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気候変動枠組条約第17回締約国会議、まもなく開幕

さて。たまには本職の地球温暖化について。
 もう1年半も違う仕事をしているので、知識はだいぶさびついていますが。


 11月28日から12月9日まで、南アフリカのダーバンで気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)という国際会議が行われます。

リンク先を見る ←「COP17」のイメージ画像


 毎年この時期にやっている会議で、日本では14年前の1997年に京都でCOP3が開催されて、「京都議定書」という条約が合意されたのが有名ですね。
 この京都議定書は2008~2012年の5年間を対象にしていて、そろそろその期間が終わるので、2013年以降の枠組みをどうするかが主要な議題となっています。


 京都議定書は、先進国に限定して、2008~2012年の温室効果ガス排出量の上限を定めています。その数値は日本が-6%、アメリカが-7%、EUが-8%で、先進国全体では-5%です(いずれも1990年比)。
 1990年時点では、先進国の排出量が世界全体の66%、途上国が34%だったので、責任の重い先進国から先に義務をかけようという発想でできた枠組みです。


 しかし、新興国の急速な経済発展により、最新の2008年のデータでは、先進国が46%、途上国が54%と逆転し、さらに、19%を占めるアメリカが離脱したので、議定書の削減義務の対象となる排出量は46-19=27% まで下がってしまいました。
 ちなみに、2008年の排出量上位の国は、1位中国(22.3%)、2位アメリカ(19.0%)、3位ロシア(5.4%)、4位インド(4.9%)、5位日本(3.9%)です。


 さてこういう状態にある中で2013年以降の枠組みをどうしようか、ということが論じられています。
 ポイントは、途上国、アメリカ、アメリカ以外の先進国という3つのカテゴリごとに、どういう義務を課すか。


 一部の途上国には、何らかの義務を負ってもらう必要があるでしょう。ただ、先進国と同じ義務では厳しすぎるので、どんな内容にするか。
 アメリカを甘やかす理由はないんだけど、京都議定書型の排出量の上限は飲まないと宣言しているので、飲みやすくするしかない(ジャイアンには逆らえない)。
 その他の先進国は、京都議定書に引き続き排出量の上限を定めるのが自然だけど、途上国、アメリカとの均衡上、それでいいのかどうか。


 現時点では、途上国はいかなる義務の引き受けにも反対し、京都議定書を単純延長すべきと主張しています。
 EUは京都議定書を単純延長し、途上国とアメリカは別の枠組みという2本立てでやむなしという意見。
 日本は京都議定書の単純延長には反対で、途上国もアメリカも含めた枠組みの一本化を主張。
 アメリカは京都議定書には入る気がないので関心はなく、独自路線(基本的には途上国に厳しい)。


 結論から言うと、各国の意見が鋭く対立していて、今回は十分な合意が得られることはなく、先送りといった感じになるでしょう。



 さて、いろいろ書いてきましたが、ここまでは前置き(にしちゃ長いが)。
 私が言いたいのは、「会議の細かい議論に目を奪われるな。会議がどうなろうが、日本がやるべきことは大筋では変わらない」ということ。


 温暖化対策の最終到達点は、「世界全体の排出量を現状より半減」以外にあり得ません。これは排出量と吸収量の関係から明らかです。
 会議で議論しているのは、何年にそこに到達するか(2050年が有力だが、多少の遅れはやむなし)、発展段階の違う先進国と途上国がどういうカーブを描いて到達するか、経済的な不公平が生じない義務づけ方、といった技術的な議論です。


 日本を含めた先進国は、2050(+α)年までに、半減より多く、70~80%の削減をする必要があります。
 途上国例えば中国は、日本の高度成長期(1960年代)にあると考えれば、40年遅れなので排出削減も40年遅れで進むのが自然だけど、それでは遅すぎるので何らかの方法でスピードを上げさせることが必要です。


 こういった温暖化対策の基本的な方向性は、変わりようがありません。
 会議で議論される2013年から数年間の法的な枠組みというのは、とてもとても重要ではありますが、ある意味では手段の問題でしかないと思っています。
 東京から大阪まで行くのに、新幹線で行くか、飛行機で行くか、バスで行くかというような(「ドラえもん」第1話のパクリ)。



 「日本はもう十分やっている」「日本の排出量は世界の4%しかないので削減しても意味はない」「途上国が日本並みに取り組めば問題は解決する」「中国が悪い」といったことを言う人もいますが、私は間違っていると思います。


 日本には、2つのことをやる責任があります。
 ・日本自体が、2050(+α)年までに70~80%の削減をする
 ・途上国が40年遅れから10~20年遅れまでスピードアップするために協力する


 もちろんその中では、削減のスピード調節は重要だし(鳩山元総理が主張した2020年に-25%は速すぎる。原発の新設が止まったからなおさら)、途上国に金だけふんだくられてサボられたり、知的所有権を侵害されたりしてはいけません。
 そういう意味で、会議での交渉も極めて重要なのは事実です。政府も、徹底して戦う覚悟を決めています。



 その上でやはり私が言いたいのは、「会議がどうなろうが、日本のやるべきことは決まっている」ということ。


 来週以降、COP17についていろいろな報道も出てくるでしょうが、私としては、そういう目で見てもらいたいなと思っています。

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