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北朝鮮は国際的に孤立していない!?北朝鮮と深い関係をもつ国々は何を求めているのか / 宮本悟×白戸圭一×荻上チキ

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アフリカと関係を結ぶ北朝鮮

荻上 先ほど経済制裁逃れの話もありましたが、北朝鮮と関係が深い国にはどういった国があるのですか。

宮本 地域としては、中東とアフリカです。特にアフリカは冷戦時代に韓国と北朝鮮の競争で韓国が敗れた唯一の地域です。アフリカも中東も、西側諸国に対する多少の反発があります。アフリカの場合もともと植民地だったのもありますが、西側諸国と関係が強すぎる国には反発があるんです。韓国はやはりアメリカの同盟国であり、その点で言うと西側諸国なんですよ。だから、北朝鮮のほうが受け入れやすいというわけです。

北朝鮮も仲間がほしいわけです。特に1960年代に北朝鮮は同じく社会主義陣営のソ連と中国が喧嘩し始めて、隣で戦争にまで至ったことで、社会主義陣営の連帯に頼ることができなくなりました。中東、アフリカに仲間を見出すしかなかったのです。この辺の利害関係が一致したと言えます。

例えば石油で言いますと、北朝鮮は確かにもともとソ連・中国から石油を輸入していましたが、実は70年代から中東からの石油輸入を始めています。現在も続いているはずです。よく中国の北朝鮮への石油輸出を止めろという話がありますが、北朝鮮からすると中国が止めるんだったら今度は中東から買えばいい、ということになると思います。そういう選択肢を北朝鮮に与えているのが中東、アフリカなのです。

荻上 そうした、アフリカと北朝鮮との関係について深めていきたいと思うのですが、ここで新たなゲストにご登場いただきます。アフリカ情勢に詳しい三井物産戦略研究所欧露・中東・アフリカ室長の白戸圭一さんです。よろしくお願いいたします。

白戸 よろしくお願いします。

荻上 白戸さんはアフリカでの取材経験も豊富ですが、さまざまな活動・調査などを通じて、北朝鮮の存在感を感じることは多いのでしょうか。

白戸 一つ、印象的だった取材経験があります。2007年のことですが、ある国の情報機関の方から、アフリカ連合の本部があるエチオピアに、実は北朝鮮の兵器工場があるという情報をもらいました。後に国連安保理の制裁に関する報告書にも登場する工場です。当時はまだ安保理にも確認されていませんでしたが、どうもそこでエチオピアが北朝鮮から化学兵器の材料を買って、さらに製造方法を教えてもらい、製造まで行っているらしいとのことでした。

私はそれを聞いて南アフリカからエチオピアに取材に行きました。結論から言うと、化学兵器は確認できませんでしたが、小銃や砲弾の類は、確かに作っているようでした。もちろん工場の中には入れないので、工場の近くの茂みから工場の門の隠し撮りをしました。見つかったら終わりだ、とヒヤヒヤしていましたけど(笑)。

北朝鮮の軍事産業とアフリカ諸国の関係は、今でこそ知られていますが、当時は噂ですら聞いたことのないようなものでした。私も当時一生懸命文献を探したのですが、この問題について書かれた研究はありませんでした。本当に、知る人ぞ知る問題だったのです。

白戸氏

白戸氏

荻上 実際の取材はどのように行ったのですか。

白戸 そのときは工場から出てきたエチオピア軍の女性兵士2人を捕まえて、私は北朝鮮人だと通訳に説明してもらい、その2人をハングルが書かれた車に乗せて、ちょっと酒を飲みに行ったんです。工場で何を作っているのか聞いたら、中では兵器を作っているという証言が取れました。それを記事にしたんです。写真付きで、2008年3月の記事ですね。

荻上 エチオピア以外の地域でも北朝鮮の存在感は感じたことはありますか。

白戸 取材中、空港でアジア系の顔を見かけ、パスポートを見たら北朝鮮だった、ということがありました。それはアンゴラですね。南部アフリカの国です。あとは当時から北朝鮮との関係が噂になっていたのが、ナミビアです。アンゴラやナミビアは、解放闘争をかなり長く戦っていて、しかも解放勢力が東側のソ連陣営の国でしたので、同じくソ連陣営側の北朝鮮が関与するのは理解できる現象です。

一方で、ザイール、現在のコンゴ民主共和国は、1974年にモハメド・アリの世界タイトルマッチが開かれたくらいの親米国です。このザイールもどうやら北朝鮮と関わりがあるとのことでした。これはもともと社会主義陣営寄りだったアンゴラやナミビアが北朝鮮と協力するのと違い、なかなか説明がつきにくいものでした。

この難解な状態は、国際情勢認識を変えると答えがでます。日本人は1990年くらいまで国際情勢を東西冷戦の理論で見ていたわけで、その文脈からすると、親米国のザイールに北朝鮮が入っているわけがないと思います。しかし、実はアフリカには、冷静構造以外にも重要な世界の図式がありました。それが白人少数政権、アパルトヘイトと、それにより植民地化以降差別され、搾取され、支配されてきたアフリカ全土の黒人たちとの対立です。

東西冷戦終結以前で、北朝鮮が国交を結んでいなかったアフリカの国というのは、アフリカの白人政権だけです。北朝鮮は、それ以外のアフリカの国とは、東西関係なく国交を結んでいました。宮本先生のご指摘通り、黒人社会の中にある、歴史の中で築かれた白人社会に対する反発と、そこからの解放勢力ということで、北朝鮮との関係が築かれていったのだと思います。

荻上 そうした動きはいつ頃からあったのでしょうか。

白戸 少なくとも1970年代からはあるはずです。

荻上 こうした1970年代からのアフリカと北朝鮮との関係について、宮本さんはどうお感じになりますか。

宮本 北朝鮮の目的は、基本的には韓国、アメリカに対抗する仲間を増やすことでした。しかし実際アフリカに行ってみると、対米韓以前に、まず仲間を増やすために陣営に関係なく手を結んでいくことになりました。これには北朝鮮にとっては自国と手を結んだ国々が韓国と距離を置く、または韓国に反対していくことを期待できるメリットがありました。結果として北朝鮮は、場合によっては経済的な利益を度外視して、アフリカ諸国に支援をしていたことがあります。

特に先ほど出ましたザイールには、北朝鮮は一個師団を提供しています。2万人の軍隊をつくってあげているんです。これはほとんどタダです。実際には、長期借款なのですが、利子がなかったので、タダに等しいものでした。確認される限り、アフリカにおける北朝鮮による最大の軍事支援です。もちろんそれによって、支援を受けた国は国連で、韓国ではなくて北朝鮮の支持をします。そういう効果を期待していたのが冷戦時代ですね。

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