- 2017年10月19日 11:23
北朝鮮は国際的に孤立していない!?北朝鮮と深い関係をもつ国々は何を求めているのか / 宮本悟×白戸圭一×荻上チキ
2/5武器輸出による経済発展
荻上 北朝鮮は核開発を進める一方で、経済発展も目指しています。現在北朝鮮はどのような経済成長モデルを描いているとお考えですか。
宮本 90年代までの北朝鮮は、大変閉鎖的な経済政策を行っていました。貿易も、外貨を伴わない物々交換方式の貿易だったので、貿易量が限られていました。結果として、北朝鮮が持つマーケットは非常に狭い範囲でした。その政策の愚かさに気づいたのが90年代です。90年代の経済没落はすさまじいものでしたので。
以降、自由貿易ではありませんが、それに近い貿易拡大を目指す方針に転換しました。これにより、経済成長が始まったわけです。北朝鮮にとっては、人々がお金を使って外国からものを買うこと自体が新鮮な経験でした。外貨を伴っての貿易を始めると、北朝鮮のものでも意外と外国で売れるものがあることに気づきます。それを売って、外貨収入を得て、そのお金で新しい工場設備を買い、生産を増やし、また製品輸出する、という流れで経済成長していきました。その中に、武器などの軍事関連のものが多く含まれていたのです。
荻上 どのような武器が輸出されているのですか。
宮本 一番多いのはロケット弾や小銃です。ただ、外貨収入で考えると、やはりミサイルは大きかったと思います。ミサイルによる外貨収入が90年代の北朝鮮経済を支えました。当時中東では北朝鮮のミサイルは飛ぶように売れていました。今でも中東では、イスラエル以外の国は北朝鮮のミサイルを備蓄しているはずです。
荻上 北朝鮮からミサイルを買う理由は何なのでしょうか。
宮本 やはり「売ってくれるから」というのが一つあります。そして安い。意外と、サウジアラビアやアラブ諸国連邦、カタールなど、アメリカと関係が深い国の中にも、北朝鮮のミサイルを買っていた国はあるんですよ。こうした国々は、アメリカから軍事支援も受けていて、アメリカとの関係も深く、しかもアメリカ軍の基地があるような国です。それでも北朝鮮からミサイルを買うのは、アメリカが売ってくれないからです。アメリカは、こうした国々にミサイルを売ると、中東の戦乱がさらに拡大する可能性があり、危険だと考えています。一方で、サウジアラビアとしては、隣国イラクで戦争が起こっていて、自分の国を守るために強力な武器がほしいわけです。そしたら北朝鮮が売ってくれた。だったら買う、ということなんです。
荻上 こうした市場は、今回の制裁があっても、広がっていくことになるのでしょうか。
宮本 どれだけアメリカや国連安保理が参加諸国に働きかけていくかによります。今北朝鮮から武器を輸入している国は、恐らくシリアやイランなどがメインと考えられます。それも大型のミサイルではなく、小型や中型のミサイルですね。イランなんかは自分たちの国でも大型ミサイルを生産できるでしょうから、技術を北朝鮮から導入することはあっても、わざわざ北朝鮮から大型ミサイルを輸入するようなことにはならないと思います。シリアが北朝鮮から輸入する小型・中型ミサイルの資金をイランが負担している可能性があると思います。
荻上 外貨獲得のため北朝鮮労働者も国外で就労するようになっていますが、それに伴う国外情報の流入について、北朝鮮はどう国内の統制をとっているのでしょうか。
宮本 北朝鮮にとっては頭が痛い話ですよね。だから完全な自由貿易には移行できないんです。しかし、貿易を認めなければ経済成長が見込めないから、貿易を拡大するために自由市場は認める、しかし価格に関しては国家が決める。国家は市場の動向によって価格を決める。中途半端な折衷案で、効率は悪いですが、統制と経済発展を見込むためにはここを妥協するしかない、という方針をとっています。
荻上 数少ない北朝鮮の情報の中でも、現地からはビルが立ち並ぶ風景や人々がスマートフォンを使う様子が伝えられ、国民の生活水準は上がっているようにも見えます。
宮本 ええ。よく発展は平壌だけだと言う声を聞きますが、どんな国でも首都だけ発展させるという器用なことはできません。首都が発展しているとその影響は地方にも波及します。北朝鮮全体のGDPが上がっていると考えていいでしょう。日本でも東京が一番発展しています。青森県や長野県に行って、これが日本の代表的な風景だというのはちょっと違いますよね。当たり前ですがそれは北朝鮮も同じです。
荻上 先日はアントニオ猪木議員も訪朝していますが、こちらはどうお考えになっていますか。
宮本 アントニオ猪木さんの師匠が力道山なのですが、彼がもともとは朝鮮生まれの方なんですね。力道山は朝鮮で15歳くらいで結婚して娘が生まれるのですが、妻子を置いて日本に来ました。娘さんが成長して結婚なさった方が北朝鮮の体育大臣になりました。今は辞められましたが、そういう関係もあり、アントニオ猪木さんは北朝鮮の訪問をして、力道山つながりの交流を進めています。
荻上 スポーツ外交ですね。
宮本 そうです。しかしこれは、核問題やミサイル問題とは別問題です。アントニオ猪木さんはこれまでも度々北朝鮮を訪問しています。しかし、その間に北朝鮮はどんどん核開発、ミサイル開発を進めてきました。今回アントニオ猪木さんが訪朝したからといって、北朝鮮の核開発やミサイル開発になんの影響を与えるわけでもありません。
今回の訪朝に限ってこれだけ目されたのは、これで何らかの外交的成果があるのではないかと、日本の社会が期待したからでしょう。しかし、猪木さん自身もそんなことを期待されても困ると思いますし、やはりそれは期待するべきではないのではないかと感じています。
荻上 出口が見えず、情報も少ない中で、猪木さんの会見だけ注目されてしまったのかもしれませんね。【次ページにつづく】



