁もあり、来年度の実施は厳しいと言わなければならない。

 ちなみに、2年前の市長選挙において、吉村市長は「幼児教育の無償化」を公約には掲げていない。選挙中の訴えには、影も形も見えない。ところが、年が明けて次年度(平成28年度)予算編成にあたり唐突に登場したのだ。市政運営のスタート時点における目玉施策の意図もあるかと思うが、合わせて同年(昨年)夏の参議院選挙に向けての布石であったのかもしれない。

 いずれにしても、財源なき幼児教育の無償化は、単なる無責任施策であることを重ねて主張しておきたい。

 安倍・自公政権は、この5年間で経済を成長させ、名目GDPを過去最高にまで増加させ、就業者数も増加し雇用を創出してきた。平成29年度においては、国・地方の税収も初の100兆円越えになるという。消費税活用の財源5兆円についても不確かだという指摘もあるが、この間の実績は十分に将来に対する信頼に値すると考える。この成長を持って、安定した恒久的財源で幼児教育の無償化を実現する。責任ある政策の訴えに期待を寄せたい。

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