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北朝鮮は国際的に孤立していない!?北朝鮮と深い関係をもつ国々は何を求めているのか / 宮本悟×白戸圭一×荻上チキ

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格安で支援を提供

荻上 軍事的な恩恵以外に何か両者が関係を結ぶことはメリットがあったのでしょうか。

白戸 アフリカ側のメリットとしては、武器を自己調達できるということです。ナイジェリア、ウガンダ、ルワンダ、ジンバブエなど、さまざまな国で北朝鮮の影響が確認されていますが、アフリカの場合、多くの国で紛争が起こっていましたので、武器が安いというのは最大のメリットです。

旧ソ連のカラシニコフを中国がコピーし、そのコピーを北朝鮮がコピーし、アフリカでそのコピーを作っているような状況です。もはやカラシニコフと呼べるのか疑問ですが、形状や機能は同じです。

北朝鮮としては、国連での陣営票を得るメリットや、外貨獲得のメリットがります。北朝鮮からさまざまな技術職の専門家を呼び、パテント料(特許料)をとるというものもあります。北朝鮮にとってはこれも外貨獲得につながりますね。北朝鮮の医療支援団体なども現地に入っているんですよ。

荻上 医療支援団体、ですか。

白戸 医師が必要な国というのがあるんです。私もある国で北朝鮮の医者を見たことがあります。アフリカはみんな病気で困っていますから、医師がくれば助かりますし、現地の人々にとってはその医者が日本人であろうと北朝鮮人であろうと、病気を治してくれれば関係ありません。特にアフリカの国々は北朝鮮からミサイルを撃ち込まれるということはまずありませんから、脅威でもなんでもありません。医療支援は友好国を増やす目的で、人道支援の一環として無償で行われています。

荻上 今の医療支援について、宮本さんはいかがですか。

宮本 私も、医療支援についてはタンザニアで行っていることを確認しております。町医者レベルでしたが2件ほど北朝鮮の医者が、病院を構えていました。どういう治療をしているのかまではわからないですが、聞くところによるとタンザニア政府が認めているもので、やはり医療支援として行われているようでした。困っている病人たちを治す目的で医者を派遣し、国際社会でタンザニアの支持を得ていたわけです。

荻上 医療支援のほかはどうなっているのでしょうか。

白戸 他に取引があるのは、洋服や歯ブラシのような日用品ですね。日本の製品などは、アフリカの社会水準からするとオーバースペックなので、逆に北朝鮮のような経済発展が比較的遅れている国の品物の方が消費されるんですよ。例えば歯ブラシを買う時に、庶民は「核兵器の開発をしている国の歯ブラシだから買うのはやめよう」という発想はしないですよね。そういうものです。とはいえこうした製品が全体の取引に占める割合はそこまで大きくありません。

一つ示唆的なのは、アフリカでの中国の動きです。アフリカには台湾と国交を結んでいる国が4か国ほどあるのですが、中国はこの1年、これらの国が台湾と国交を断絶するよう総力をあげて取り組んでいます。アフリカのいろいろな国に圧力をかけて、台湾系の住民を追放するように働きかけています。実際台湾系住民が警察の取り締まりを受けるという事態が、アフリカ各地で起きています。

一方で中国は、北朝鮮関係者を追い出すための働きかけはしていません。中国にとって北朝鮮は確かに困った存在ですが、核心的利益に関する問題ではないということです。中国にとっては、台湾の方がよっぽど重要な問題なんですね。日本人はこうした事実を認識する必要があると思います。

荻上 アフリカにおいて、北朝鮮が警察や軍の育成など、治安維持分野に関わっているという話も聞きますが、その点はいかがでしょうか。

白戸 ジンバブエやウガンダは北朝鮮による警察への訓練が確認されている国です。宮本先生はこの問題について、アフリカの国に調査に行かれていますが、向こうも具合は悪いんでしょうね、表立って聞くと否定するんです。確かにアフリカにとっては日本やアメリカはバカにできない巨大なドナーです。外交関を悪くしたくないので、表立っては認めたくないでしょう。ただ、実際には続いている。それが実態だと思います。

