- 2017年10月20日 09:15
日本国憲法は「みっともない憲法」なのか
2/2■「安倍首相の個人の情念」という分析
今回の朝日社説の中で特に興味深いのは、安倍首相が改憲にこだわるその理由を思い切って推測した部分である。
「安倍首相は、なぜ改憲にこだわるのか。首相はかつて憲法を『みっともない』と表現した。背景には占領期に米国に押しつけられたとの歴史観がある。「われわれの手で新しい憲法をつくっていこう」という精神こそが新しい時代を切り開いていく、と述べたこともある。そこには必要性や優先順位の議論はない。首相個人の情念に由来する改憲論だろう。憲法を軽んじる首相のふるまいは、そうした持論の反映のように見える」
なるほど。護憲派の朝日新聞らしい主張ではあるが、「中道」を自称するこの沙鴎一歩にも、うなずけるところは多い。とりわけ「安倍首相個人の情念」という分析は、全くその通りだと思う。
朝日社説は最後に「憲法改正は権力の強化が目的であってはならない」と訴えるが、これもよく分かる。やはり「国民主権」「人権の尊重」「民主主義」の大原則を忘れずに憲法論議を進めることこそ、大切なのである。
■朝日は「憲法論議」、読売は「憲法改正」
一方、改憲派の読売新聞の社説はどうだろうか。
10月14日付の読売社説(朝日と同じく大きな1本社説)の見出しは「憲法改正」「『国のあり方』広く論議したい」「自衛隊の位置付けへ理解深めよ」である。テーマ自体を「憲法論議」とする朝日社説と違って「憲法改正」としているところから、朝日と読売のスタンスが大きく違うことが分かる。
読売社説は前半で「自民党は公約に、(略)4項目の改正を目指す方針を明記した。抽象的な表現にとどめた前回衆院選と比べて大幅に踏み込んだ。政権党として、9条改正を主要公約に挙げたのは初めてである。高く評価したい」と書く。
9条改正の公約について「高く評価したい」と新聞の社説としては最高級の褒め言葉を贈っている点など、やはり安倍政権擁護の新聞社の体質がそのまま出ている。
■読売も論旨展開は憲法の原則に基づく
読売社説はさらに「自衛隊の位置付けや緊急事態時の特例措置、政府と自治体の関係などは、国のあり方に関わる重要なテーマである」と指摘する。
そのうえで「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という現行憲法の3原則の堅持を前提に、大いに議論を深めてもらいたい」と主張する。この辺りは問題ないだろう。
朝日と反対のスタンスを取る改憲派の読売も「国民主権、人権の尊重…の憲法の原則」との言葉を使ってその論を展開しようとする。いつものことだが、読売と朝日を読み比べていると、頭の中が混乱することがある。
■「自衛隊合憲」には一応の理解を示すが……
読売社説は「自衛隊の合憲」に理解を示したうえで、自衛隊の位置づけを次のように言及しながら、巧みに改憲論を主張していく。
「政府は長年、自衛隊は9条2項が保持を禁止する『戦力』ではなく、合憲とする憲法解釈を維持してきた。大多数の国民も、自衛隊の国防や災害派遣、国際協力活動を高く評価している」
「合憲」ならば改憲する必要はないだろうと読み進めると、読売社説は筆を反対方向に運ぶ。
「だが、自衛隊の存在は、70年以上、一度も改正されたことのない憲法と現実の乖離の象徴だ」
沙鴎一歩は「一度も改正されない」ことがそんなに問題なのか、と思うが、どうだろうか。
■北朝鮮の脅威を改憲に結び付ける読売
次に北朝鮮問題を持ち出して脅威を強調し、改憲論を導き出そうとする。これでは安倍政権と同じである。
「北朝鮮の核ミサイルの脅威などで日本の安全保障環境が悪化し、自衛隊の役割は一段と重要になっている。一部の憲法学者が自衛隊を『違憲』と主張するような異常な現状は是正せねばならない」
読売社説は「憲法改正」に対する筆の運びが弱いと思う。なぜ弱くなるのか。社説を書いている論説委員が、「憲法改正」に対する強い信念を持っていないからではないか。
信念がないから、主見出しそのものが「『国のあり方』広く議論したい」と中途半端な主張になってしまう。仮にも憲法論議の社説である。読者としては泰然自若に構えた主張をしてほしいものである。
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