荻上 アフリカで治安維持支援をすることの北朝鮮側へのメリットとは何なのでしょうか。

宮本 冷戦以降の話で言うと外貨収入です。ウガンダで調べたとき、北朝鮮のトレーナー1人あたり、1カ月500ドルで雇ってたんです。もちろん食費とか住居費は別ですが、それでも500ドルです。5万円くらい。格安トレーナーです。

現地の人に聞くと、ロシア人のトレーナーを雇うとこの10倍になるそうです。ロシア人1人の値段で北朝鮮人トレーナー10人が雇える。ウガンダからすると安くて、しかも質がいいトレーナーを雇え、北朝鮮からすれば、労働力を輸出して外貨収入を得られる。両方の利害が一致しているからこそ成り立っている契約ですよね。

荻上 北朝鮮の兵の練度が高い。

宮本 高いですね。ウガンダでの訓練を見ましたが、訓練のやり方自体は火の輪くぐりやテコンドーなど、少しロシアの陸軍と似ています。それが全部、対テロ対策として行われていました。ウガンダからすると、対テロ対策はアメリカに対する協力でもあります。

白戸 皮肉な構造なんですよね。エチオピアもそうなんです。アメリカはソマリアのイスラム武装主義勢力を叩きたかったのですが、直接介入するわけにいきませんでした。そこでエチオピアに代理で戦ってもらったのですが、その時エチオピアが使っていた武器が北朝鮮製の武器なんです。だからアメリカのために戦ってるんだけど、武器は北朝鮮が提供したものだという、矛盾する構造になっています。

荻上 アフリカでの秩序形成という国際的なコンセンサスのために、北朝鮮が貢献している場面もあるということですか。

白戸 極めて皮肉なことではありますけれども、そうですね。

荻上 自国の兵隊を派遣しアフリカで訓練させることで、北朝鮮軍はより練度を高めていくことにもなるわけですよね。

宮本 そうですね。もともと北朝鮮の海外派兵はベトナム戦争から始まりました。その当初の目的も、戦闘の練度を上げるためでした。アメリカ軍としばらく戦っておらず兵士の腕も落ちてきていたので、戦争に参加して、兵士たちを訓練するという目的もあったそうです。

荻上 制裁の決議を受けて、アフリカ諸国が北朝鮮に対する態勢を変える可能性はあるのでしょうか。

白戸 アフリカの国の中で最も民主主義が発達しているといわれるボツワナだけは、すでに北朝鮮との外交関係を切っています。それ以外の国々も、ミサイルについては直接飛んでくる距離ではないですが、核については指導者層は問題を理解していると思われます。核の場合は自分たちが核攻撃されることでなく、核のドミノの危険がありますからね。これが怖い。一つの国が核開発を認めるということは、なし崩しに世界に広がっていく可能性があるわけです。

一か国核の保有を認めてしまうと、アフリカの国々の中でも隣が持つかもしれない、それはまずい、という話になります。今北朝鮮の核開発をどうにかしないと、何十年と長い時間をかけてですが、世界中に核が拡散するかもしれない。それは世界全体の脅威です。そういう意識はアフリカの国々の中でも、少しは高まっているのではないかと思います。

荻上 ただボツワナ以外、国交を断絶している国はまだないと。

白戸 国交を持っている国のほうが多いのが事実です。私も新聞社で働いていたのでわかるのですが、今日本のメディアって北朝鮮一色になっていますよね。隣で危険なものを振り回されているのですから、それは当然です。しかし、こうした情報ばかりに触れていると、国際情勢の見方が偏ってしまいます。日本語の情報だけを見ていると、あたかも北朝鮮が孤立しているように見えるわけですが、今お話ししたように、実はそんなに孤立していないんですよね。まずはその事実を認識していかないと、先ほど宮本先生がご指摘されたように、いくら圧力をかけても、下がザル……という状況が変わりません。

状況を変えるために、日本の外務省も訓令を出したりして、一生懸命アフリカにある日本大使館を動かしたりしていますが、こうしたザルの下を埋める対策をとっていかないと、いくら制裁を強めても効果がない、ということになってしまうでしょう。

荻上 北朝鮮が孤立している、というのは日本語圏の人々だけが持っているイメージだと。

白戸 私たちの日本語ネットワークの中でそう思っているだけのことだと思います。日米ほど圧力をかけている国のほうが圧倒的に少数だ、そういう事実を認識する必要があります。

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